ガンダム・ビルドライジング   作:ガリアムス

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・ヒノワのGBN使用機体が決定&とあるレジェンドとの出逢いが訪れる、そんな第30話になりまする

パートを蔑ろにするに止まらず、正社員をパート社員に違法降格させるパワハラ店長と其れを黙認するクソ会社から退職&新しい職を探して就活してたので更新遅れました。本当に申し訳ない




Ep,30 三代目メイジン

現実世界にて、無事ヒノワのサルベージを終えたビルドライジングは、ヒノワのサルベージ完遂並びに八島・ミシェイラ・ニールセンの執事ジョーのフォース加入祝賀会をGBNで行うことを決め、解散。

 

慶と順太郎、そしてサルベージによって此の世界で動けるようになったヒノワは、ガンプラの箱の店主代理の星那 國弘が運転するワゴン車で、都内某所に在る大学の前まで送迎して貰った。

 

「國弘さん、ありがとうございました」

「ありがとう、ラル…じゃなくてクニヒロ、さん」

「ありがどだべ、國弘ざん」

「うん。慶、順太郎、そしてヒノワ。またガンプラの箱とGBNで」

「さようならー!」

 

ワゴン車を見送り、順太郎もまた慶と別れて自分の在るべき場所へと帰って行った。

 

「ケイ、此所がケイの…家?」

「うん、大学寮っていう自分の住んでいる場所が遠くて、時間が掛かる人が此所に住むんだ」

 

青年の掌に乗り、初めて見る世界に興味津々のヒノワを連れて、慶は寮内に在る自室へ戻る。鍵でドアの施錠を解いて室内に入り、勉強机にヒノワを下ろす。

 

「わぁ…ケイの部屋、広い…」

 

彼が住む大学寮の部屋には、備え付けの勉強机とベッドの他に小型洗濯機と冷蔵庫、シャワー室兼トイレと衣服を入れるクローゼットが常備されているといった、充実した設備となっている。

 

「ヒノワにとっては広いかもだけど、俺からすれば普通かも知れないね。と…ヒノワ用のベッドを用意しないとか、何か良いものは…」

 

小さな同居人が加わった事で、慶は彼が不自由にならないように策を講じるべく、スマフォのインターネットで調べ始める。其の間、ヒノワは机をキョロキョロと見渡して、左奥に小さな長方形のケースが在ることに気付く。

 

興味を示してテクテクと近付き、中身を調べると其処には慶が使っていた『ガンダムAGE-1 フルリビルド』が入っていた。

 

「ケイ、ケイ。此の子は…?」

「俺が最初に作ったガンプラ、フルリビルドだね。今はビヨンドガンダムを使っているけど、もっと良い改修案が浮かべば、絶対に改良する所存さ」

 

「それに…」と彼は机の下から、以前購入した『HGUCνガンダム』の箱を取り出しながら言う。

 

「此のνガンダムも、作って欲しいって言っていたからね」

 

ビヨンドガンダムの製作、そして改修で手付かずに居たキットに「ちゃんと作るからね」と声を掛ける慶。

 

━━━━初めまして、小さな人

━━━━貴方も、彼に導かれたの?

 

そんな折、ふと二人の耳にはνガンダムの声が聞こえてきた。

 

「ケイ、今此の子の声…聞こえた」

「…うん。俺にも聞こえたよ、ヒノワ。νガンダム、ちゃんと作ってヒノワに会わせるからね、少しだけ待ってて」

 

νガンダムのキットが入った箱を、自分の机の見える位置に置き、慶は冷蔵庫の中を確認して自分の夕食を作り始め。其の間ヒノワは、慶が作ったフルリビルドの入ったケースを見つめ続けていた。

 

まるで、此のガンプラに運命を感じているかのように…

 

 

********************

 

 

「ケイ…オレ、GBNの機体コレにする!」

 

数十分後、ミックスベジタブルとボイル海老のピラフに、レタスとキュウリの簡単サラダ、卵入り中華スープを作り終えて、小さなテーブルに配膳した時、ヒノワが

フルリビルドの入ったケースを押しながら言ったのだ。

 

「其れは…フルリビルドか?結構武装を載せてるけど」

「大丈夫!だと思う!」

 

積載された武装を使いこなせるか、少し心配する慶に対し、ヒノワはフンス!と胸を張りながら言う。

 

「其れにフルリビルド、オレを助けてくれた。此の子に恩返しするには、オレが使って慶や皆を助ける事が、一番だって思った!」

「…強いな、ヒノワは」

 

