『決着ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!フォースリーダー同士の激闘の末!フォース戦を制したのは、ビルドダイバーズ!其のフォースリーダーのリクだあああああああああああ!』
「いやぁ~今日も良い実況が出来たねぃ♪さっすがオレィ!実況もキレッキレだぁ!」
ケイがジョーとの修行を行っている頃、エスタニア・エリアの上空を飛行物体が飛んでいた。円盤型のサブフライヤーの形状をしている其れはジグザグに、かつ高速で飛翔している。
其の内部では、全身に星の装飾を取り入れた、ステージダンサーらしき風貌のダイバーが一人、フォース戦の動画を見返しては満足気に笑みを浮かべていた。
彼の名はDJアルル、誰が呼んだか『ハイテンション実況ダイバー』。注目のダイバーの一戦や大規模なフォース戦と聞き付ければ、何処からともなく現れては爆発的な大声量と頭のネジが外れたようなハイテンションで実況を行い、戦いが終われば何時の間にか消えている……といった具合に、嵐のようなダイバーである。
「さてさてさぁ~て、次は『フォース・百鬼』の試合に乗り込むか、まだ見ぬニューフェイスのデビュー戦を実況しちゃうか、どーちーらにっしよっかなぁ~♪」
冷め止まぬ心臓の鼓動と、熱を帯びた身体を奮わせ、アルルは先の予定を考えていた。しかし其の時、彼の乗るサブフライヤーに、GBNチャンピオンのフォース戦以来の巨大な風圧が何処からともなく襲い掛かって、内部は衣服が洗濯機によって、もみくちゃにされるような感覚に襲われたのだ。
「おわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??」
ぐるんぐるんと回りながら、アルルが乗ったサブフライヤーはエスタニア・エリアの空域からエリアゲートの前まで吹っ飛ばされてしまった。
此の時、ジョーのオーマ・リ・オーはマグマの流星群を空から降らせ、其の攻撃の余波がエスタニア・エリア全域に並みのガンプラならば、吹き飛んでしまう程の突風を発生させていたのだが、其の事実を知るのは虎武龍で今まさに修行中のケイと其れを見物していたダイバー達のみである……。
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フォース・虎武龍、其のフォースネスト内に在る龍虎祭を想定したバトルフィールド。
其処は現在、地獄絵図に等しい終末の光景が、唯一機のガンプラの手により起こされ、今なお続いており。其れを観る者達は言葉を失ったまま立ち尽くす状況に成っている。
ガンプラの名は『オーマ・リ・オー』。GPD元ヨーロッパチャンピオンのジョー……本名『ジョージ・ダルクス』を、ガンプラバトルとGPDの時代に幾度も世界の頂点へ導いた、生ける伝説の存在。
機体に『理の王者』と銘打ちながらも、ブースターも無しに宙を浮遊、天候を自在に操り、全ての粒子さえ手中に収めるという、まさに『理外』の性能を持った其れは、自身の登場演出として発生したマグマを流星群としてフィールドに落とし続け、其の力を鎮めて閑散となった地上を見つめている。
焼け焦げた地と熱を帯びた風が吹く中、砂埃のヴェールが晴れて一体のガンプラが力無く倒れていた。機体は『辛うじて』原型こそ留めてはいる…が、既にフレームは全身にガタが生じ、装甲も内側までボロボロとなっており、最早原型を留めている事態が『奇跡』な状態だった。
「う……ぐっ、うう……」
倒れているガンプラ…『ビヨンドガンダム』に乗る、青年ケイは、耳に響き続けるハザードコールを聞きながらも、何とか機体を立たせようと操縦桿を動かし続ける。
しかし、彼の手に力は入らず、握る指は震えていた。ジョーとオーマ・リ・オーの圧倒的な実力と、自分が何をやっても一切届かない絶望的な『差』によって、心が折られかけようとしていた。
そんな青年の耳に聞こえたのは、けたたましいハザードコールでも無ければ、未だに吹き荒れる風や落雷の音でもなく。青年とGBNで産まれた
ケイが作ったビヨンドガンダムは、天と地程の差が在るオーマ・リ・オーによって大破寸前に追い込まれても、決して諦めてはいない。
「ビヨンド、ガン…ダム……。分かった、俺も…諦めない…!」
青年は恐怖を振り払い、再び機体と共に立ち上がり。同時に其れを見計らっていたとばかりに、オーマ・リ・オーの攻撃が再び再開されたのだった。
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コックピット内部に居るケイの耳には、限界を告げるアラートが絶え間無く鳴り響き続けている。
あと一撃、何か貰えばビヨンドガンダムは。自分のガンプラは、今度こそ本当に動かなくなってしまう。もう、一回とて被弾は許されない。
(聞こえる……)
一度のミスで、ジョーとオーマ・リ・オーを倒せなくなる極限状態の中、ケイが感じたのは装甲やフレームが軋む音や、迫り来る天災でも無く。
━━━━━うおおおおおお!
