メインヒロインの顔見せ&フルリビルドとガンオージャの初陣戦たる、第9話であります
「ふぁあ~……」
「慶、随分眠そうだげんど大丈夫だが?」
「おいおい、慶っちゃーん♪おねむかーい?」
自身のガンプラを大幅に強化・改修を終えた其の日、ガンプラの箱でバイトをしていた慶は、客に見えない場所で大きな欠伸をする事が多く、其れを心配してか順太郎と健司が、彼に声を掛ける。
「カンタ…健司さん……。実は今日、やっと改修してたガンプラが完成しまして……。仕事終わりに見せますね………」
眠気眼を擦り、小さく挙手しながら青年は答える。無理もない。トリモチミサイルの製作で、夜を更かした分のツケがこうして回ってきただけの話だ。
「改修してたガンプラ…でこどは、AGE-1だべか!遂に出来だんだべね!」
「明人っちゃんが前に慶っちゃんに描いたって言った、完成イメージのイラストのアレねぇ。どんな風になったのか、楽しみだ♪」
「ははは…期待してて下さいな」
欠伸しそうになりながら、店内の見回りへと向かう慶。季節は梅雨に突入し、店の外ではシトシトと雨が降っている………
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「ほぉ~♪これが慶っちゃんの…」
「改修じだガンプラだべか!」
バイト終わりの午後9時、スマフォのスクリーンショットに撮されたAGE-1 フルリビルドの姿に、順太郎と健司は目を輝かせていた。
明人が描いたイラストを元にしながらも、アンテナの安全ピンを切り飛ばして鋭利さを出したり、フロントアーマーの中継部分を分けて稼働出来るようにしたりと、自分に出来る全てを出し尽くした事が伺える。
「AGE-1 フルリビルド…今の自分の最大限の強化を施したガンプラです。今度の休みの日に、この子の初陣戦をしようかなって」
「初陣かぁ~…実ばオラのハイモックも、ごの前漸ぐ改修が終わっだんだよ。慶、今度GBNで遊ぼうべ?」
小さく頷いた慶は「あ、健司さんも良かったら一緒に遊びますか?」と、彼を誘う。
「あ~…一緒に行きたいのは山々なんだけど、其の日はちょーっと離せない用事がねぇ~…。ホントにメンゴ!」
チャラさを出した合掌で謝る健司。用事が有るならば、そちらを優先した方が先ず良いので、慶達は「分かりました」と彼に述べた。
「もしスクショ撮れたらさ、俺にも見せてな~!んじゃあねー!バイビー!」
ちょっとだけハイテンションな口調で、此方に手を振って傘を指し、雨の中を帰って行った健司。其の背中を見送った後、慶と順太郎も己の居場所に帰っていくのだった。
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2日後、ガンダムベース東京……。
平日の午前中、更には朝から雨天により、人足は何時もよりは少ないものの、30~40代を初めとした男性客が多く居り、皆ガンプラを作ったり、GBNをプレイするため準備をしているようである。
其の店内の一角で、慶と順太郎は各々が持ち寄ったガンプラを出し合い、出来栄えを見合っていた。慶のAGE-1 フルリビルドの隣には、順太郎のずんぐりした体格のガンプラ……ハイモックが立っている。
其のハイモックは、両肩の円盤型装甲と腰部のサイドアーマー、そして脚部のカバーを外し、両肩とバックパックにはバトルアームズのジョイントアームに繋がれ、GBNの報酬に存在するパーツの1つ『バインダーガン』のユニットを改造。
ファング・ドラグーン・シールドビットの機能を盛り込んだ『
両腰部のジョイント部には、バトルアームズのガンソードが2本、脚部にハイモックと同じ色に塗装した、ブースターが片側2基の計4基、両手にバインダーガンを武装し、機動力に比重を置いたカスタマイズを施している。
「カンタのハイモック、新しくユニットを追加したんだね。配置や個数を見るに、オールレンジ兵装を積んでる感じ?」
「んだ。GBNの報酬にある『バインダーガン』ど、市販の『バトルアームズ』を使っで、ハイモックをパワーアッブざせだだ。其の名も『ハイモック・ガンオージャ』だべよ!」
