『やっぱり、自分の機体を知っておくのは大事だよねぇ~♪』
虎武龍・フォースネスト内、MS修練場。現在此所ではビルドライジングの面々が、各々の不足要素を補うために修行を行っている。
そして其のフォースを纏めている青年ダイバーのケイは、愛機のビヨンドガンダムと共に、フォルテのエクストリームガンダム type-FDの指導の下、巨大な鋼鉄こけしを前にして格闘による打ち込みを行っていた。
『せ~のっ、それっ!』
彼女が駆る己が名を与えたエクストリームガンダムは、腕部接続武装のアームドアーマーVNと共に、洗練された一撃を以て、鋼鉄のこけしの中心部に拳を叩き込み貫通、引き抜く同時に爆砕へ追い込む。
『ケイさんがんばれー♪』
「よぉし……!いくぞ、ビヨンドガンダム!」
フォルテがこけしを爆砕したように、ケイはビヨンドガンダムを動かし、右足を思いっきりに振り抜き、回転蹴りを放とうとした。
狙うは中段、要領は嘗て動画で見たローキック。踏み込みとスピードは良い、このまま行けば決まるだろう。
だが━━━━━━━━其処で『事件』は起きる。
ガギン!と一際大きな音が響いたと思えば、機体がぐらっと傾いて倒れていく。
「えっ!?あ、体勢を…!わぁっ!?」
何が起きたの分からぬ青年は、何とか愛機が倒れぬように操縦桿を握り動かす。だが其の健闘も虚しく、ビヨンドガンダムは回転を失った駒の様に、地面をガリガリガリ!とガンプラの表面が鑢で削った音を立てた後、止まったのだった。
『ちょっ、ケイさん大丈夫!?』
「イテテ……な、何とか……」
エクストリームガンダムの手を借りて、何とか立ち上がるビヨンドガンダム。其の腰部と胴体の間には大きな『傷』が出来ており、形状から察するに『ライトニングガンダムのサイドアーマーがガンダムの胴体パーツに干渉した事で起きた』事が解る。
━━━痛い……
━━━腰が動き辛い……
G5アタックのミッションで戦った『宇宙』では聞こえなかった筈のビヨンドガンダムの声は、出来た傷による痛みと辛さを含んでいた。
「おう、どうした……って、ケイ。お前の機体、サイドアーマーが干渉して、胴体と腰に傷が出来てるじゃねーか」
何事かと真っ先に駆け付けたタイガが声を上げ、ビルドライジングの面々も何だ何だと、続々とやって来る。
「ほんとだ…」
「ガンプラが、痛がってる……」
「大丈夫ですか!?」
各々が声を挙げる中、ケイは一度愛機を電子の粒へと還し、これ以上損傷する事がないようにした。其れを見ていたタイガは、青年に対してこう言ったのである。
「ケイ。其の機体がオールラウンダーで『格闘戦』も想定しているなら、下半身……正確に言えば『腰周りと足の調整』は必要不可欠になる。
格闘家にとっての『腰』は、ありとあらゆる攻撃動作の『要』であり、同時に『生命線』だ。よく覚えとくと良い」
其れだけ告げた後、タイガは大きく跳躍して、エスタニア・エリアの霊峰並ぶ山岳地帯へと行ってしまった。
「下半身周りの調節は必要かぁ……」
浮き彫りになった課題を胸に刻み、コンソール画面に映るビヨンドガンダムの、ダメージにより赤く染まった腰部を、ケイは見つめていたのだった。
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「━━━━━と言う訳で、ビヨンドガンダムの改修を行いたいと思います」
「改修やるだぁよ~」
翌日、ガンプラの箱店内休憩室にて慶と順太郎は、國弘と明人の協力の元、昨日のタイガーウルフから受けた指摘を踏まえた改修を行うことにしたのである。
「確かタイガさんは『下半身』…もとい『腰周りと足に問題点が在る』って言ってたんだよな?」
「はい。ライトニングガンダムのサイドアーマーが腰周りに干渉して、其の影響で細い足のマグナムが踏ん張れなかったのが、大きな理由でした」
思い出すのは昨日の修行。ビヨンドガンダムで蹴りを繰り出した時に、胴体とサイドアーマーが干渉し合い、其れによって起きた機体バランスの崩れで、マグナムの小さな足は体を支えきれずに転倒してしまったのだ。
「ぞげなるど、ビヨンドガンダムのサイドアーマーとマグナムの足の交換ば、絶対必須になるべさね。テルティウムの脚部は変えなくても十分な気がするべよ」
「うん。ただ…━━━━」
親友の言葉に、慶は自身の体験を踏まえて声を発した。
