ガンダム・ビルドライジング   作:ガリアムス

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主人公の中盤から最終話まで乗る、新しいガンプラの製作が順調&GBNに変化が訪れ、新たな風が吹き始める……そんな第35話




Ep,35 変えよ自分 変われよ世界

バリバリッ!

ドドドドドドド!

ズガガガガガ!

 

「……んんっ……」

 

フォース・虎武龍のフォースネスト内一角。ジョーとの極限の修行を経て、緊張状態から解放された反動で倒れたケイは、外で響く轟音で目を覚ます。

 

「……何これ」

 

目覚めた彼の視界には大きな双丘が飛び込み、後頭部には柔らかい感触と、首回りには硬い感触が有った。まるで自分は今、誰かに膝枕をされている。

 

「あ、ケイさん目が覚めた?」

 

声の主はフォルテであり、ケイの顔を見ようとして、背中を丸めてきた。そして当然の事だが、彼女の胸も其の動きに連動して迫り、青年の顔に当たって膝枕と共に肉のサンドイッチ状態が出来上がる。

 

「むぶふみゅ!?」

 

肉の壁に鼻と口を塞がれ、息が出来ない。必死に自分のピンチを伝えんとし、ケイは窒息のカウントダウンが始まる中で、両手両足をバタつかせながら、必死に床を叩く。外の轟音で音は掻き消されたが、必死のアクションが通じて、フォルテが己の仕出かした事に気が付き「あっ!ごめんなさい!?」と、丸めた背中を伸ばした事で、何とか事なきを得た。

 

「ぶはぁ!?と、時が見えかけた…」

「本当にごめんなさいケイさん!」

 

危うく青年を窒息させかけた事を、必死に謝るフォルテにケイは大丈夫と右手でサムズアップを行った。

 

「そう言えば皆は?あと外で凄い音がするけど…もしかして」

「うん、其のもしかしてだよ」

 

彼女はそう言いつつ、コンソール画面を開いて外の様子を表示し、映された景色にケイは口を開けて絶句する。

 

雲が重なり黒に染まった空、稲妻の光が幾重にも迸り、風は巨大な渦を巻き、自分が一度戦ったマグマの竜が、日本神話の怪物(けもの)たる八岐大蛇の如く、八首を揺らし、其の頭上に己を従える主人に頭を垂れた。

 

地面にはビルドライジングのフォースメンバー達のガンプラが、傷と埃を被り、薄汚れ、RPGのラスボスたる魔王に挑む勇者一行の様に、空にスラスターの力も借りること無く宙に浮かぶ存在を見つめている。

 

ガンプラの名はオーマ・リ・オー。理の王者を名乗りながらも、繰り出される攻撃、一挙手一投足、其の全てが理の外に在るかのような、トチ狂った性能。

 

事実、ジョーを除いたビルドライジングのメンバーの中でも、取分ガンプラの作り込みと出来栄えが優れているラルクのガウスクランダーと、マグナバーンとブリザバーンを武装したアキトのダイガンダムでさえ、オーマ・リ・オー相手に手も足も出ない状況にあるようだ。

 

「やっばり…ジョーざんば、滅茶苦茶強いだよ…」

「攻撃全然…届かない…」

「分かってはいましたが…真正面から向き合い、刃を交えると、此程までに凄まじい性能だと思い知らされますわ…」

「…でも!ケイさんは…最後まで諦めなかった、です!」

「アイツは実力の差を見せ付けられても、ガンプラが倒れる瞬間まで戦い抜いた…!なら尚更、俺達も!ビルドライジングのメンバーとしての意地を見せなきゃあ、立つ瀬が無いだろう!」

 

ラルクとアキトの兄弟が士気が落ち込み、嫌な空気で淀んだ雰囲気に叱咤激励を入れ、己が乗るガンプラを立たせ、仲間達を鼓舞する。

 