━━━━━着だーん!
━━━━━ひゃっほーう!
オーマ・リ・オーが産み出した攻撃から放たれる、絶大な被害をもたらす其れとは異なる、騒がしくも愉し気な無数の『声』達だった。
(わかる……)
彼等が何処に行こうとしているのか。何をしようとしているのか。そうしてケイは悟る。
(…そうか)
ガンプラの━━━延いては、人が創り産み出した創作物の声を聞ける特異能力。其れがケイの、朱鳥 慶が物心付いた時から己に宿った、他者には無い唯一無二に等しい力。
孤児院に置き去られ、其処で育った幼き頃の彼は此の力によって、子供用の玩具やお絵描き道具、食器等に宿る声を聞くことが出来た。大事に扱えば感謝され、存外に扱うならば悲鳴を挙げる、其の声を聞いては周りの子供が乱雑に使用する物を取り上げ、大丈夫や痛くなかったとモノに対して言ったりした。
当然其のような行動は、周りの子供や孤児院の大人達からは気味悪がられ、慶は独りになり、孤独を味わう結果となる。
そんな日々が四年程続いたある日、一台の高級車が孤児院を訪れ、恰幅を良い男が孤児院の院長に会いに来て、話をして。其の日の夜、院長に呼び出された慶は、男に預けられる事、此の孤児院とはお別れする事を知らされた。
孤児院より男の元へと移った慶は彼に連れられ、様々な骨董や宝石、絵画等の芸術品や希少品が売買される市場で、作品達の声を聞き、男は其れを元にして商品を買い、そして其れを他の人に売り、金を得る事を生業としていた。
男は其の巧みな話術によって贋作を真作と称しては、貧しい人々を騙して多大な金銭を手にし、其れを幾度も行い成り上がった、其の手の界隈では有名な人物。
━━━私は本物だ!
━━━偽物なんておかしいよ!
創られた物達が、産み出された物達が、男によって贋作呼ばわりされ、自分を否定される度に聞こえる、悲鳴にも似た声を聞く度に、慶の心は締め付けられ。
そんな生活が続いたある日、慶は精神面の疲弊と過呼吸によって倒れ、次に目が覚めた時は病院の一室であった。
自分が眠っている間の事を、担当医から聞かされた。男が此れまで売っていた物が贋作であると、男の秘書がメディアに情報を開示した事。男は詐欺の疑いにより、警察に書類送検されて事情聴取を受けている事。そして其の秘書から今後慶には関わらない事と、先々の生活が不自由なく送れるように、情報開示前の日付の書かれた封筒に、分厚い金一封が送られてた事を教えられ、其れを手渡された。
此の一件以降、慶は上条 順太郎と出逢い、ガンプラとガンダムの作品達に出逢うまで、自分の能力を嫌い、他者との繋がりを恐れ、己が背負った罪に苛まれながら生きてきた。
自分の力は、他者を不幸にする呪い。
此の力を持つ己は、咎人なのだと。
(だけど…!此の力で、フォースの皆を助けられるのなら…!ジョーさんに勝って、トラムさんに勝って!アズキさんを取り戻せるのなら!)
『俺は!此の力を使って…勝つ!』
━━行こう、ケイ!
眼を見開き、顔を上げる。ケイの気持ちにビヨンドガンダムが答え、煤に汚れたツインアイがシンクロするように、黄金の光を灯す時。
ケイはオーマ・リ・オーの放つ攻撃達の『声』を。彼等が内に秘めた『意志』を己の全てで『感じ取った』。
『━━ッ、行くぞ!』
レバーを倒し、ペダルを踏み、ビヨンドガンダムは走り出す。
『来なされ!』
オーマ・リ・オーによって、フィールドで荒れ狂う業風が、砂塵を含んだ渦を巻き。降り注ぐ稲妻が、敵を射殺す槍と化し。砕き割れた岩肌が削られ、鋭利な刃となり。変幻された溶岩が、神話に伝わりし竜の姿を描き。
青年とビヨンドガンダムに襲い掛かる。
━━━━━大根おろしにしてやる!
