バカと18禁と男装女子っ!   作:てあ

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プロローグ 

 

 ギャルゲーというものを知っているかい?

 

 ギャルゲーという言葉を聞いて、眉をしかめる人もいるかもしれない。確かに、ギャルゲーは世間一般的に嫌悪されるものだ。だけど、それは皆がギャルゲーをよく知らないからなんだ。人は未知な存在を怖がるからね。

 

 そもそもギャルゲーとはエロゲ―とはまったくの別物なのだ。エロゲーのように主人公が開始十秒でHなシーンに入るわけでもないし、生徒会室でHなシーンになるわけでもない。エロゲ―とギャルゲーの区別をちゃんとしてほしい。

 

 買いに行くのが恥ずかしいという人もいるだろう。

 まあ、僕もギャルゲー見習い(数人の女しか落としたことがない人)の頃は通販にお世話になったものさ。だがしかし、ギャルゲー聖騎士(百人以上の女を落としてきた人)となった今の僕にとっては、直接買うことなど余裕である。たとえ表紙が裸の女の子でも、定員が女の人であっても、十八禁指定のものであっても、僕は平然とした顔で購入する。ギャルゲーで鍛えられた僕の精神力は尋常じゃないぞ。

 

 

 ちなみに、僕たち同士(ギャルゲーマスター)の中ではギャルゲ―のことを恋愛頭脳戦だと呼んでいる。

 ギャルゲーでは主人公の選択によってハーレムエンドや便所エンド、不倫エンドなど幅広い結末を迎えることになる。まさに無限の可能性。一回選択を間違えただけで、いつのまにか便所でうんこ漏らしながら死ぬんだぞ?これを恋愛頭脳戦と呼ばずにしてなんと呼ぶのだ。

 

 

 

 さて、できることならもっと詳しくギャルゲーについて語りたかったんだが、それはまたの機会にしよう。今までのことを聞いて少しはギャルゲーに興味が出てきただろう?

 

 だったら、今すぐにでも僕を助けにきてくれ、頼むから。なぜなら――――――

 

 

 

 

 

「それで、これも捨てていいわよね?」

 

 

「やめてくれ優子ぉぉぉぉぉ!それは僕の命よりも大事なものなんだぁぁぁぁ!」

 

 

 僕の愛した恋愛頭脳戦ゲームが、忌々しい悪魔の手によって墓場に向かいそうになっているからである。

 

「そう、だったら貴方を捨ててもいいのかしら?」

 

「仮にも幼馴染である僕を捨てるなんて、冗談でもキツイよ」

 

「……………」

 

「止まるんだ優子。右手に持っている芝刈り機を今すぐ床に下ろすんだ」

 

「………………ちっ」

 

 舌打ちをしながら芝刈り機を下す優子。その芝刈り機はどこから出してきたのかも気になるが、あえて聞くことはしない。彼女は僕の幼馴染の白いピン止めがチャームポイントの女の子で、昔は純真無垢だったんだけど今では人殺しゴリラに成り果ててしまった。誰の影響だろう。

 

「ええそうね。貴方は草よりも価値のない存在だもの。芝刈り機を使うのが勿体ないわ」

 

「サラっと僕のことを貶したよね。僕に人権はないのかい?」

 

「草権の間違いじゃないの?」

 

「せめて生き物にしてほしかった!」

 

 優子が、優しく微笑む。

 

「それじゃあ貴方の来世はミジンコに決定ね」

 

「微生物か……悪くないね」

 

 ミジンコって貞操観念あるかな。もしないんだったら僕がミジンコ界の母になってみせよう。

 

「……この人形もいらないわね」

 

「ああああああ!照子ちゃん百分の一バージョンがぁぁぁぁ!」

 

 汚いものでも触るようにトングでゴミ袋に入れる優子。確かにその女の子はゲロインとして名を馳せたけどその扱いはひど過ぎる!