「当だり前…だべさ!ケイば、こげな化物相手に自分の出来る事ば、やりぎっだ!!オラだっで、こんなどごで立ち止まるばけには、いがないべ!!」

「諦めるなんてもっての他…!相手が例えジョー、貴方であっても━━━━私は、己の使命を果たしてみせます!」

「オレも!皆と一緒に…頑張る!!」

 

GBNに数多在るフォース━━━其の一団を統率するリーダー達には、少なからず人を惹き付ける魅力…『カリスマ性』がある。

 

ある者は他を寄せ付けず、追随を許されない圧倒的な実力を有し。

ある者は礼節と礼儀を持ち、他者を思いやる広き心を持ち。

ある者は、誰にも負けない大きな夢や高い目標を定め、其処に向かって進み続ける。

 

等々様々に分類され、ケイもまた其の資質を持つ者の一人と言えるだろう。

 

「…もっと、強くなりたいな」

 

フォースメンバーがジョーと、オーマ・リ・オーを相手に最後まで諦めない姿を見て、青年はそう呟いた。彼等のリーダーとして、恥じない存在になりたいと。

 

ケイの瞳が宿す、真っ直ぐで強い決意を間近で見ていたフォルテは、彼に向けて『あるイベント』の名前を口にする。

 

「ねぇねぇ。ケイさんは此のGBNに、『バトルスクランブル』ってイベントが在るの知ってる?」

「バトルスクランブル…?何ですか、それ」

 

バトルスクランブル━━━GBNで開催されるイベントの一つであり、同ゲーム内に存在する無法地帯(ハードコア・ディメンション)『ヴァルガ』のルールを踏襲しつつも、イベント用に設定を調整したダイバーラルクDから挑戦出来る『サバイバルイベント』の名称である。

 

闇鍋、魔境、上位ランカーの巣窟、戦闘狂の楽園…そう呼ばれるヴァルガを、擬似的に体験出来るのが此のバトルスクランブルであり、彼方と違って参加すれば一定のダイバーポイントを入手出来る他、撃墜された場合に本来なら減るポイントも此のイベントでは『半減』で抑えられている。

 

また、終了時点で生き残っているダイバー全員に対し、報酬として『パーツデータ』と『ビルドコイン』が。最も多くの敵機を撃墜したダイバーには上記に加えて『MVP報酬』という『レアパーツデータ』が与えられ、自身のガンプラの強化に繋げる事も可能だ。

 

「バトルスクランブルはね、簡単に言えば『生き残りを懸けたサバイバルバトル』なんだ。禁止兵器、乱闘乱戦、兎に角何でもありのバトルイベント。イベントにはチャンピオンや、名だたる上位ダイバーも参加する事があって、中級ダイバー曰く『戦って勝つよりも五体満足で生き残る方が難しい』って言われてるの。

 

でもでも!今日のケイさんの戦いを見て、ウチは確信したの!ケイさんなら絶対、バトルスクランブルで生き残って、ダイバーランクを上げられるってね!」

 

ジョーとの修行を通じて得た、繰り出せる攻撃の意思を読み取る力。アレが常に、意識せずとも出来るようになれば、無類の強さを持つトラムに対抗する切り札になるかも知れない。

 

「其のバトルスクランブルってイベント、参加して最後まで生き残ってみるよ。其れで其のイベントって何時やるの?」

「バトルスクランブルは月に一回、近辺だと~……8月の最初の水曜日にやるみたいだよ!」

 

8月の頭かと考え、記憶に刻んだガンプラの箱のシフト表を思い出す。運が良いことに其の日は、アルバイトも大学の授業も無い、完全にフリーな休日となっていた。

 

残された日にちこそ余り無いが、其れでも出来得る限りの準備をして、イベントに参加しようとケイは心に決めたのだった……。

 

 

********************

 

 

同時刻、フォース:ソード・ブリンカー・レヴ。

 