━━━━━バラバラになれやぁ!
竜巻が、落雷が、岩が、溶岩が。彼等の含む意思が、此方を倒そうと叫んでいる。
(並大抵の武器じゃあ駄目だ。あの攻撃を突破するには、別の角度から攻略する必要がある)
ジョーとの戦いを通じて、鋭利に研がれた感覚が、ケイの思考を明細にする。彼のガンプラの起こした技の凄まじさに対抗するには、今までの見方ではいけない。
攻撃の中に宿る声から直撃を避け、フィールドを駆けていき、ケイは『ある武器』を見付けた。
━━━私を使って。きっとお役に立てるわ
『使わせて━━貰うよっ!』
雷撃を避け、岩を躱わし、地面を踏みて『ソレ』を宙に跳ね上げる。直後、襲い来るは溶岩の竜。巨大な
「ケイさん!」
フォルテの声が真っ先に響いた其の時。風切り音が空間を薙ぎ、顎を開いた竜の顔がハンマーに横から殴られた様に凹み、横へと進行方向を『曲げられた』のだ。
『!……どうやら、見つかったみたいですね。ケイ様』
オーマ・リ・オーのメインカメラから見える映像を見、ジョーは驚きつつも、口角を僅かに上げ。しかしながら攻撃の手は一切弛めることなく、風と岩を念動力に等しい力を以て浮遊させ、プロ野球選手顔負けの豪速球に等しい速度でぶつけに掛かる。
ビヨンドガンダムが跳ね上げ、其の手に握りて振るい、一点に乗せた空圧で、マグマの竜を退けた武器。其れは太古の時代より存在し、人類の歴史において基本的な武器として用いられてきた物。
極めた者が使ったならば、全ての
其の武器の名は『
━━━━力み過ぎず、お饅頭を持つように、ね
ジョーが用意した棍から、年上の女性特有のおっとりとした優しい声が聞こえてくる。まるでそう持てば、自身の力の全てを引き出せるようになると、教えてくれているかのように。
其の声に導かれ、攻撃に宿る声を元に回避しつつ、ビヨンドガンダムを操って棍を握っては開き、たどたどしく回して、マニピュレーター越しに感覚を理解する。
━━━━━いけるぞ、ケイ!
『うぉぉぉぉぉぉあああああ!』
棍の回転によって出来る円の盾で、オーマ・リ・オーの力によって飛来する岩を弾き、風を薙ぎ、ビヨンドガンダムは其迄の引き気味だった動きから一転し、攻勢に転じた。まだ握って僅かにも関わらず、棍を一回転する度に其の動きは研ぎ澄まされ、洗練されていく。
ケイが製作したビヨンドガンダムは、あらゆる武器を用いて自身と、己を動かす者の可能性を引き出す事を主眼に置かれたカスタマイズが施されている。
ジョーとの戦いで極限まで追い込まれ、被弾が許されない状況に陥った事で、ケイに宿った力は更に覚醒。万物の宿す声から『相手の攻撃行動予測』と『武器の最適な使い方』の全てが、彼には
━━━━━そう、其の調子!
━━━━━雷に注意しろ、ケイ!
━━━━━痺れな、私に!
聞こえてくる攻撃の声達と、ビヨンドガンダムと棍の声とを聞き分け、巻き起こる土埃を振り払い、爆発寸前のブースターに鞭打ち、機体は最後の力を絞り出すように空へ飛んだ。
間接部分含めた機体のフレームも度重なる攻撃によって限界を向かえ、マニピュレーターと手首も棍を一回振るえるか否かの状態。
(此の一撃に━━━全てを込めて!)