慶のフルリビルドが『十全に立ち回るオールラウンダータイプ』であるならば、順太郎のガンオージャは『機動力と遠隔武装のスピードタイプ』のガンプラと見て取れる。ファンネルを初めとした遠隔武装には、繊細な操作と宙空に置ける空間認識が必要になるが、順太郎は自分の新しい可能性を広げるべく、己のガンプラを進化させたのだ。
「よし、行こうか。GBNに」
「んだべ」
受付で手続きを済ませ、2人は機材にダイバーギアをセット。進化した自分達のガンプラをそっと乗せて、ゴーグルを掛ける。
『Welcome to GBN!』
機械の音声が響いた時、彼等の意識は電脳世界へ移動し、世界の住人たるダイバーへとなるのだ………
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セントラル・ディメンション、メインロビーに顕現したケイとカンタは早速、チュートリアルバトルミッションを受注べく、総合受付へと歩き出した。
と━━━━
「へいへい、お嬢ちゃん。俺達と遊ばない?」
「今から楽しいイベントが有るんだ、一緒にどーう?」
「ちょ…ナンパなら御断りって、ウチは言ったんだけど!」
言い争いが聞こえ、ケイとカンタが其の方向に視線を移すと、3人程の男性ダイバーに囲まれてジリジリと壁際まで追い込まれている、セミロングの黒髪と黒いコートの下に、赤の刺繍が入ったセーラー服と紅のマフラーを靡かせる、130cmの背丈の少女が居た。
「カンタ。あの子を助けるから、力を貸して」
「ん?…OK、任ぜるだ」
困っている人を放ってはおけない彼等は、進行方向を変えて軟派している男性達の後ろに付き、コンソール画面のカメラ機能を起動し、其の映像を録画しつつ、彼等の肩を叩く。
「アンタ達、其の娘が嫌がってるじゃないか」
「あ"?いきなりな…に、を………」
軟派していたダイバー達は、ケイの後ろに立ちながら、物凄い形相のカンタを見て、其の身がビクリと跳ねた。200cmに迫る背丈とガタイの良い筋骨隆々のヤンキー番長の彼が、此方を威圧しているのだから無理もない。
「今の状況は此のカメラに押さえたし、証言者も居る。今此所で『マギーさん』に連絡入れても良いんだよ?」
コンソールを動かすフリをしつつ、指先で押そうとする仕草を取った所で、「さ、サーせんでしたぁ!?」と一目散に逃げ出したダイバー達。彼等の背中を見て、ケイとカンタは大事になる前に、相手方が退いてくれた事にホッと胸を撫で下ろした。
「ありがとー、お兄さん達♪あのダイバー達ってば、ウチにいっつもナンパしに来てて、本当にしつこくて困ってたの」
少女が声を掛けてきて、青年達は振り返る。彼女の胸は小柄な体格に似合わぬ、大きな丘陵が2つ在り。目算してもFかGは確実な大きさと、そして綺麗な形をしていた。
カンタが其の胸に視線が牽かれる中、ケイは小柄な彼女の視線に合わせるように屈み、話しをする。
「君が困っているような感じだったから助けた。大丈夫だった?」
「うん。お兄さん、優しいんだね。ウチの名前は『フォルテ』、2人の名前は?」
「俺はケイ、そしてフレンドのカンタ、よろしく」
「よろしくだよ、フォルテぢゃん」
自己紹介とフレンド登録を結んだ後、フォルテは時計を見て言った。
「あ、ウチそろそろ師匠との『稽古』があるから行くね。また何処か出会ったら、ウチにお礼させて?『ケイさん』♪」
フォルテはニヒヒと白く綺麗な歯を出して笑い、手を振って人混みの中へと消えていった。しかしケイは此の時の彼女との出逢いから、まさかあのような事になるとは思いもせず。
そして2人の関係もまた、GBNを騒がせていくのだが、其れはまだ先の話である………
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GBN内、チュートリアル・ディメンション……
『ケイ、いよいよだべよ…!』
「うん。ちょっと、緊張してきたな……」
セントラル・ディメンションよりカタパルトで射出され、愛機と共に世界を越えて此の場所へとやって来た。3度目のログインにして、漸くチュートリアルバトルが出来るのは嬉しい。しかし其の反面、ダメージを受けないとはいえど、此れから本当の戦いを経験するとなれば、少し怖いとも思ってしまう。