其のフォースネスト内、修練道場。藁と材木を用いて作られた、木製人形が百を超える数が並ぶフィールドに、ガンダムバルバトスをベースとしたガンプラが一機、静かに立ち、周りにはフォースメンバーが無言で見守っていた。。

 

第二形態をベースとし、装甲とフレームに血の赤でスミ入れを行った其の機体は、アストレイレッドフレームのように腰に添え、納めた鞘に指先を置く。

 

全神経を研ぎ澄まし。

 

呼吸を調え。

 

彼女は、(おの)唯一(ひとつ)の武器を抜く。

 

『━━━━斬ッ!』

 

抜刀と同時に銀光が走り、鈴の音のような声と共に迷い無く振るわれた刃が、木製人形の一つを斬る。彼女は、そして彼女が駆る悪魔(バルバトス)は、止まらない。

 

『━━━斬ッ!』

 

切り上げ、袈裟斬り、胴割り、一文字、牙突、首断ち━━━自身の流派たる『新月流』の太刀筋を以て、言葉を発さぬ木人を、唯々等しく斬り棄てる。

 

『斬ッ!』

 

型を繋げ、最速最短で、一撃必殺の斬擊を放つ。

 

対峙した者の、命の狩り取る女武者。

 

円舞曲(ワルツ)を踊る、優美な踊り子。

 

神に奉納の祷りを捧ぐ、神楽を舞う巫女。

 

ソード・ブリンカー・レヴの面々の瞳には、彼女の━━━ダイバーネーム『アズキ』の剣劇がそう映った。

 

『………………』

 

残心の後に太刀の回し、鞘へ刃を納め。鍔と鞘が鳴った瞬間、百在った木製人形は『同時』に、綺麗な断面を遺して地面に落ちていく。

 

(日々…剣の腕が洗練されていくのを、犇々と感じる。だがまだだ…私はまだ、強くなれる)

 

深く、深く息を吐き、構えを解く。愛機を電子の粒へと還し、アズキは同じく粒子に変わって消える木製人形達の亡骸を、静かに見つめてフォースリーダーのトラムの方に歩いていく。

 

「アズキ、君の剣筋は何時見ても素晴らしいな」

「これでも私は未熟さ、トラム殿」

 

達人の領域に足を踏み入れて尚、進化と飛躍を貪欲なまでに求めるアズキに、トラムと一部を除いたメンバーはゾッとする。

 

と……━━━━

 

「トラムさーん!!トラムさーん!!」

 

白髪に先端が黒の髪色に、白の道場着と赤の帯を巻いた少年ルックのダイバーのゼラが、何やら慌てた様子でトラム達の方に走ってくる。

 

「どうした、ゼラ」

「ハァッ…!ハァッ…!ハァッ……!た、大変です!ど、どどどど…!道場破り!道場破りが!!」

 

『此処か?剣好きのダイバーが集まる、強いフォースってのは』

 

木造の門が蹴り破られる音が鳴り、地面に門の残骸が落ちて砂煙が上がる。風が吹き、其処に立っていたのは……見るからに重装と分かる『騎士』だった。

 

全身を黒塗りの西洋鎧に身を包み、風に揺れる深紅色のマント。背中には童話の世界のドラゴンさえ斬り殺せるような、巨大な剣を背負っている。

 

背丈も180cmは優にある其の者は、身体から強烈なオーラを放って周りを威圧。トラムとアズキを含めたメンバーも、全員コンソール画面をタッチして、直ぐにでもガンプラを繰り出せる状態に入っていた。

 

最早一触即発の緊迫した状況………しかし、其の騎士がアズキの姿を視界に捉えた瞬間。其の身から威圧のオーラは消え失せ、鎧と剣の重さは関係無いと言わんばかりの軽快な疾駆でアズキへと駆け寄り。

 

 

 

「『杏子ちゃん』!」

 

 