彼の固い決意に、慶の心も強くなったような気がした。其の日慶はヒノワへ、フルリビルドが持つ武装と其れを応用した戦闘方法を教え、ヒノワは彼の言葉を真身に聴いていたのである………━━━━━━━━

 

 

********************

 

 

 

翌日、ガンプラの箱……━━━━━

 

 

「おはようございます!」

「おばようございまずだ!」

「おはよーございまーす!」

「お、慶君。おはよう」

「今日は随分早く来たな、慶」

 

店の裏口から入り、元気な挨拶をした慶と順太郎、そしてヒノワに声を返したのは、現在店長代理として此の店を守っている國弘と、慶と同じく店で働いている春日だった。

 

「む?そう言えば、もう1人声が聞こえたような…」

「あ、ちょっと待っててくださいね。ヒノワ、良いよ」

 

慶がそう言いつつ、少しチャックが空いた自分のリュックサックを静かに開けて行く。そして其処から、顔をぴょこっと出して、ヒノワが現れた。

 

「ひょっとして、ELダイバーか?現実世界(こっち)では初めて見たぞ…」

「はい、此の子はヒノワ。俺が後見人になってます」

「そうなのか、ならば初めましてになるな。私は冬月 春日。以後、お見知り置きをヒノワ君」

 

差し出された春日の大きな手を見て、ヒノワは一瞬迷ったが小さな両手は、彼の薬指に触れたのであった。

 

「そう言えば明人君が居ばぜんだね、國弘さん」

「そーなんだよぉ~…明人、土日は居るんだけど平日は学校あるから行かないとなんだよぉ~…。あ、ヤバイ…アキトニウムが切れてきた…どぉしよぉおおおおおお!!?」

 

薬の効力が切れて患者が暴れだすのと同じように、國弘の明人に対する重度のブラコンで身体がグネグネと揺らぎ、ムンクの叫びの様な顔と奇声が共に休憩室で響く。

 

其れを見て、彼が重度のブラコンを患う事を知っていても、其の惨状に若干引いてしまう。

 

「…店長、取り敢えず店を開けましょう。明人君が帰ってくるまで私達の仕事をやっておかないと」

「…そう、だよなぁ………やるかぁ……」

 

春日の励ましに、グロッキーな顔をしながらも、國弘は何とか落ち着きを取り戻す。更に気付けの一発に、自分自身の両頬を思いっきりひっ叩き、前髪を掻き上げる。

 

「……しッ、皆。ガンプラの箱、開店だ」

「「はいっ!!!!!」」

 

男三人は、ガンプラの箱のロゴの入ったエプロンを掛け。慶はヒノワを掌に乗せて、エプロンの胸ポケットに入れて、皆各々の仕事を始める事になった………。

 

 

*******************

 

 

ガンプラの箱……嘗てはスーパーとして賑わい、閉店した其れを、星那兄弟の両親が買い取り、施設を丸ごとガンプラ売場に造り変えたのが、此の店の始まりである。

 

前身の間取を生かし、無数にあるガンプラのキットを種類・グレート・受注製作等、各々事細かに分けたことで、客のニーズに対応出来るようにしたのだ。

 

更に、買ったガンプラを直ぐに組み立てられるように、作業スペース(ビルドコーナー)と製作道具一式の貸し出しや、星那兄弟特性の違う種類のキットを無理なく接続可能にする多種多様なジョイントパーツも販売している。

 

「…それにしても、國弘さんと明人君の作ったガンプラ作品も凄いけど、二人の両親が作ったガンプラも滅茶苦茶高い完成度合いなんだよな……」

 

そう呟きながら、慶は個別に分けられたショーケースのガラスを丁寧に拭きつつ、中で飾られた作品達に目をやる。

 

旧キットから最新キット、HG(ハイグレード)RG(リアルグレード)MG(マスターグレード)に果てはPG(パーフェクトグレード)が立ち並び、各々が圧倒的なまでに作り込まれ、一切のムラすら無い塗装とスミ入れに、細部に渡るデカールにより、見る者全ての心を捉えて放さない。

 

其のレベルは世界大会に出場し、猛者達と充分に渡り合うだけの力がある。

 

「此所に居るみんな…嬉しそう。作ってくれた事、喜んでる」

「うん…そうだね。皆、國弘さんと明人君、そして二人の両親に作って貰えた事に、心から感謝してるんだって」

 

素晴らしい作品を見ながら、慶は丁寧に。しかし素早く迅速に、ガラスを吹き上げ綺麗にしていく。

 

と、ガンプラの箱の入口のドアがガラガラと鳴った。

 

「あ、いらっしゃいませ!」

 