 

 

 ドアを二回ノックする音が聞こえ、ドアが開く。

 

 

「痴話喧嘩は良いんじゃが……このままじゃと遅刻になるぞい?」

 

「「誰が夫婦だ!」」」

 

「夫婦とは言ってないんじゃが………」

 

 呆れたような顔をするのは僕の幼馴染である秀吉。彼も僕の幼馴染で壁のような胸がチャームポイントな男の子だ。昔からの純真無垢な性格を受け継いでいて僕の癒し的存在である。最近は一緒にお風呂に入ってくれないのが少し寂しい。

 

「だいたい、コイツは()なのよ!私が同性を好きになるわけがないでしょ!」

 

「え、それじゃあ優子が大好きなBL本はどうなの?男同士だよ?」

 

「二次元だから良いのよ」

 

「二次元ってすごいなぁ」

 

 あれ?BL本も二次元ならばギャルゲーも二次元に分類されるのでは?

 

「ギャルゲーも二次元に入るのかな」

 

「行くわよ秀吉」

 

「あれぇ!?無視は良くないよ!?」

 

「うむ。了解じゃ姉上」

 

「秀吉まで!?」

 

 僕の声が聞こえないのか優子と秀吉は部屋から出ていく。はっ、もしかしてこれって反抗期ってやつなのかな。これで近所のおばちゃんとの会話のネタが増えたね。「ウチの娘と息子がねぇ、とうとう反抗期みたいなのよぉ」的なことを喋ってみたい。

 

「先に行ってるわよ日和(ひより)

 

「初日から遅刻は恥ずかしいからのう」

 

 

 玄関の方から二人の声が聞こえる。ちょっと待って!僕まだネグリジェのままなんだけど!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、追いついた………」

 

 久しぶりに全力疾走をして、息も絶え絶えになったがなんとか二人に追いつけた。まったく、少し待ってあげようという優しい考えはないのだろうか。

 

「あら、遅かっ―――――きゃああああああああ!」

 

「え、何どうしたの」

 

「どうしたのじゃ姉上。三日間洗っていなかった弁当を見つけたときの顔みたいになっておるぞ」

 

「ひ、日和。何よその服!」

 

 優子が僕を指さしながら二、三歩下がる。何って……ふむ、照子ちゃんゲロ花火バージョンシャツに便所フィニッシュ主人公拡大バージョンズボンだな。

 

「僕の性服だけど」

 

「今すぐその汚物を脱ぎなさい。そして私の半径十メートル以内に入らないで」

 

「ひどっ。僕を病原菌みたいに扱わないでよ」

 

「もしくは……その服を引き千切って犬の餌にしてあげるわ」

 

「ちょっと待って優子!それは下着まで攻撃範囲に入るのかな?」

 

 正直、この服装に対して思い入れはない。福袋でたまたま入ってた服だからね。でも、大事なのは下着も範囲に入るかだ。場合によっては、僕が公然わいせつ罪で捕まりかねない。

 

「安心しなさい。貴方の身体も攻撃範囲に入ってるわよ」

 

「助けて秀吉ぃぃぃぃ!優子に殺されるぅぅぅぅ!」

 

「朝から元気じゃのう……」

 

 呆れるように溜息を吐く秀吉。朝から元気とかそういうことじゃなくて、朝から殺されるんだよ!

 

「全国ネットで僕の名前が流れるときがついに来たか……」

 

「それは殺人事件の被害者としてかの?」

 

「あら、面白そうじゃない。変態として皆から認知されるのね」

 

 な、何故だ。二人とも僕の心配をしていないんだが。

 

「ほら、私の体操着貸すから着替えなさい」

 

「あ、サンキュー」

 

 優子から体操着を渡される。なるほど、ここで着替えろと。優子も結構無茶言うよな。

 

「待ちなさい日和!ここで着替えろとは言っていないわよ!?」

 

「え、いいじゃん。どうせ僕の裸なんて見飽きてるでしょ?」

 

「ここには男子の秀吉がいるでしょうが!それと何でパンツはいてないのよ!」

 

「………………」

 

「あれ?どしたの秀吉」

 

「は、早く服を着るのじゃ!」

 

「え?サラシ巻いてるから大丈夫だよ」

 

「「そういう問題じゃない(のじゃ)!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数分後。服を着た僕は二人と一緒に学校への道を歩いていた。

 なんというか秀吉の目線が痛い。僕の方をチラチラ見てるけど……なんか顔についてるかな?