「今の俺の実力じゃ、テルティウムの持っているポテンシャルを完全に引き出しきれない。そう、断言出来る。G5アタックの時に使ったチェンジランチャーも、反動で機体が回転してしまったし、高出力のブースターに振り回されたり……
なので、テルティウムの脚部を別のガンプラの物へ変え、攻撃力と機動力低下を許容して『機体の安定性を確保する』事が、今のビヨンドガンダムには必須になると考えました」
僅かな期間で見えた問題点を、彼は彼なりの考えの果てに導き出すに至る。大事なのは『気付く』事と『失敗する事』。其の経験こそが人を一歩、成長させる大きな原動力なのだ。
「安定性だべか……」
「多少攻撃力が低下しても、マルチプルウェポンラックを装備してれば補えるし、手甲にはビーム発生機構を備えるようにするつもりです」
「成る程…だからこそ、改修案をフットワークに絞り込めるという訳なんですね」
皆の意見に、コクリと頷く慶。と、此所まで話を聞いていた國弘は何を思ったか立ち上がるや、一目散に駆け出した。そして数分後、顔を真っ赤に息を切らして戻ってきて、皆の前にガンプラのキットを置いてみせた。
「あの、國弘さんこれは……?」
「ハァッ…!ハァッ…!キット名…『ガンダムEZ-SR』…。全日本ガンプラバトル選手権で、成練高専が使った……ハァッ……ガンプラ、…ッ……其のレプリカ品だ。ガンダム…ハァッ…EZ-8をベースに、パーツの組み換えで近接戦・遠距離・情報戦の3タイプの……コンパチブル仕様が特徴……でな………ハァッ……。
コイツの売りは何よりも、肩と膝のアーマーを変えたり、色んな形状のバックパックに対応可能な背中が有ったりと、幅広いカスタマイズに向いてて、一部界隈では『脱初心者キット』…………なんて呼ばれてるとかいないとか……」
「……あ。EZ-SRは3タイプの機体に分けられるけど、基本的な構造は同じで、尚且つ脚部にあるブースターは、宇宙空間にも適応出来る事を見越しているんだよね?兄さん」
「よく……分かったな、流石は俺、……自慢の弟だ…!」
息上がりが戻らぬままだが、明人が自分の考えに気付いた事を喜び、思いっきり頭を撫でる國弘。時折ブラコンの一面が見える彼だが、こうして自分の身以上に弟の事を誉める姿は、最早病気の類いに等しいと思えてしまう。
「慶、後は…ビヨンドガンダムのサイドアーマーと足の改修だが…、何か考えは……ハァッ……有るのか?」
「はい。サイドアーマーは3㎜ジョイントを持つ『ダブルオーガンダム』、足はさっきネットで調べた『GBNベースガンダム』の物にしようと」
「とても良いチョイスだと思います!」
その後、数十分に渡る会議である程度の改修案は出揃い、慶達は2日後の定休日を利用し、ビヨンドガンダムの再改修を行う運びとなったのである……。
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2日後、ガンプラの箱内・工作ベース。この日はGBNが定期メンテナンス日である事と、ガンプラの箱の定休日であった2つの要素が重なり、慶と順太郎に星名兄弟は此所に集う事が出来た。
「今日はよろしくお願い致します」
「お願いじまずだ」
「はい。時間は有限である以上、うかうかしてはいられません。其れに……」
「ビヨンドガンダムを1から。もとい『全部』作り直すからな、製作行程を区分けして効率良くいこう」
おー!と号令し、4人はビヨンドガンダムの改修……もとい1からの作り直しを行った。
手始めにベースとなる『RX-78-2 ガンダム』を始め、ミキシングに使う『ガンダム レオパルド・ダ・ヴィンチ』・『GM/GM』・『パワーアームアームズ』に加え、新たに『トライバーニングガンダム』と『ガンダム EZ-SR』、そして『ダブルオーガンダム』に『GBNベースガンダム』、『ハイメガキャノンパーツ』のキットを用いた仮組みを行い、一度バラバラにし直す。
サーフェイサーによる下地塗装の為、パーツを専用の洗浄機で洗浄している間、慶はどのパーツに何色を使用するかを伝えておき、國弘と明人は以前に使った短時間で1日分の乾燥と同じにする試作品の機材を取りに、慶と順太郎は洗浄が終わった後に行うマスキングの準備を行う。
洗浄を終えて機材へパーツ達を入れ、乾燥が終わるのを待つ間、4人はビヨンドガンダムの支援機マルチプルウェポンラックへ懸架する武装を話し合い、手始めにファンネルを試してみる事に。其のファンネルに関しては慶に考えが有るらしく、其れを成すには『トライエイジマグナム』のレプリカキットがもう1つ必要であり、國弘との交渉で早速購入。