《…楽しまなくちゃ、だよね》
現実に近い感覚等は有れど、此れは『
そして、チュートリアルバトルは『自機がどんなに被弾しても機体にダメージが入らない』のが特徴で、戦いの基本となる『敵を見る』・『回避行動』・『ダメージの与え方』の3つを一挙に経験可能だ。
『ケイ、そろそろだよ!』
カンタの声で改めて前を向くと、ドーム状の境界線が目前まで迫っており、自分達の機体が其の中に侵入した瞬間、遠方でチュートリアル用の相手機体が4機、形を成して顕現する。
頭巾を被ったような独特な形状の頭部と青いモノアイに、胸部と肩を覆う水色の装甲、リアアーマーの巨大なバーニアと7割が紫のカラーリング。
GBNにおいて、チュートリアルバトルやクリエイトミッションの相手として用いられ、頭部のセンサーカメラの色によって、難易度が変わる機体。其れが現在、ケイとカンタが接敵した『リーオーNPD』なのである。
「あれが敵か…リーオーベースみたいだね」
『んだ。ダメージ受けても大丈夫だがら、気負い過ぎずに行くべ』
モニターで敵編隊を見ると、シールドとフライトユニット、105mmライフル装備が2機で前衛を務め、後衛の2機は両肩をドーバーガンで武装しつつ、両手にショート型ビームライフルを握っている。攻防のバランスも良い事から足を止めたなら、確実にやられる可能性が非常に高い。
『オラがドーバーガン持ちを叩くがら、ケイは前衛を頼めるが?』
「任せてカンタ、それじゃあ行くよ!」
『応ッ!』
合体状態のデュアルドッズキャノンを構え、脚部のスラスターを全開。踏ん張りを効かせてトリガーを引き、双銃口より二重の回転による螺旋の奔流が放たれる。
リーオー達は其の一撃を回避し、前衛の2機がシールドを構えながら此方に接近、後衛が片方のドーバーガンでフルリビルドとガンオージャに狙いを定めた。
『やらせんべ!FDCバインダー、いげぇ!』
ガンオージャの両肩のユニットが分離し、6基の遠隔武装が戦場に舞い踊る。空中を高速で飛び回りながら、急停止や回転による別方向への転換を交え、リーオー達を翻弄。
其の隙にケイのフルリビルドは、合体状態だったデュアルドッズキャノンを分離し、両手持ちにスイッチ。ベースとなった、オービタルの脚部を伸ばした高速巡航形態で突撃する。
「離れてるなら、接近してぇ!」
左より1発、続けて右から1発。
「これでっ!」
ダメ押しとばかりに、双方より同時発射。前衛を務める1体のリーオーは、左のデュアルドッズキャノンの一閃を躱わしたものの、右から飛来した光擊に右腕を穿たれ、其の直後に胸部を双つの光が直撃。
装甲を貫通する力に秀でたドッズライフル…其の次世代型にして、バレル部分に筋彫りを行い、ビームの回転力と破壊力を更に高めたものが、此のデュアルドッズキャノン。
被弾箇所からリーオーの身体にスパークが走り、数瞬の後に爆発四散。爆煙のエフェクトと共に電子の粒へと還っていった。
「よしっ!先ず1つ……って、わだ!!?」
105mmライフルの連射とドーバーガンの一発が、フルリビルドの腕部複合武装ヨルムンガルドに直撃し、火花が迸る。どうやら前衛を切り崩す為に、前に出過ぎた所を狙われたようだ。
『ケイ!』
カンタの声と共に、6基のFDCバインダーがリーオーNPDを狙うも、彼自身がファンネル類の操作に不慣れなせいか、四方八方にユニットが飛んで行ってしまい、牽制にこそなっているものの、一向に当たる気配が無い。
其れ所か━━━━━━━
「カンタ、大丈……おわ!?バインダーあぶね!!」
『ケイごめんだよ!このっ!ちゃんどオラの言うごどぎげぇ!』
レバーをガシガシと押し引きするも、従う気配がないバインダー達に、カンタの額には青筋が幾重にも出来上がる。そして遂には……━━━━
『おどれ、バインダー!!すごじ痛い目みだいだが、ゴラァ!』
堪忍袋の尾が切れ、怒り心頭とヤケクソばりに、両手のバインダーガンを乱射し始めた。
「わわっ!カンタ、落ち着けって…おおお?!」
劇場版機動戦士ガンダムOOにて、ライル・ディランディことロックオン・ストラトスが駆った『ガンダムサバーニャ』の乱れ撃ちを彷彿とさせる其れが、FDCバインダーに反射し跳弾となる。