 

「どしたの秀吉」

 

「な、なんでもないのじゃ!」

 

 顔を逸らす秀吉。え、マジで何なの?

 

「アンタも鈍いわね……」

 

「何か言った優子?」

 

「何でもないわよ……」

 

 諦めたような溜息を吐く優子。悩みごとでもあるのかな。

 

「む、あれは明久じゃな」

 

 何かを誤魔化すように秀吉が前方の方を指す。指の先を見ると、男子生徒が封筒をもって悶絶しているのが見えた。てか、明久じゃん。

 

「うわぁ……」

 

 優子はちょっと嫌そうな顔をする。なんというか、観察処分者という肩書を持つ彼のことが苦手のようだ。でも、確かに校門の前で叫ぶのは常識的におかしいと思う。

 

「やっほー明久ー」

 

 手を振って、明久のことを呼ぶ。

 

「あ、日和。おはよう」

 

 明久も、応えるように手を振り返してくる。

 

 去年一緒のクラスになったことで仲良くなったのだが、明久はとんでもないバカだ。どのぐらいバカかっていうと最近まで人間ドックのことを人間と犬の合体形態だと勘違いしていたほど。

 

「校門の前で急に叫びだすなんて、明久も非常識だね。一瞬知らない人のフリをしようかと思ったよ」

 

「ははは、その言葉。そっくりそのまま返してあげようか?」

 

「なんだと明久!」

 

「やんのか日和!」

 

 激しく睨み合う僕と明久。コイツ、僕のどこが非常識だと思っているのだろうか。

 

「なんというかお互い様ね……」

 

「似た者同士じゃな……」

 

 優子と秀吉の声が聞こえるが、今はこのバカを懲らしめてやらないと!

 

「おいお前達、痴話喧嘩は他所でやってくれ」

 

「「誰が夫婦だ!」」

 

 近くにいた西村先生……じゃなくて鉄人が呆れたような顔する。

 スーツの上からでも分かるその筋肉は、トライアスロンで鍛えたらしい。噂でだがアメリカのプロレスラーと戦って勝ったことがあるらしい。本当に何で学校にいるのかが気になる。

 

 こんなバカと夫婦だなんて、想像しただけで鳥肌が止まらない。明久も同じようで腕をしきりに擦っていた。鉄人め……なんて恐ろしいことを。嘘だと分かっていてもこれはキツイ。

 

「夫婦とは一言も言っていないのだが……それよりもこのままだと本当に遅刻になるがいいのか?」

 

「「「「あっ」」」」

 

 そ、そういえばそうだった。こんなバカに構っている時間なんてない!

 

「すみません先生。今すぐにでも行ってきます!」

 

「あ、待ちなさいよ日和!」

 

「待つのじゃ日和よ!」

 

「ちょっ僕を置いていかないでよ!」

 

 後ろから三人の声が聞こえる。はっはっは、三人仲良く遅刻扱いになればいいさ!

 

 

 

 

 

「…………あいつら、自分のクラス分かっているのか?」

 

 

 

 

 

 僕は、このとき先生に自分のクラスを聞かなかったことを死ぬほど後悔することになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだこのバカでかい教室は……」

 

 僕はこの教室の大きさに、思わず声が零れる。ガラス張りの窓に高級ホテルのような個人スペース、よく見れば個人エアコンやノートパソコンもある。ここって本当に学校かな?