と一言。騎士兜の奥から光を放ち、アズキの両手を何時の間にか掴んで、ブンブンと上下に揺らしては、自身もピョンピョンとジャンプ。

先程までの圧力が嘘のような、まるで子供の振る舞いにソード・ブリンカー・レヴの面々は困惑の色を隠せない。

 

そんな中、アズキは唯一人、此の騎士甲冑に身を包むダイバーの正体に逸早く気付く。

 

「……もしや『六花』か?其れと私は此処ではアズキとして名を通している」

「!やっぱり気付いてくれた!さっすが杏…じゃなくってアズキちゃん!私の嫁!そうだよー!GBN(こっち)では『ヒドラ』って名前(ネーム)でプレイしてるんだ!」

 

キャーキャーと黄色い声を出しながら、ぴょんぴょんと跳ねては身体一杯に喜びを表現する、黒騎士のダイバーことヒドラ。

 

「アズキ、ヒドラと知り合いか?」

「あぁ。私と彼女はGPD時代にタッグを組んで、様々な大会に出場した経験がある」

 

昔の日々を懐かしむように思い出すアズキ。しかし其のやり取りを聞いたヒドラの纏う、ほんわかムードが急激な敵意へと変わった。

 

「ねぇ、其処の女の人━━━━━━ナンデイマアズキチャンノコトヲアズキッテヨビステニシタノ?」

 

首骨を鳴らして、ずいずいとトラムに迫る。騎士兜の隙間に揺れる眼光が鬼火の如く揺らめき、彼女に対する純粋なまでの殺意を向けていた。

 

「私は此のフォースのリーダー。そしてアズキはフォースの一員…他のメンバーがアズキの事をどう呼ぼうと、其れは個々人の自由だとは思うが?」

「アズキチャンハネ…『メガミ』ナノ。ソレヲヨビステニスルノハ…ワタシガ『ゼッタイニユルサナイ』」

 

視線が火花を散らし合い、下手を打てば一触即発の戦争勃発不可避な状況。ゼラを含む、実力が低いダイバー達は畏れや恐怖に震え上がり。

フォースの古参組に幹部クラスは、いざとなれば実力行使も已む無しと考え、コンソール画面のガンプラ顕現ボタンに指を降れようとしていた。

 

「ヒドラ。何時も私の事を気にしてくれているのは嬉しいが、今は此処が私の居場所だ。トラム殿や皆も剣の道を極めんと日々努力を重ねている。彼等彼女等を無下にしないでやってくれないか」

 

昔と変わらず、アズキの。杏子の事ともなれば周りの全てを敵に回そうとも、彼女を全力で支え、障害となる存在を其の威圧や殺意を以て退けてきた、ヒドラこと六花。そんな彼女を唯一止める事が出来るとすれば、其れはアズキにしか出来ない。

 

「…むぅ、仕方無いなぁ。私のアズキちゃんが其処まで言うなら、『特別に』ちゃんとか、さん付けで呼ぶのを許したげる」

 

頬を脹らませ、不機嫌そうな表情になりつつも、大好きな彼女のお願いを受け入れ、溢れた殺意と敵意を引っ込めるヒドラ。此処で「あ、そうだ」と、ヒドラは『当初』の目的を思い出す。

 

「トラム…だっけ?アタシ、此のフォースに入りたいんだけど、良いかな?」

 

道場破りをした挙句、フォースリーダーのトラムに喧嘩を吹っ掛け、其処から加入したいと言ってきたヒドラに、皆唖然としている。

 

「トラム殿。ヒドラは私の事が絡み、熱くならなければ、冷静な判断能力と広い観察眼を有している。必ずやフォースの勝利に貢献する能力がある。そしてヒドラの実力は、タッグを組んで隣に立ち続けた、私自らが保証する」

 

「頼む」と、強く真っ直ぐな瞳をトラムに向け、親友の為に頭を下げたアズキ。

 