元気な挨拶を行った慶の視線の先には、変わった形状のサングラスを掛け、藍色のコートに袖を通す、黒の革靴とズボンを履いた、白髪混じりの初老の男性だった。

 

「失礼。此方はガンプラの売店…で良いのだろうか?」

「はい。此方はガンプラの箱と呼ばれる、ガンプラのキットや道具、そして店長さんが自作したオリジナルウェポンを販売しております」

「ガンプラのおみせでーす!」

 

第一印象は何時如何なる時も大事である。初めて来店した人ならば尚の事だ。慶と、彼の肩に乗っかるヒノワは男性に店の事を簡潔に伝えると、其れを聞いた男性はELダイバーを初めて見たのか、暫く無言でヒノワを眺めて言った。

 

「君はELダイバーか?ニュースでは聞いたが、実際に見るのは初めてだ」

「此の子はヒノワ、俺が後見人をしています」

 

慶が紹介し、ペコリとお辞儀するヒノワ。男性は「よろしく」と言い、店の入口を見渡して慶に問い掛けた。

 

「…此の店に『ビルドシリーズ』は在るかい?」

 

ビルドシリーズとはガンプラ作品の中でも、取分カスタマイズとオリジナリティーに富み、キットをベースに新規パーツや造形を組み込む事で、全く新しい機体へと昇華させたシリーズである。

 

またビルドシリーズによって、アニメには登場したがキット化されなかった機体が造形化されたりする等の、ビルダーやモデラーにも嬉しい副次効果も存在する為、人気の高い商品だ。

 

「はい、ビルドシリーズコーナーは7番エリアに御座います。よろしければ、御案内致しましょうか?」

「そうか、ありがとう。名前を伺っても言いかな?」

「あ、はい!朱鳥 慶と申します」

「慶君…覚えておこう。私はカワグチという名前だ」

 

初老の男性…カワグチと名乗った彼を案内して、慶は店内を歩いていく。

 

「……品揃えが凄いな、此の店は」

「はい。私も此所で働き始めてまだ数ヶ月ですが、ガンダムベースにも負けない品揃えだと確信してます」

 

商品棚のキットを見ながら感心の言葉を溢す男性に、慶は自信を以て言い切った。

 

「あ、着きましたよ。此方が『ビルドシリーズコーナー』になります」

 

天井に吊られた看板には『ビルドシリーズ』と丸みを帯びたフォントが貼られ、棚には『模型戦士ガンプラビルダーズ』を初めとした『ガンプラバトル時代』に世界のトップビルダー、ファイター達が作り上げたガンプラ(レプリカ)のキットが立ち並び、其の何れもがビニールで厳重包装を施されており、保存状態が良好だった。

 

「おぉ…!素晴らしいな、これは!」

「ビルドシリーズは、作り上げた人々の情熱や想いが込められて、其の何れもが自由な発想とアイデアが在る、そんなキットだと思ってます」

 

コーナーのキット達を手に取る男性に、慶はビルドシリーズの見解を思うままに述べる。そして男性は、ビルドシリーズの中のキットの1つを手に取った。

 

キットの名前は『HG Hi-νガンダムヴレイブ』。其れはHi-νガンダムをベースに背面と両腕、武装面に大幅な改修が行われており、あらゆる敵と状況(シチュエーション)に対応するべく、多彩なギミックが組み込まれた機体となっている。

 

「慶君、私はこのHi-νガンダムヴレイブにするよ。ありがとう」

「はい!ありがとうございます!」

「どーいたしましてー!」

 

仄かに微笑み、男性はレジエリアへと向かおうとし。「そうだ」と振り向くや、コートの胸ポケットから1枚のカードを取り出し、慶に手渡した。

 

「君達に、善き(えにし)が有るように」

 

そう言い残し、男はレジエリアへと歩いていく。其の背が、慶とヒノワの目には後光を放っているかのように見え。気付けば2人は、彼の背中を追っていたのである……。

 

 

 

*******************

 

 

ガンプラの箱内、レジエリア………

 

 

「お買い上げ、誠にありがとうございます。レジ袋をご利用なさいますか?」

「いや、大丈夫です。それと、ビルドコーナーは利用出来ますか?」

「はい、ご利用いただけます。ガンプラ制作に必要な、道具一式の貸し出しも行っております。」

 

Hi-νガンダムヴレイブを購入した男性からの問いに、対応した春日は丁寧に答えつつ、ビルドコーナー利用時に貸し出している道具一式を取り出す。

 