 

「かなりの大きさね……」

 

「うわぁ、高級ホテルみたいだ」

 

「うむ……」

 

 後ろをついてきた三人も、驚いたようで次々と声を上げる。明久と同じ思考回路だったことが悔しいけど。というか、貧乏な明久がホテルに泊まったことがあるのにも驚きなんだが。でもやっぱりこの教室はすごいなぁ。僕のためにある教室のようだ。ギャルゲーが捗りそう。

 

「僕の教室はここに決まりだね」

 

「は?何言っているのよ日和。ここはAクラスの教室よ。貴方みたいなバカが入れるわけないじゃないの」

 

 優子が、信じられないものを見るような目で見てくる。はっはっは、さては僕のことをバカだと勘違いしているようだ。まあそう思うのも無理はない。だがしかし、前回の振り分け試験ではたくさん問題が解けたんだ。舐めてもらっては困る。

 

「僕はやるときにはやる男なのだよ」

 

「そもそも貴方は男じゃな――――――」

 

「ちょぉぉぉっと優子サン?今なんて言おうとしたのかな?」

 

「むがむが」

 

 慌てて優子の口を塞ぐ。この女、口がシャボン玉みたいに軽いな。油断は禁物だ。

 

「………さて、そろそろお別れの時間だね。三人とも」

 

「「「は?」」」

 

 今度は全員から信じられないような目で見られる。いやいや、だから僕の教室はAクラスなんだって。

 

「君達はオンボロF組にでも行ってきなよ」

 

「ねえ秀吉。このバカのことをゴミ箱に捨ててもいいかしら」

 

「ダメじゃぞ姉上。燃えるゴミと燃えないゴミで分けなきゃいかんからの」

 

「焼却炉だったら校舎の裏だよ」

 

 え、何で僕が捨てられる話になってるの?

 

「それで、このバカ二人はともかくこの私がFクラスだというのは聞き捨てならないわね」

 

「はっ、なら優子が先にAクラスに入っても良いよ?どうせクラスを間違えてるって言われるだろうけど」

 

「いいわよ。私が教室に入っても何も言われなかったら貴方も入って来なさい」

 

「りょーかい。優子の涙をふくハンカチは用意してあるから安心してね」

 

「何で私が泣くこと前提なのよ」

 

 優子が、Aクラスの教室に入っていく。可哀そうに、どうやら自信過剰過ぎたようだね……ゴリラがAクラスなわけないじゃないか。現実を見ようよ。君は動物園以外に帰る場所はないんだよ。

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

 あれ?何も聞こえてこない。

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………ねぇ日和」

 

 明久が僕の肩に手を置く。

 

「……………早く逝きなよ」

 

「…………分かった」

 

 明久の激励を受けて僕もAクラスに入ることにする。大丈夫、あのゴリラだってAクラスに入れたんだ。僕だったら絶対に大丈夫なはず。

 

 

「こんにちはー……」

 

 

 

「「「きゃあああああああ!!!」」」

 

 

 

 足を踏み入れた途端、教室中に響く女子の叫び声。はっ、もしかして僕の登場に驚いたのかな。やれやれ、困った子猫ちゃん達だぜ。いくら僕がイケメンだからって限度というものがあるだろう?

 

「子猫ちゃん達今日もいい天気だぐぎゃっ!?」

 

 

「「「きゃあああああああ!!!」」」

 

 

 痛い痛いって!何で急に物を投げてくるのさ!

 

「ちょ、何が起きてぐふぅおっ!」

 

 

「「「きゃあああああああ!!!」」」

 

 

 僕に飛んでくる文房具の嵐。女子は未だ叫び続けている。なんて肺活量だ。てかコレ本当に危ないよ、当たりどころが悪かったら死ぬって!

 

 

 

 

 

 

 

「い、一旦落ち着いぐぁっ!?(ノートパソコンが頭に当たる音)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「ひ、日和ぃぃぃぃぃぃぃ!?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――――こうして、僕の学校生活が始まった。

 

 

 

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