ガンダム・ビルドライジング   作:ガリアムス

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機体大改修の第8話です




Ep,8 フルリビルド

DDツール使いとの戦いより3日。時刻は午後9時…此所は営業時間を終えたガンプラの箱、其のプレミアム商品棚が在るエリア。

 

「やっと…やっと買える……」

 

青年、朱鳥 慶が見つめる先に在った物…其れは現GBNチャンピオンのクジョウ・キョウヤが愛機として使用しているガンプラ━━━『ガンダムトライエイジマグナム』、其のレプリカキットだ。

 

彼が作った機体には、GBN内最高報酬たるパーフェクトレアの『トライエイジシステム』が搭載されているが、レプリカ仕様ではシステムがオミットされている。しかし、チャンピオンが製作したガンプラのクオリティの高さに加えて、無類の機体性能を誇る為に、販売告知と予約販売が発表された直後に、サイトアクセスが殺到。

 

其の結果、受付開始から僅か10分で予約販売が終了。全国各地の模型店で一般販売されても、速攻で売り切れが続出。後日再販されるも直ぐに売り切れてしまい、以来ネット通販でもプレミアム価格が付けられ、ガンプラの箱も例外無く高額設定となった。

 

現在、プレミアム商品棚に置かれたトライエイジマグナムの値段は『¥23,000』。RGの大型キットと同じくらいの価値が付いている。

 

「國弘さん、明人君、買わせていただきます」

 

一礼と合掌。キットを大事に手に取り、レジへと運ぶ姿はまるで、神事で奉納の儀式を行う住職であるかのように。レジエリアに辿り着き、ゆっくりと國弘に差し出す光景は重大な取引現場の如く、ビリビリとした緊張感が漂う。

 

「慶、あんまり緊張じなぐでも…」

「いやいやいやいや!だってトライエイジマグナムだよ!?ちゃんと扱わないとバチが当たるって!」

 

大袈裟だなぁと國弘は思うが、キットを大事に扱う姿勢は習う所がある。

 

「お買い上げ、ありがとうございます」

 

会計を終えて、大事にキットを手に取る慶。遂に、AGE-1 ノーマルの大改修に必要な、最難関となるピースが手に入った。

 

「これで、レイザーの改造キットを注文すれば作れる。待っててくれ、AGE-1」

 

寮内の自室に置かれた自分のガンプラを思い、明人が描いたイラストを形にすべく、気合を入れるのだった……

 

 

*********************

 

 

翌朝、都内某大学寮内……

 

「ふぁあ……よく寝たぁ……」

 

体を伸ばしてベッドから起き上がった慶は、ボサボサの髪と眠気眼を掻いて、洗面所へと向かう。温寒調整の蛇口を捻って水温を人肌に調節し、両手の器でたっぷり受けて、一気に被る。

 

「………ぷはぁ!はぁ……」

 

蛇口を止めて、濡れた顔を洗濯したばかりの新しいタオルに顔を埋め、暫し感触に身を任せる。タオルを元の場所に戻し、買い足して戸棚に閉まったレーズンバターロールの袋を破き、中から3個を手に取って、口に含む。

 

パンを咀嚼しつつ、コンセントに繋いだ充電器とスマフォを外して、G-witterと呼ばれるアプリを起動する。毎日の情報を慶は此所から得て、順太郎との会話でネタにしているのだ。

 

「んぐ…。………お、新しいキットの販売スケジュールが更新されてる。へぇ~『Ξガンダム』がHGキット化するんだ…。しかも『ペーネロペー』と合わせた、DX番も販売と………。絶対デカいよな箱………」

 

実物には興味は有るものの、製作に時間が掛かることは間違い無く。しかし何時かは、自分の手で其の2機を作ってみたいと思った。

 

「さてと、だ。後は『レイザー改造キット』を通販で取り寄せて、到着までに他パーツを改修しておこう」

 

アプリ一覧から『Gmazon』をタッチし、検索欄から『AGE-1 レイザー改造キット』をエンジンに掛けて、項目を見る。嘗ての雑誌付録のキットであるため、値段も少々高かったものの、プレミアム価格のトライエイジマグナムを購入した今では、其れも些細な値打ちに見えてしまう。