「ラクシュマナ、次のフォース戦は何処だったか」

「フォース名『トルスヴェイン』。フォースランクはB、日程は3日後になっている」

「分かった。ヒドラ、君にはトルスヴェインとのフォース戦に、出場メンバーの1人として出て貰う。其処でアズキが認めている君の実力を私達に、そして相手に見せ付けてみせろ」

 

近々に行われるフォース戦に、加入テストも踏まえて参戦する事が決まったヒドラ。

 

「頑張れよ、ヒドラ」

「任せて、アズキちゃん。アタシの実力、皆に見せ付けてやんよ」

 

嬉々とした声で、親友のアズキに答える。彼女と同じ居場所に立つ為、負けられない、やり遂げなくてはならない戦いが、ヒドラを待っている。

 

 

 

 

********************

 

 

 

南アメリカ・ディメンション 砂漠地帯………灼熱の太陽光が大地を焼き、乾いた風が積もった砂を巻き上げ、時折砂の竜巻が起きるフィールド。普段は一部の生き物やミッションで訪れるダイバー以外は、人気も無く静かな場所。しかし今、幾度も起きるは爆発の音。

 

そして━━━━『悲鳴』。

 

『ああああ!?』

 

ビームライフルに膝を撃ち抜かれ、バランスを崩した白いベルガ・ギロスが砂地に墜ち、機体が砂丘にめり込んだ。

 

『アッハハハ!良いねぇ良いねぇ、DDツールの力はサァ!』

 

ミサイルが乱射され、砂塵が舞い上がり、デュエルガンダムのビームサーベルがベルガ・ギロスを庇うべく、インターセプトした白を黒へ反転塗装したレッドライダーを叩っ切り、大破に追い込む。

 

無論、デュエルガンダムのダイバーは倒そうと思えば倒せた一撃を、わざと加減して行った。理由は唯一つ、DDツールの力でレッドライダーに弱体化とマーキング機能を付与させる事。

 

与えられた力を己の欲望を満たすためだけに使い、其の邪魔をする者は力によって捩じ伏せる。力無き者達を虐げ、彼等彼女等の悲鳴で愉悦に浸り、暴意のままに搾取を続けていた。

 

『オーッホホホホホ!踊りなさい、死のダンスを!』

 

ルージュカラーの塗装に、金のマスキングがフレームに極め細かく施し、バックパックにミーティアを装備したプロヴィデンスガンダムが、マルチロックオンと共にミサイルや集束ビーム砲を撃ち放つ。

 

『わああぁ!?』

『きゃあ!?』

『滅茶苦茶だ…こんな…!』

 

着弾と共に噴き上がる爆炎と衝撃に飲まれ、桃色のクランシェカスタムが、紅蓮のヒルドルフが、ミリタリーカラーのAGE-3フォートレスが、砂原へ叩き付けられる。

 

強化型DDツールによって引き起こされたデバフによって、襲われた側の機体の装甲値は急激に減少し、何時墜とされてもおかしくない状態に追い詰められていた。

 

『呆気ねぇなぁ…!もっと俺達を楽しませろや!』

 

ゲラゲラと嘲り、銃口を瀕死の機体に向け、トリガーに指を乗せる。救助要請も、緊急帰還も、DDツールによって封じられ、襲われた側のダイバー達は、まな板の上の魚の様に、ただただ捌かれるのを待つばかり。

 

だがしかし。

 

『ん、何だあのひ』

『えっ━━━━━』

 

銃口を構えたガンプラと、ダイバー達を突如として巨大な光と熱波の奔流が呑み込み、次々と赤い炎の華へと変わる。

 

『大丈夫かい?こっから先はアタシに任せな』

 

フォートレスのダイバーを始め、被害に有った機体に通信が入り、彼等は、彼女等は、自分達を助けた者の正体を知る。

 

くすんだ銀と藍色の塗装を施し、胸に巨大な髑髏を掲げ、フルクロスを其の身に纏う其の機体は、クロスボーンガンダム魔王をベースとする、改造ガンプラ。

 

