※今回は短めです。
「いやぁ~…本当に素晴らしい出来だなぁ」
「凄いね、兄さん。コウイチさんとツカサさんが作ったモビルドール…」
現実世界、ELバースセンター。ビルドライジングが保護した新しいELダイバー・ヒノワのサルベージが無事完了し、テーブルの上でクルクルと回っている彼を、一同は見ていた。
モビルドール━━コウイチとツカサが『GPD』由来の技術を結集して作り上げた其れは、此れまで救出した100に近いELダイバーの身体となり、現実世界での活動を可能にした。
「くるくるー♪くるくるー♪」
丸型テーブルの上で、開いたポンチョがパラソルの様に広がり、舞踏会のプリンセスが如く回るヒノワは、満面の笑みである。純心無垢とは、此の事を言うのだろうか。
「ヒノワ、いっぱい回っているけど楽しい?」
「うん!すっごく楽しい!」
わはー♪と今も回り続ける彼を見、心が春の日差し溢れる草原の中で日向ぼっこしているかのような、暖かく、其れでいて心が朗らかになる感覚を覚えた。
「さてと…ビルドライジングの皆、一度聞いて欲しいんだけど良いかな?」
そんな折、コウイチが挙手と共に声を挙げ、皆の注目を集める。
「ヒノワ君のサルベージは無事に完了した訳だけど、此処からも問題がある。ビルドライジングのフォースメンバーの中で、ヒノワ君の『後見人』になる人は決まっているかい?」
其の一言を聞いた瞬間、ビルドライジングのメンバー全員が石化したかのように固まる。ELダイバーにとっての後見人とは、現実世界やGBNを含めて『順応するために、様々な知識や教養を与えて導く立場』に居る者達だ。
彼等は『ペット』ではなく、此の世界に置いての『住人』となる存在。生半可な覚悟では彼等彼女等が正しく生活出来ない可能性が有るからである。
「……すいません、まだ決めてません」
「オイ、ケイ。オメェはフォースのリーダーだろうが、そこんとこはちゃんとしとけ」
「ちょ、ツカサ━━」
「コウイチさん、大丈夫です。…自身の詰めの甘さは、重々思い知らされていますから」
ツカサに呆れられ、がっくりと肩を落としながらも、慶は自分の両頬をひっ叩いて、身を引き締める。そうして青年の瞳は優しく、ヒノワの視線に屈んで問い掛けた。
「ヒノワ。ヒノワは誰と一緒に居たい?」
慶が設立したフォース・ビルドライジングは、メンバーのリアルや想いを尊重する。故に彼はヒノワの望みを聞き届け、叶える━━━━此処に来る際に國弘が運転した車の中で決めた事だった。
「成程…そうきましたか」と逸早く彼の言葉の意味を理解したジョーは頷き、ミシェイラは彼らしいと納得の色を示した。
「オレが…一緒に居たい?」
「うん。ビルドライジングの皆は、ヒノワと一緒に居たい。けれど、一番大事にしたいのはヒノワの想いだ。ヒノワがどうしたいか?其れに応える事が、俺達の役目だと思ってる」
皆の顔を見渡して、うーんと考え始めたヒノワ。そうして暫くの間を置き、何かを決めた眼でテクテクと慶の元へと歩み寄り。彼の人差し指を両手で持ちながら言ったのだ。
「オレ…ケイと一緒が良い」
彼が自ら考え、其の答えに至った事を、仲間達は尊重し、慶は誇りに思う。
「わかった。皆は大丈夫?」
そう問うも、全員口を揃えて『異議なし!』と答え。慶はヒノワに笑顔で「これからよろしくお願いします」と述べた後、自分の右掌を置いた。
「ケイ、これは…?」
「これ?これは一種の挨拶で『握手』って言うんだ。友達や家族に『よろしく』とかの意味がある」
「あくしゅ…あくしゅ!えっと、ケイ。…よろしくおねがいします、で大丈夫?」
「うん。これから、よろしくお願いします。ヒノワ」
小さく両手で右中指に触れたヒノワに、慶も朗らかに微笑み、握手を交わす。其の後、コウイチから手渡されたELダイバーの後見人に関する要点を分かりやすく纏めた書類一式を熟読した慶は、コウイチとツカサにより後見人登録を済ませ、正式にヒノワの後見人として活動する事になったのだった……。
*******************
「コウイチさん、ツカサさん。ヒノワのサルベージを行っていただき、本当にありがとうございました」
日が落ち始めた、午後5時半過ぎのELバースセンター入口。ヒノワを助ける為に準備と行動を起こし、そして見送りに来てくれたコウイチとツカサに、慶が礼をしたのを皮切りに『ありがとうございました』と続く。
「慶君、ヒノワ君の事をよろしくね」
「後見人として、責任をきっちり果たせ。良いな?」
「はい、頑張ります!」
慶に激励を送り、2人はセンター内へと戻っていった。
「さてと…ヒノワのサルベージも無事完了したし、祝賀会━━━と行きたいが、明日も仕事があるんだよなぁ…」
「確がに…そうだ、祝賀会ばGBNでやるっでのはどうべ?」
「それ良いですね!」
「しゅくがかいってなぁに?」
「祝賀会は、皆に良いことがあった時にお祝いする事だね」
ヒノワのサルベージ完了を祝し、祝賀会をGBNで行う算段を決め、早速ワイワイと話し出す一同。そんな時である、「慶様」とジョーが声を掛けたのは。
「ジョーさん、どうしました?」
「慶様。畏れ入りますが、私を貴殿のフォース・ビルドライジングに加えていただけますでしょうか?」
突然のフォース加入願いに、顔を見合わせるメンバー達にジョーは続けて言った。
「お嬢様から聞きました、現在のビルドライジングは嘗てのフォースメンバーのアズキ様を、ソード・ブリンカー・レヴより取り戻す為に修行中の身であると。私はこう見えて、昔にガンプラバトルを嗜んだ事があり、腕に覚えがあります。皆様の御力添えになれるかと」
八島財閥の次期当主の傍に仕え、ガンプラバトルの知識と経験も兼ね備えている。自分達に足らない物を沢山持つ彼から其れを学べれば、今よりもより一層強くなると慶は考え、答えは既に決まっていた。
「ジョーさん。俺達のフォース・ビルドライジングに、貴方が培ったガンプラバトルのノウハウの伝授、よろしくお願い致します!」
「お任せ下さい。御期待に必ず応えて見せましょう」
青年が差し出した右手に、彼の右手が重なり、固い握手は交わされる。
「よぉし、そうなったらヒノワのサルベージ完了とジョーさんのフォース加入の祝賀会に変更だな!」
『『『さんせーい!』』』
新たな家族、そして新たな仲間を加えた、フォース・ビルドライジング。
彼等はまだ知らない。これから、自分達がGBNで大いに注目され、そして名実ともに駆け上がって行くことになる等と━━━━━━其れはまた、先の話。
戦・力・増・強