「ありがとう」と礼を述べ、ビルドコーナーの一角に座った男性は、キットが入った箱を開け、ビニール包装を丁寧に取り、貸し出し用の道具達に目を通した。

 

「あ、春日さん。展示エリアのガラス拭き一通り完了しまし━━━━」

「慶君、ちょっと静かに」

 

逸早く、ビルドコーナーに漂う空気が変わった事を察知した春日が、2人に静観を求めた次の瞬間。

 

『はぁっ!!!!!!!』

 

落雷に等しき声が店内を揺らし、男性が立ち上がった時、3人の目には信じ難き光景が映る。其れは━━━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男性の目の前に、完成されたHi-νガンダムヴレイブが在ったからだ。其れも素組であるにも関わらず、プロが作り上げた至高の逸品であるかのように……。

 

 

「え………」

「春日さん…あの、Hi-νガンダムヴレイブって、結構…時間掛かります、よね?」

「あ、嗚呼………普通に制作しても、大体2時間は掛かる、とは思う………」

 

何が起きたか分からない3人は、ただただ顔を見合わせて。其の様子に気付いた男性が、空いた手でサインを送って、店を後にしていった。

 

「何だったんだ……あの人は……」

「おーい、皆どうした…って何か有ったのか?」

「慶ー、ヒノワー、どったのべさー?」

 

HGとはいえ、Hi-νガンダムのカスタム機体をあの一瞬で作れるものなのか。春日が今までにない衝撃に打震える中、國弘が裏方から顔を出し、タイミングが良いのか順太郎も此方に合流する。

 

「実は…」

 

春日・慶・ヒノワは今さっき起きた事を、ありのまま説明する。其れを聞いた國弘と順太郎も『どうゆうことなの…』と言った顔をしていた。

 

「あ…慶!カード!カード、もらった!」

「そういえば…!」

 

と、慶とヒノワは男性から貰ったカードを皆に見せる。カードの形状は会社員や役員の必須アイテムの名刺である。

 

そして其のカード…もとい名刺を見た國弘は、其処に書かれていた名前に目を丸くし、あまりの衝撃でひっくり返ってしまい。順太郎と春日もまた、慶がとんでもない人物からとんでもないものを賜った事に、内心穏やかではいられなかった。

 

 

 

 

 

 

塗料メーカー・ユウキ、社長

 

ユウキ・タツヤ

 

 

 

 

 

ガンプラを含めたプラモデルとは、切っても切れない関係にある『塗料』。水性やラッカーといった様々な種類を扱う、老舗の塗料メーカーがある。

 

メーカーの名は『ユウキ塗料』。ガンプラバトルの黎明期以前より、プラモデルや外壁の塗料を販売しているメーカーの1つであり、数有る塗料メーカーの中でも『ガンプラと言えばユウキ塗料』と言わ締める程に有名だ。

 

ガンプラバトルからGPD、そしてGBNと時代が移ろい行く中でも、常に顧客のニーズに向き合い、絶妙な配色をリリースし続けている。

 

其のユウキ塗料の現社長は、ガンプラを知る者達が必ず一度は耳にし、そして其の名を知る。

 

 

高校生ながら、最強の称号『メイジン』の名を賜り。

 

ガンプラバトル世界選手権では、三連覇を果たし殿堂入り。

 

GPDに於いても、後進のビルダーやファイター達の指針となり、人々に熱狂のバトルと楽しむ気持ちを与え続けた。

 

()の名は……『三代目メイジン・カワグチ』。本名を『ユウキ・タツヤ』。

 

ガンプラの箱を訪れた男性が、レジェンドビルダーであり、レジェンドファイターの1人にして、現在の老舗塗料メーカーの社長、其の人だったのだ。

 

 

 

 




伝説との邂逅



人物紹介

カワグチ:ガンプラの箱に訪れた初老の男性。ビルドシリーズコーナーを店員の慶に尋ね、案内された先で『Hi-νガンダムヴレイブ』を購入。

その後、工作エリアにてヴレイブを超高速で組み上げた後、ガンプラの箱を後にした。

其の正体は、嘗て存在したガンプラバトル・GPDを牽引し、バトルホビーの一時代を築き上げたとされる、伝説のガンプラファイターでありガンプラビルダー、『三代目 メイジン・カワグチ』こと『ユウキ・タツヤ』その人である。


ガンプラ紹介

Hi-νガンダムヴレイブ:カワグチことユウキ・タツヤがメイジン襲名以前に製作したガンプラ。Hi-νガンダムをベースに、自分自身の力を引き出し、あらゆる局面に対応して勝利をもぎ取る為のカスタマイズと、様々な改修を施されている。


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