様々なクロスボーンガンダムのパーツや機能を集約し、弱者を狩る卑劣な行いを狩り、此の世界の平和を護る者。

 

ダイバーネーム『フランシス』と、其の愛機クロスボーン・オーバーロードの到着である。

 

『弱者狩り、初心者狩りは━━━アタシが狩る。そして其れが、DDツールを使ってる奴なら尚更さ。

 

1人残さず、な』

 

ドスが効いた声で宣言し、フランシスはコンソールから、クロスボーンオーバーロードの必殺技『ガチャウェポンシステム』を起動する。

 

ビルドコインが消費され、腕部のIフィールドジェネレータを改造し、カプセルステーションと成った場所からレーンを伝い、空いた右手からカプセルが飛び出して、目の前で開かれた。

 

『オラァ!』

『喰らえやゴラァ!』

『ブチ壊れろぉ!』

 

ビームサーベルを抜刀し、シールドを構えたデュエルガンダムが左から突撃。

対艦刀シュベルトゲベールを牙突で、右側を塞ぎ。

中央をレイダーガンダムのブースター付き鉄球、ニョルニルが飛来。

 

即席とはいえ、DDツール使い達を軒並み蹂躙し、殲滅してきたフランシス相手は厳しく、連携攻撃で潰そうとしたのだろう。

 

 

が━━━━━━━━

 

 

『へへっ…今日はどうやら、ツイてる日みたいだね』

 

システムに選ばれたムラマサブラスターを僅かに見て、笑みを溢したフランシス。迫り来るデュエルガンダムとソードストライク、レイダーが投げたニョルニルを、円月斬りの如く、物理耐性に富んだPS装甲の上から一刀の元に叩き斬り。

 

『じゃあな』

 

デュエル、ソードストライクが爆散した数瞬の間に、X字の背面スラスターを中央に集めて、一気に加速。レイダーのコックピットを足裏から展開した、ヒート・ダガーによる踏み付けによって貫き、ダイバーを直接仕留めてみせた。

 

消え行くレイダーを踏み台に、再度X字に背面スラスターを広げ、フライトユニットを装備したウィンダムやM1アストレイ達を、ムラマサブラスターとガチャウェポンシステムで新しく呼び出した髑髏が刻まれたカトラスを駆使し、まるで無双ゲームの雑魚キャラ軍団を、フランシスはバッサバッサと薙ぎ倒す。

 

『…やっぱ、数が多いね』

 

敵を次々と撃墜し、大立回りを見せ付ける彼女だが、古来より戦いとは、数的優位が物を言う。戦いは数だよ兄貴と名言が在るように、セオリー通りであれば、圧倒的な力を持つ個人一人よりも、万の弱者が力を合わせた方が厄介極まりないのである。

 

そう━━━━『セオリー通り』であれば、フランシスが不利であるのは明確で、エネルギーが尽き果てたなら確実に取り囲まれ、擂り潰されるのがオチだ。

 

『纏めて吹っ飛ばす』

 

敵の攻撃を回避しつつ、オーバーロードの頭部にあるマイクロウェーブ受信機能で、月面基地からのマイクロウェーブを要請。残されたフライトユニット持ちのウィンダムが放つミサイルをステップを踏まえて躱わし、ムラマサブラスターをライフルモードに切り換えて、打ち落とそうとするフランシス。

 

『ん!?』

 

自身に向けて放たれたミサイルが、ビーム直撃の瞬間に突如として『粒子状』に分解され、オーバーロードの眼前で『再構築』されたのだ。

 

『Iフィールド・バリア!』

 

両肩のドクロユニットの両目が銀に光り、自機の周りを風が覆う様に、バリアフィールドが形成。間一髪、ミサイルの直撃を回避するも、爆発で機体の体勢が崩れた。

 