 

金銭感覚の狂いは自滅を招くため、此の感覚には馴れてはいけないと肝に銘じて、青年はレイザー改造キットを購入。到着まで2日は掛かるそうなので、彼は此の間にAGE-1の改修を進める事にして、早速作業に取り掛かる……。

 

 

*********************

 

 

AGE-1 フルリビルドのコンセプトは『あらゆる状況と敵に対し、十分な戦闘が可能となるようにする事』にある。ノーマルが持つ万能機体としてのスペックを更に推し進めつつ、射撃・格闘・機動のガンダムに置ける三本柱の強化に比重が置かれた。そんな慶のガンプラ製作は、先ず『サーフェイサー』の下地と、『ガンダムマーカー エアブラシ システム』を用い、トライエイジマグナムを始めとしたパーツの塗装から始まる。

 

風下等を考慮しながら、寮の裏手にある空いた空間に移動、使用するパーツとランナーを猫の手にセットする。厚手の手袋とマスクを着用し、サーフェイサーの缶容器を良く振って、キットの空き箱に試し吹きをして塗料の出方を確認。

 

動画で見たガンプラマイスターのケンさんの塗装映像に習って、強過ぎず・弱過ぎず・出し過ぎずを意識しながら、1つ1つ丁寧に塗装し。パーツがごちゃごちゃにならないよう区分けを行い、乾燥するのを待ちながら、明人のイラストに目を通して、製作行程を再度確認。

 

サーフェイサーの乾燥を終え、一旦自室に戻った慶はフルリビルドの武装である『腕部複合武装ヨルムンガルド』と『エクセントブースター』、そして『トリモチミサイル』の製作に入る。

最初に取り掛かったのは、フルグランサのシールドライフルをベースに、シュバルベ・グレイズ(マクギリス機)のワイヤークローの要素を取り入れ、北欧神話に登場する毒蛇の怪物の名を賜った、腕部複合武装ヨルムンガルド。

 

まずワイヤークローが、シールドライフルの白地部分にマッチするように改造を行いつつ、ビーム射撃・ビームサーベル展開と、ワイヤークローの射出状態が干渉しないよう調節。

使用するリード線も電導率の高い金属タイプを用い、シールドライフルのエネルギーを消費する事で、毒蛇が獲物を仕留める武器として使う毒を、放電に置き換え再現する。

 

其れによって、元々大型だったシールドライフルはワイヤークローを組み込んだ事でコンパクトになり、取り回しの良さと近接戦の打撃力が向上した。

 

続いて、バルバトス第6形態のサイドブースターに、AGE-1 ノーマルのビームサーベルを収め、サーベルのエネルギーをブーストに回したり、近距離戦闘時のサーベルの突き出しによる不意討ち、ヨルムンガルドとのビームサーベル四刀流にも応用出来る『エクセントブースター』の製作。

 

慶は最初、ビームサーベルを『ガンダムアストレイレッドフレーム』の得物たる日本刀『ガーベラストレート』のような納刀タイプにするか、νガンダムやAGE-1 ノーマルの引き出しタイプにするかで悩んだが、相手との距離やエクセントブースターの特徴を踏まえ、引き出しタイプとして扱うことに決めた。

 

更にνガンダムの左腕に有るサーベルホルダーのギミックを参考に、サイドブースターにビームサーベルを納める空間を切り出し、一部がスライドするように慎重に改造と加工を行う。そうして出来たブースターを猫の手に挟み、マスキングテープを貼って塗装に向けた準備を終える。

 

そして最後にして、後に慶がフルリビルドを製作する中で最も難しく、気を遣う行程だったと仲間に語ったのが『トリモチミサイル』。

AGE-2 ダブルバレットのカーフミサイルポッドに、加工したプラ棒を差し込み、其の中に接着剤を挿入するという狂気に等しい製作は、彼の頭を悩ませた。

 

失敗する可能性も有るが、何事も試してみなくては実感も掴めない。練習として慶は、使用済みランナーの一部をニッパーで切り出し、紙鑢で綺麗に整え、ピンバイスで穴を開けて、其の中に接着剤を容れる。

 