ユニットと弾丸の三次元攻撃が、ケイと残り3機のリーオーNPDに襲い掛かり、リーオー達の武器と装甲は破壊され、爆発四散。ケイは暴れ回る弾丸達に、蜂の巣になることを覚悟しながら、死ぬ気で逃げ回り続けて。
軈てカンタの怒りが鎮まり、辺りを見回すとぐったりした様子のフルリビルドと、電子の粒へと返還されていくリーオーNPD3機の姿。
『ケ、ケイぃぃぃぃぃ!!!バインダーの操作にでごずっで、迷惑掛けぢまっだ!ほんどにゴメンだ!すまないべよぉぉぉぉぉぉ!!!』
FDCバインダーがハイモックの所定位置に戻り、ガキン!と音を立てて合致するや、カンタは空中で器用に土下座を敢行する。
「だ、大丈夫………。結果的に俺は撃墜されてないから、全く問題無しだよ。何かを初めてやるのって、緊張したり失敗したりするの、有ると思うから。だから、カンタは悪くない」
何事も『初めて』はある。日常生活で日本人が当たり前のように使っている、箸の扱い方や自転車の乗り方等、誰しも最初から上手い訳じゃない。何度も失敗して、上手く出来ずに騒いだり、時には無理だと投げ出してしまったり。
けれども人間は━━否、人間とは総じて失敗から学ぶ生き物であり、1度の過ちから己を知り、他者の指摘を受けて、其れ等を吸収して自らの力に出来る。
『オラもっど、バインダーの操作が上手くなるように頑張るだ…!』
「俺も頑張るよ、カンタ」
フルリビルドとガンオージャが、拳を作ってゴツンとぶつけ合った。其の直後、2人の機体に『救難信号』が届く。
「エマージェンシー…?場所は『砂漠』、みたいだけど…」
『此の座標…オラだづの居るチュートリアル・ディメンションの、丁度隣のディメンションだべ』
DDツール持ちが仕掛けた罠の可能性も拭えない。しかし、そうでなかったなら助けを拒んだ事になってしまう。
「カンタ、助けに行こう」
「…だな。どんな攻撃でも当だらなげれば、意味ば無いべ」
ケイとカンタは覚悟を決め、救難信号が発せられている砂漠ディメンションへと急行するのだった……。
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砂漠ディメンションとは、文字通り渇いた海が一面に広がる、熱砂の世界である。風に乗った砂が遠くで竜巻を作り、何とも仰々しい雰囲気が漂う。
マップを確認しても辺りにMSを隠せる岩場は無く、万が一攻めてくるとすれば、砂中潜航可能な『ウロッゾ』や砂漠迷彩を施した『バクゥ』であり、フィールド適性は彼方側に部がある。
ある程度の高度を維持しながら、2人が乗る機体は救難信号が発せられた場所へ慎重に移動。フルリビルドのツインアイ内蔵カメラが捉えたのは、砂原に倒れ伏したまま動かない、不思議な紋様が刺繍されたポンチョを身に付ける、根本がオレンジで髪先に行く程に赤へ変色した髪色の、旅人風なダイバールックをしている青年だった。
「カンタ、降りる前にちょっと待機してて」
日射がこれ以上、青年に注がれないように機体を傘としながら、腕部複合武装ヨルムンガルドのワイヤークローを砂原に投射し突き刺した後、ケイは目を閉じて、己の全神経を集中させる。
彼には『ガンプラの声を聞ける』という、物心付いた頃から聴こえるようになった、他者には無い『異能』が有る。其の力はガンプラの…作り手の込められた想いを、声無き声として放つ其れを聞き、感じ取り、そして理解する。
彼は此れを使い、自分達以外に機体が居ないかどうかを確認する、謂わば『ソナー』の役目に用いる事にしたのだ。
(…………………)
砂中に僅かな声が聞こえた瞬間にも、速攻で青年を助け出し、此のディメンションから一刻も早く離脱するつもりで身構える。
しかし、ワイヤークローには微細な振動は訪れず、安全であることが分かった。
「カンタ、大丈夫だった。急いで助ける!」
『分かったただ!オラは辺りを見とぐがら、頼んだべ!』
フルリビルドを降下させ、急いで青年の元に駆け寄ったケイ。荒い呼吸をしており、額に手を当てると高熱を感じ、彼は熱中症になった可能性が高い。
「カンタ!この子、熱中症になってる!何か飲み物無いか!」
『今そっぢに投げるだ!』