結果として慶の財布の中身はとても寂しくなったものの、何とか手に入れる事が出来た。
パーツが乾燥し、慶と順太郎は早速塗装をしようとしたが、星名兄弟からゴム手袋とマスク、頭にネットと目の周りを守るゴーグルを支給される。曰く「外でやるならまだしも、店内でやるなら出来る限り汚れないようにしないとな」らしい。
明人が換気扇を回し、國弘がパパパっと4人分の塗装ベースを揃え、塗装用の装備を一式装備する。そしてマスキングテープやジュレで間接部や染めない部分を保護し、各々分担してサーフェイサーを用いた下地塗装を開始した。
「色合いは此のくらいでしょうか?」
「はい!其れでお願いします!」
「慌でず……落ち着いで……」
「お、順太郎君。上手いじゃないか」
4人での塗装は役割分担もあってか、約1時間半で完了。再び乾燥機へ入れて、1時間程待つ。終わり次第マスキングテープやジュレを慎重に剥がして、其の部分以外を保護し直して塗装し、乾燥機へ━━━━━━。
此れを繰り返し行い、6時間掛けて4人は漸く細かい部分を含めた全塗装を終えて、一息着いたのだった。
「………ふぃ~!」
「や、やっどこざ終わっだべ~……!」
「4人がかりで此所まで掛かるとはな……」
「大変でした………」
身体中に欠乏した酸素を取り入れ、溜まりたまった二酸化炭素を『はぁぁぁ………』と大きな溜息に乗せて、4人は息を吐く。
と、店の奥で電話が鳴ったので國弘が対応に当たり、其の間に慶と順太郎、明人の3人は乾燥を終えた新しいビヨンドガンダムのパーツ達を組み合わせ、シールを張っていく。
頭部が。胸部が。左腕が。右腕が。腰部が。左脚が。右脚が。1つ1つの部位を、形を成していった。
そして遂に━━━━━━━━━━━
「で……!」
「で、ででで…!!」
「出来ました…!!!」
店内に『『『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!』』』と、若き者達の歓喜の声が木霊し、新生したビヨンドガンダムを祝福した。
最初のビヨンドガンダムとは、上半身こそ同じで有るものの、マニピュレーターはビルドバーニングの強化形態たるトライバーニングへ。
腰部サイドアーマーはライトニングからダブルオーの物へと変わり、脚部はテルティウムとAGE-2マグナムの複合を改め、EZ-SRとGBNベースガンダムに置き換った事で全体的な安定性の確保、及びブランシュアップ。
丁寧に塗装されたトリコロールカラーは、『
そうして産み出された慶の新しいガンプラ━━━『ビヨンドガンダム・
「お、出来たのか皆!」
「國弘さん!はい!カンタと明人君も手伝ってくれて、さっき出来上がりました!」
「お~…!コレが新しくなったビヨンドガンダムか…!善き出来映えだ…!」
此所で電話対応に出ていた國弘が、歓声を聞きつけて戻ってくるや、完成した新ビヨンドガンダムを見て目を輝かせる。
「あ、國弘ざんばさっぎ電話に出だげんと、どちらからだったんべか?」
「其の事なんだが……皆、この後は時間空いてるか?」
國弘が伝えた其れは、慶達の吉報となる。
「コーイチさんからの連絡が来た。
『ELダイバー・ヒノワ』の現実世界の素体と、其れに準ずるサルベージの準備が出来たから、フォースメンバーの皆に来て欲しい━━━って」
超越の機神は進化する
ガンプラ紹介
ビヨンドガンダム・
脚部チェンジランチャーとサイドアーマーのビームサーベルをオミットした事で、全体としての火力は落ちたように見えるが、マルチプルバックパックへブースターに見立てたハイメガキャノンパーツを増設すると共に、手甲にビーム発生機構を持たせた事により、機動性・安定性を改善しながらも、火力低下を抑制した。
武装は頭部バルカン砲と、脚部チェンジランチャーから着想を得て、レオパルド・ダ・ヴィンチのライフルをベースとした、ビーム攻撃と実弾砲撃の複合攻撃能力を持ち合わせる『マルチプルライフル』と、ビヨンドガンダム時代のビームサーベルを懸架するシールドを引き続き装備し、ミッションやバトルに応じて其の都度武装の変更を行っていく。
自身が持つ汎用性と拡張性の広さというビヨンドガンダムのビルドコンセプトを崩す事無く、全改修により更なる進化を遂げたのである。