10回程試したが、成功したのは僅か2本のみと、一番大変な行程だと確信するには十分であり。焦って幸を逃してはいけないと、腕部複合武装ヨルムンガルドとエクセントブースターの完成で、作業を切り上げたのであった。

 

 

********************

 

 

「慶~。今、ガンプラの製作ばどんぐらい進歩じだが?」

 

翌日の大学屋上で3人前はあろう大きさの握り飯の一部を大口で頬張り、ゴクンと飲み込んだ順太郎が、ベンチに座ってグリーンカレーライスを食べる慶に問い掛けた。

 

「それなりに順調かな。……ただ現状、トリモチミサイルの製作に行き当たてる。プラ棒に接着剤を容れるのが、結構気を遣うし大変で、其れをカーフミサイルの所に差し込む事になると……」

「あ~…慶ば手先器用だけんど、やっばり其れが一番難儀してんべね」

「まぁね……。取り敢えず、トリモチミサイルは練習しながら製作を最後に回して、他のパーツの下地塗装とかを進めようと思う」

 

そんな話をしながら、順太郎は握り飯を食べ終えて、スマフォに撮ったある画面を慶に見せる。

 

「慶、GBNにはこんなイベントも有るんだぁよ」

「なになに………『ウマロボフウウンダービー』?何だこれ?」

「どやら、Gガンの風雲再起をもぢいだガンプラの競馬らしいべ。自分好みにカズダマイズじたり、GBNの報酬なんがにも、風雲再起専用のコスチュームアイテムが有るらじいべさ」

 

「へぇ~」と言いながら、ウマロボフウウンダービーの事を頭の片隅に置いておく事にする。まだまだGBNには、自分が知らないミッションやイベントがあり、本当に広大でやれる事が多々あるのだなと思い。

 

そしてそんなミッションやイベントにチャレンジしたいと、慶は心に決めたのである……。

 

 

*********************

 

 

其の翌日の深夜、ガンプラの箱でのバイトを終えて、寮に帰還した慶の自室の玄関口に、Gmazon宛からの荷物が置かれていた。

 

部屋に入って包装を外すと、中には『AGE-1 レイザー改造キット』の横長い箱が入っており、中身を確認すると白と青のランナーが1つずつ封入されている。

 

「フルグランサ、買っておいて良かった…」

 

AGE-1 レイザーを再現する為には、AGE-1 ノーマルのキットが必要になる。其の問題は以前に購入したフルグランサによって解決していた。

 

作中、ガンダム捕獲作戦によって危機に瀕したAGE-3 オービタルを救援に向かい、ギラーガとザムドラーグの攻撃で大破したフラットを、マッドーナ工房にて修復・大規模改修を施した存在が『AGE-1 グランサ』であり、装甲を外すことで元のAGE-1 フラット状態にも移行出来る点も大きい。

 

そして素体やポリキャップ等は、AGE-1 ノーマルと共通なので、レイザーを作る際にうってつけだった。

 

「必ず完成させるんだ…!」

 

ランナーの中でも、一際大きなレイザーブレイドのパーツを、ニッパーで2度切りを行い、切り口を紙鑢で綺麗に整える。既に下地塗装を終えたパーツの表面を見つつ、凹凸が有れば800から1000、1000から1200と段階を上げた紙鑢で滑らかにして、本塗装に備えて準備を終えた。

 

自分が考えたAGE-1 フルリビルドは、今の己が出来る精一杯を注ぎ込んだガンプラだ。ならば、全てを出し切るつもりで、1つの作品を仕上げよう。

 

決意を強く、確固たるものとしながら、彼のガンプラ製作は続く………

 

 

*********************

 

 

製作日数が1週間に迫る頃…慶のガンプラである『AGE-1 フルリビルド』は全体塗装を終えて、残すところ最難関の武装たる『トリモチミサイル』を製作し、AGE-3 オービタルの脚部に取り付けられ、繰り抜かれたカーフミサイルポッドへと挿入するのみとなった。

 

プラ棒をニッパーで均等に切り、ピンバイスで穴を開け、接着剤を容れる……此れを何度も繰り返し、トリモチミサイル製作の練習をする。

 

しかし━━━ピンバイスの軸がブレて思うように穴が空かなかったり、余計な力が入ってそのまま貫通してしまったり、容れた接着剤が僅かな隙間から漏れ出したりと、失敗の連続だった。