カンタがコンソールを操作して、アイテムボックスからペットボトル飲料水を取り出すや、コックピットを自動操縦に一時切り替えて隔壁を手動で開き、其れをケイに向けて投げた。
「ととと!ありがとう、カンタ!」
礼を述べつつ、ケイは急いで青年に水を飲ませる。少しずつ飲ませてやると、苦しく荒い呼吸は徐々に収まっていき、体温も下がり始めた。取り敢えず、一安心と診て良いだろう。
フルリビルドを日陰として、青年が目覚めるのを待つケイ。周辺を確認し終え、遅れる形でガンオージャを着陸させたカンタが合流し、彼を見守った。
そして数十分後……━━━━━
「うっ………此所は……」
「あ、カンタ。この子、目が覚めたみたい」
「本当だぁ、良かっただよ~」
辺りを見回す青年に、ケイとカンタが顔を覗かせる。大事なく目覚めた事に安心して、砂漠に座り込む2人に、彼は問う。
「アンタ達が、オレを……助けたのか?」
「そうだね。砂漠で倒れていたのを、俺達が救助した」
「だども、どじで砂漠のド真ん中で倒れてだんだべよ?」
カンタの問いに青年は、首を傾げながら考えた後に「わからない」と答えた。
「何処から来たのかも、自分が何者なのかも、オレには…わからない。だからこうして、此の世界を宛もなく歩いていた」
何もないと青年は言う。ケイはまるで、自分を鏡写しに見ているかのような感覚を覚える。何もなかった頃の自分に、此の青年が重なって見えたからだ。
ふと、風に揺れた彼の髪に視線が行く。揺れた髪がまるで、煌々と燃え上がる暖かな『炎』のように揺らめき、綺麗だった。そしてケイは無意識に「ヒノワ」という言葉を口にする。
「ヒノワ…?」
彼が此方を見ている。ケイはハッとなりながら、コホンと咳き込み言う。
「君の名前。風に靡いた時の赤髪が、まるで炎のように綺麗に揺れていたのを見て、頭の中に浮かんだ。…もし気に入らなかったなら、気にしなくても良い……あれ?」
「ヒノワ…!ヒノワ…!オレの、名前…!ヒノワ!オレの名前!ありがとう、大事にする!」
目をシイタケのように輝かせ、ケイから貰ったヒノワという名前を、何度も何度も繰り返して、記憶に刻み付けている。どうやら、相当気に入った様子であり、見ている此方も嬉しくなってくる。
「自己紹介がまだだったね。俺はケイ、此方はカンタ」
「よろしくだぁよ、ヒノワ」
「ケイ、と、カンタ。其れが、2人の…名前」
指差しでケイとカンタを確認し、名前を何度も復唱して覚えている。と、ヒノワが声を出した。
「ケイ!カンタ!オレ、此の場所に来る途中で、こんな噂を聞いた!」
「噂…?」
「って、何べ?」
青年達の問いに一拍置き、彼はこう言った。
「此の世界、何処かの場所に……『千里より先から獲物を撃ち抜く狙撃手がいる』……らしい!」
━━━━━━と。
後にフォースメンバーとなる者達
人物紹介
フォルテ(CV:森山由梨佳):ケイとカンタがセントラル・ディメンションにおいて、男性ダイバー達に軟派されていた所を助けた、少女ダイバー。一人称は『ウチ』。
小さな身体ながらも胸が大きい、所謂『ロリ巨乳』のジャンルに当て嵌まる少女で、黒と赤を中心としたファッションを好む。
ケイ達に助けられた際は、誠実と淑やかな姿勢で礼を述べたが、本来の性格は挑んできた相手をボコボコにして愛機で踏み、極め付けに『ざーこざーこ♪』と煽る、メスガキムーブを行う事で有名なダイバー。
其のギャップに性癖を歪まされたダイバー達により、彼女のファンクラブ(非公式)が設立される程には人気で、推定3.8万人のファンが居るらしい。
ヒノワ(CV:古田一記):ケイとカンタが、チュートリアルバトルを終えた直後、救難信号を受けてやって来た砂漠ディメンションにて倒れていた、ポンチョを着る旅人風のダイバールックをした、炎のような赤髪を持つ中性的な顔立ちをした青年。一人称は『オレ』。
記憶が無く、自分が何者なのかも分からないまま、宛もなくディメンションを彷徨い続けて、ケイ達に救助された。
名前が無くては不便だと、ケイにより炎の様な赤髪に準え『ヒノワ』という名前を貰い、其れを気に入る。そして此所に来る途中で『此の世界には、千里より先から獲物を撃ち抜く狙撃手がいる』という噂を聞いた事を教えた。