暮れの中山に咲く桜   作:未熟なトレーナー

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プロローグ

日本ウマ娘トレーニングセンター学園

 

通称“トレセン学園”

 

「まさか一年で戻ることになるなんてね」

 

トレセン学園の校門を見上げて、僕“伊勢美(いせみ)春静(はるせ)”は溜息をつく。

 

もう二度と戻ってくることなんてないと思ってたんだけど………

 

「理事長の頼みだし……これで最後なんだ。三年間……それだけでいいんだ」

 

自分に言い聞かせるように呟き、トレセン学園の門を潜った。

 

「伊勢美さん、お久しぶりです」

 

門を潜って学園内に居ると、ある人が出迎えてくれた。

 

その人は僕がよく知ってる人だった。

 

「一年ぶりですね、駿川さん。お元気そうで」

 

駿川(はやかわ)たづなさん、トレセン学園理事長の秘書を勤めている人だ。

 

一年前までは、よくお世話になっていた。

 

「はい、伊勢美さんもお元気そうで何よりです。一年前、突然いなくなって私も理事長も心配してました」

 

「………その節はご迷惑お掛けしました」

 

「いえ、こうしてまた戻って来てくれただけで私は嬉しいです、もちろん、理事長も!」

 

「……理事長には恩があるんで。それに、三年だけでいいって言われましたから」

 

そう言うと、駿川さんは悲しそうな顔をする。

 

「理事長は部屋ですか?」

 

「あ、はい!案内しますね。と言っても場所は前と変わってませんけど」

 

少しだけ笑顔を取り戻した駿川さんに連れられて理事長室へと向かう。

 

「理事長、伊勢美さんが来られました」

 

『許可!通したまえ!』

 

駿川さんが扉を開け、中に入り、それに続いて僕も中へと入る。

 

「伊勢美君!久しぶりだな!」

 

「秋川理事長、お久しぶりです」

 

秋川やよいさん

 

先代の理事長から二年前に理事長職を引き継いだばかりの少女と言うのが相応しい年代の背の低い彼女だが、ウマ娘を支えたいという思いが非常に強く、私財を投げ打ってでもサポートを行う、ウマ娘想いの人だ。

 

「うむ、色々言いたいことはあるが、まずは………感謝!この度は、私が企画した催しに参加してもらう事、嬉しく思うぞ!」

 

「URAファイナルズ……ですよね?」

 

URAファイナルズとは、秋川理事長がウマ娘たちの今の現状を憂いて企画したレースだ。

 

距離やコースへの適性が合わず、自身の実力を発揮できないまま終わるウマ娘たち、そして、そんなウマ娘たちを鍛えるも実力を発揮できる舞台を用意できず悔しい思いをしたトレーナーたち。

 

そんなウマ娘たちやトレーナーたちの為に、秋川理事長は『全ての距離』『全てのコース』を用意した会場を設け、その実力を存分に発揮してもらおうと考えたのだ。

 

その為、今、トレセン学園では新人からベテランまでのトレーナーたちが、自分たちが担当するウマ娘たちを鍛え、URAファイナルズへの参加資格を、ウマ娘と共に得ようとしている。

 

だが、いくら秋川理事長の私財を投じたレースと言えども、ちゃんとした催しにならなければ意味がない。

 

そこで、秋川理事長はトレセン学園の元トレーナーである僕に声を掛けたのだ。

 

URAファイナルズに出るに値するウマ娘を育成してほしい、と。

 

本音を言えば、トレセン学園に戻る気はなかった。

 

それに、トレーナーとして働くことも、もっと言えばウマ娘たちと関わる事さえしたくなかった

 

だが、秋川理事長には恩があるし、それに三年後に開催されるURAファイナルズが終了するまでの期間だけとのことで、今回仕事を引き受けた。

 

「然り!君の腕を見込んでの頼みだ!」

 

「はぁ……まぁ、ご期待に添える様に努力はします」

 

「伊勢美さん、こちらがまだデビュー前の、あるいはトレーナーがいないウマ娘たちの名簿と資料です。最終的には、ウマ娘たちの意思ですが、この中からパートナーにしたい子を選んでください。それと、トレーナー用の制服とトレーナーバッジです。サイズは前のと同じですけど、良かったですか?」

 

「ありがとうございます。サイズの方は、多分大丈夫だと思います。じゃあ、資料を読みたいので失礼します」

 

二人に一礼し、理事長室を後にする。

 

「……理事長………伊勢美さん、大丈夫でしょうか?」

 

「憂慮……私も心配ではあるが、彼の為にもここは見守るとしよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結構、まだトレーナー契約してないウマ娘多いんだな」

 

男性トレーナー用更衣室で制服に着替え、資料を読みながら学園内を歩く。

 

「確か、この先にトレーニング場があったっけ………そこでよく読むかな」

 

慣れた足つきでトレーニング場に向かう。

 

トレーニング場では沢山のウマ娘たちが練習に励んていた。

 

トレーナーが付いていないデビュー前の子たちや既にトレーナーが付いてる子たち、自主的にトレーニングしてる子もいるだろう。

 

懐かしい雑音を耳にし、近くのベンチに座る。

 

資料を読もうと、再度資料の入った封筒に手を掛けようとした時だった。

 

「えっほ、えっほ……!あと……もう、ちょっと!」

 

苦しそうな息遣いの声が聞こえ、顔を上げる。

 

「はぁ……はぁ……ごぉ~るぅ………はぁ、はぁ……!」

 

そのウマ娘はヘロヘロになりながら、立ち止まり、膝に手をついて短い呼吸を繰り返す。

 

「よぉ~し!もう一周、行くぞぉ!」

 

一分にも満たない時間で、呼吸を整え、元気一杯な声を上げて、彼女はまた走り出す。




独自設定

この作品では学園のウマ娘たちは大勢のトレーナーたちに見守られる中で、デビュー戦を行い、その実力をトレーナーに見せ、スカウトしてもらいます。

複数にスカウトされたらその内の中から一人選びトレーナーになってもらい、逆にスカウトが無ければまた次のデビュー戦に出る。

そんな感じにしています。
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