プラ棒を切り出し、穴を開け、接着剤を流し入れる…此の淡々と繰り返される作業が、慶の脳を錆び付かせて、ゆっくりと眠気を促すように、心の奥底から滲み寄る。

 

だが、慶はやめない。そして諦めない。幾度の失敗だろうと『こなくそ!』と叫び、プラ棒を切っては穴を穿ち接着剤を容れる。

 

50…60…70…と、回数を積み重ねる度に疲労は蓄積していく。しかし其れを引き換えに、自身の集中力が鋭利に、研ぎ澄まされていくようだった。

80を越えた辺りから、プラ棒の穴開けが徐々に成功し、ミサイルの形に成り始めていく。そして、日付が変わって深夜3時に差し掛かった頃……

 

「で……き、た…………!」

 

118回の挑戦の末、遂に最難関の武装であるトリモチミサイルが完成。達成感による眠気が津波となって襲い掛かるが、何とか抗ってカーフミサイルポッドに慎重に挿入。

 

慶の目の前に、今の自分に出来る全てを注ぎ込んだガンプラ━━━『ガンダムAGE-1 フルリビルド』が置かれていた。

 

トライエイジマグナムのパーツをリペイントし、AGE-1の配色に変えた胴体。背中にはジョイントアームに接続された、トライホルダーフレーム。

 

レイザーの肩アーマーに腕部には、『腕部複合武装ヨルムンガルド』が煌めき、腰部はレイザーのフロントの鋭利な青い装甲、リアアーマーに備えたスタビライザーと実体剣の役目を兼任する『レイザーブレイド・スタートダッシュ』。

 

両サイドにはビームサーベルを収め、其のエネルギーを攻撃や迎撃、推進力にも活用可能な『エクセントブースター』。そして、AGE-3 オービタルの脚部をベースに、取り付けられたカーフミサイルポッドとトリモチミサイル、そして両手に握られた『デュアルドッズキャノン』が備わり、彼のガンプラは形と成った。

 

「これから…よろ……し………━━━━━zzz……」

 

自分のガンプラに語り掛けたのと同時に、慶は睡魔に飲まれ眠りに落ちる。其の彼を何処か優し気に、フルリビルドの瞳は見守っているようだった……

 

 




其れは今の自分に出来る、最大限の強化


ガンプラ紹介

ガンダムAGE-1 フルリビルド:ガンダムAGE-1 ノーマルをベースとし、星那 明人が描いた設計図を得て、主にAGEと鉄血系列機体の武装や機能を取り込み、大改修した事で生まれ変わった朱鳥 慶のオリジナルガンプラ。

変更点としては

①:肩と腰部の装甲をAGE-1 レイザーにし、サイドスカートにはAGE-1 ノーマルのビームサーベルを収められるように、バルバトス 第6形態のサイドブースターを改造した『エクセントブースター』。レイザーのリアアーマーにはスタビライザーの代わりにも成れる大型実体剣『レイザーブレイド・スタートダッシュ』

②:腕部にフルグランサのシールドライフルと、シュバルベグレイズのワイヤークロー、シールドライフルのエネルギー消費による放電ギミックを組み込んだ、腕部複合武装『ヨルムンガルド』

③:脚部はAGE-3 オービタルをベースとし、AGE-2 ダブルバレットのミサイルポッド『カーフミサイル』を片足2門ずつの計4門を前面に、プラ棒を加工・内部に接着剤が入った『トリモチミサイル』

④:胸部はAGE-1 ノーマルと同じ色にリペイントしたトライエイジマグナム、背面にはトライホルダーフレームとジョイントアーム

⑤:両手にはAGE-2 ダブルバレットのツインドッズキャノンを改修し、ウイングガンダムゼロのように合体による大出力の砲撃が可能になる『デュアルドッズキャノン』を装備

以上5点となっている。

本機はあらゆる距離・あらゆる敵に対して、十分に立ち回りつつ戦闘が出来るよう意識したカスタマイズが施されている。

其れは慶の、ダイバーとしての確かな成長と、ビルダーとしての新たな試みが込められたガンプラとなった。
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