棍を両手に握り、利き手で回転をキマリスヴィダールの武装・ドリルランスの容量で先端へエネルギーを伝える。狙うはオーマ・リ・オーの持つサイキョウ・リ・オーブレードの柄、唯一つ。一点集中の打突で弾き飛ばす━━━━例え『其れが叶わぬ事』であったとしても。
『うぉおああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!』
バックパックブースターがスパークの後に爆発し、足裏のスラスターも機能を停止。爆発の衝撃でビヨンドガンダムは前へカッ飛ぶ。回転によって先端部の破壊力が高められた棍を、全ての力を込めた全身全霊の突きを、ケイと彼のガンプラは繰り出した。
『━━━━━━ケイ様。よく出来ました』
だが、それでも。
ジョーとオーマ・リ・オーから武器を落とすには至らなかった。ケイの渾身の一突きもサイキョウ・リ・オーブレードの刀身に受け止められて、火花を散らすも軈ては止まり。
そしてビヨンドガンダムは、限界を向かえた腕間接の崩壊を皮切りに、装甲とフレーム各部にヒビが走り出して、吸い込まれるようにして地面に落下していく。
『…ごめんよ、ビヨンドガンダム……俺、もっと強くなる。強くなって…必ずオーマ・リ・オーから武器を落とせるようになる…から』
ツインアイの光は失われ、崩壊していくビヨンドガンダムの電子の粒達が、フィールドの空へと融けていく。落ちていくケイを、ジョーのオーマ・リ・オーが受け止め、天変地異に等しい修行は一先ずの終わりを迎えたのであった。
**********************
「ジョーさん、ありがとうございました」
「ケイ様も、お疲れ様でございます」
ガンダム
「ジョーさん、本当に強いですね。俺の完敗です…」
「貴方も、よく頑張りました。己に出来る事をやりきる姿勢、敬服致します」
誰がどう見てもケイが負けた事実は、天地がひっくり返っても変わる事はない。そしてケイにとって、ジョーに勝つと宣言しておきながら、ぐうの音も出ない程に打ちのめされ、圧倒的な実力差を見せ付けられる形に終わったのだから。
「ジョーさん!アンタすげぇよ!」
「あ、あの!サイン貰えますか!?」
そんな二人に、正確にはジョーの戦いに感動し、或いはオーマ・リ・オーの再臨に歓喜した虎武龍のダイバー達が続々とやって来て、瞬く間にジョーの周りをパパラッチが如く取り囲んでいき、自動的にケイは外へと押し出されてしまう。
「弱いな…俺は」
曇天の空に手を伸ばして、言葉を溢す。フォースのリーダーとして、自分はあまりにも弱い。
「ぞぉが?オラば、そうば思わないだよ」
気を落とすケイに、親友のカンタが声を掛ける。其の後ろには、ヒノワを始めとしたジョー以外のビルドライジングのフォースメンバーと、フォルテが居た。
「ケイ、あの怖いガンプラと戦ってる時…最後まで自分と、自分のガンプラを信じてた。オレ…怖くて動けなかった、から。…ケイは、ずっと強い…よ?」
「ジョーは世界の頂点を獲った経験もありますの。一端とは言えど、彼が自身のガンプラの力を使ってまで貴方を鍛えた……其れは誇るべき事。ケイ様、貴方はジョーに気に入られているのですね」
ミシェルがさらっと、とんでもない事実を言って、ケイは驚愕の表情と共に目を丸くする。
「え"っ…ジョーさんって、世界チャンピオン…なの?」
「…あら、てっきり気付いてるものかと思ったのですが」
「………初耳、で…━━━━━」
冷や汗が額に浮かび、先程まで極限の緊張状態に在った身体は解放され、想像以上にドバドバと流出。其れが原因か、はたまた自身の能力を使った反動か、ケイの視界はグラリと揺れて、意識混濁を引き起こし、前のめりに倒れてしまう。
「ケイ!?」
「ケイさん!」
「ケイ、じっがりするだ!」
仲間達の声が薄れ行く視界と聴覚に聴こえたのを最後に、ケイの意識は深い闇へと落ちていく。
「ししょー!ケイさんが、ケイさんが倒れちゃったよ!どうしたら良いの!?」
「おいおいマジかよ…!取り敢えずフォースネストに運べ!冷たい水も飲ませて安静にさせるんだ!ジョーと話すのは後でも出来る!急げ!」
オーマ・リ・オーの再臨。其れはビルドライジングに、フォースリーダーのケイと、メンバー達に大きな転機をもたらす『起爆剤』となり。
そして此の一件を機として、ケイはGBNにおいて『ビルドライジングのケイ』として、其の名が広く知れ渡って行くことになるのだが……其れはまた、別の譚になる。
掴み取った、己のやり方
其れでも届かぬ、己の刃