暮れの中山に咲く桜 作:未熟なトレーナー
「あの子は……?」
コースを走るその子を見て、その子が渡された資料にある子だと気づいた。
確か名前は………
「“ハルウララ”か………えっと模擬レースの結果は…………え゛?」
結果を見て、思わず口から変な声が出た。
何故なら、彼女の模擬レースでの順位は常に最下位と酷い成績だった。
(この成績だとちょっとスカウトはないかな……)
頭を掻き、もう一度ハルウララを見る。
最初は快調に飛ばすも、徐々にスタミナが切れ、そのままスピードが落ちた。
(根本的に体力が足りない。それに先行や逃げでどうにかなる速さもない。………育て方次第なら…………いや、それだとかなりハードな訓練になる。体を壊したら元も子もないんだ)
そう思い、ベンチから立ち上がる。
「早くスカウトしないとな」
する気もないのに、しないといけない状況に溜息を吐き、学園内を移動しようとした時だった。
「ふい~……ようやくごぉ~るだぁ……」
丁度ヘロヘロになったハルウララが戻って来た。
が、そのままフラつき倒れそうになる。
「危ない!」
咄嗟に走り出し、彼女の腕を掴み引っ張り寄せる。
お陰で何度か倒れずに済んだ。
「わっ!?誰?」
「あ、いや、別に怪しい者じゃないよ。今日からトレセン学園のトレーナーになったんだ。ほら、トレーナーバッジ」
慌てて彼女を離し、制服の胸元にあるトレーナーバッジを指差し見せる。
「本当だ!私、トレーナーって初めて見た!こんにちは!」
さっきまでの疲れ切った姿は何処に行ったのかと言いたくなるぐらい、元気な声でハルウララはそう言う。
「うん、こんにちは。それより君、大丈夫?今、倒れそうになってたけど」
「ちょっと足に力か入らなくなっちゃっただけだから大丈夫だよ!」
「いや、それは大丈夫って言わないからね」
そのまま彼女に休むように言い、ベンチに座らせる。
「はい、これ飲んで」
学園に来る前に買ったまま鞄に入れてあった未開封のスポーツドリンクを出し、ハルウララに渡す。
「ありがとー!」
ハルウララは笑顔で受け取り、飲む。
「ぷはー!美味しかった!ありがとー!」
「どういたしまして」
「じゃあ、私もう一回走ってくるね!」
「ちょ待ちなよ!」
そう言ってまたトレーニングを始めようとする彼女を慌てて止める。
「さっき倒れそうになったばっかなんだよ!頑張るのもいいけど、無理なトレーニングは良くない!体を壊してからじゃ遅いんだよ!」
「でも、私他の人よりも足が遅いから、もっと沢山練習しないといけないんだもん!」
彼女はそう言った。
だが、足が遅くて悔しいとか最下位で嫌だなどと言った感情は感じれなかった。
彼女の瞳はキラキラと輝いていて、今すぐ走り出したくてしょうがないと言った表情をしてる。
「………どうして、そんなに頑張るのさ?」
思わずそう尋ねた。
「そんなの決まってるよ!だって、走るのが好きだから!」
「え?」
「走るのって凄く楽しいんだよ!自分が風になったみたいでさ!走るのがこんなに楽しくて嬉しいんだから、レースで一着なんか取ったらきっと物凄く楽しくて嬉しいと思うんだ!だから、走るの!」
彼女の、その言葉に驚いた。
彼女“ハルウララ”と僕のかつてのパートナー、二人は似ていた。
走ることが楽しい、走ることが好き。
「……似てるな」
「え?何が?」
「あ、いや……なんでもないよ」
思わず出た独り言に、慌てて誤魔化しハルウララを見る。
「ところで、君のデビュー戦はいつなの?」
「一週間後だよ!だから、それまでに少しでも速くならないと!」
「それなんだけど、デビュー戦まで僕が少し指導しようか?」
「え!?いいの!?」
指導と言う言葉に、ハウウララは驚きの声を上げる。
「うん。実は訳あって一年程、トレーナー業から離れてたからさ。リハビリついでと言ったら申し訳ないんだけど……どうかな?」
「ううん、全然いいよ!ありがとー!実はトレーニングって何したらいいかよく分かってなかったんだ」
「だろうね。分かってたら、あんな無茶なトレーニングしないよ」
ベンチから立ち上がり、ハルウララに手を差し出す。
「じゃあ、一週間だけだけど、よろしくね」
ハルウララは笑顔で僕の手を取り、握手をする
「うん、よろしく!」
ハルウララの口調とかおかしいとこあったら申し訳ありません