『今じゃあああああああああああああ!』

『いただきぃぃぃぃぃ!!』

『フランシス、貰ったよォ!』

 

ゴールドフレーム・天が、アストレイ・レッドドラゴニクスが、イージスガンダムが。得物を手に取り、我先にとクロスボーン・オーバーロードとフランシスに喰い掛かる。

 

『いいや━━━喰われるのは、アンタ等さ』

 

サテライトシステムの起動に用いられるマイクロウェーブ。其れは何も、幾万の敵を打ち払う戦略級兵器(サテライトキャノン)の発射の為に在らず。

 

マイクロウェーブ其の物も強大な、超高出力のレイザービーム。其れを受け止めるには、システムを持った機体か余程のビーム耐性が無くては不可能。

 

況してやSEEDやSEED DESTINYの機体達は、物理耐性こそ秀でてはいるが、対ビーム兵器にはシールド・ビームシールドを用いて防いでいた為、あまり強いとはいえない。

 

となれば。発射主の機体が何らかの理由で、発信要請地点から動いてしまった場合、行き場を失ったマイクロウェーブはそのまま地面に向かって落ちていく。

 

そして其れはフランシスを、クロスボーン・オーバーロードを仕留めんとしたガンプラ達を焼き尽くす、閃光の輝きと化して機体を貫き、融解し、焼き尽くす刃として襲った。

 

『え━━━』

『ぴゅあ━━』

『う、うわあああああ!!』

 

過剰な熱に焼かれ、爆散する機体達。其の間にも危機を越えたフランシスは、ガチャウェポンシステムを使いこなし、DDツールで強化されたガンプラ達を、弱者を虐げたダイバー達を、一機残らず一人残さず、次々と撃墜。

 

『ひ、ひいいいい!た、頼む!参った!』

『アンタはそう言って、降伏しようとしたダイバーを潰したんだろ?━━━あばよ、クソ野郎』

 

最後の一機に死刑判決を下し、ビームザンパーの一刀の元に、唐竹割りを敢行。DDツールを使い、弱者を淘汰する暴挙を行ったダイバー達を、フランシスと愛機のクロスボーンオーバーロードは一人残さず狩り尽くし、誰も居なくなった砂漠には、元の平穏が戻る。

 

「しかし…以前のDDツールより、タチが悪くなってやがるな。数もだいぶ増えて、アタシ一人で対処するのも限界が出そうだ」

 

戦いを振り返り、情報を整理するフランシス。其処に一本のメールが突然届いた。

 

「メール…送り主は、マギーさん。何々…『MOONでチャンピオンがロンちゃんと貴女に、DDツールの騒動についての話がしたい』…か」

 

チャンピオンと智将ロンメルが、DDツールに対してアクションを起こした事に、フランシスは『アレ』を再び二人の号令の元に発足するのかと、期待に胸を踊らせる。

 

世界は、変わろうとしている━━━━━

 

 




青年は、強くなる為に魔境へ挑み

MS斬りの悪魔は、嘗て盟友と再び廻り合い

魔骨の戦皇は、侵略する悪意を断つ



人物紹介

ヒドラ(CV:森林めぐみ):フォース・ソード・ブリンカー・レヴに道場破りをしてきた、黒騎士の鎧に身を包むダイバー。アズキとはGPD時代にタッグを組み、様々な大会に出場した経験を持つ。

其の実力や観察眼はアズキ本人の折り紙付きなのだが、彼女を最優先するあまり、ピンチには身を挺して救いに行き、其の際には全力全開、自己犠牲さえ厭わない、所謂徹底的に尽くすタイプの人間である。

またアズキの事が大好きで、彼女が大好き過ぎるが故に『女神』と神格化しており、不用意に彼女を呼び捨てで呼称するならば、殺意と敵意をマシマシに全力で排除しに掛かる狂気に満ちており、GPD時代には『女侍の狂懐刀』と呼ばれたらしい。

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