黄金船の長い旅路 或いは悲劇の先を幸せにしたい少女の頑張り   作:雅媛

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マックイーンの見る光景

マックイーンが学園に戻ってきて、最初に驚いたのはトウカイテイオーについてだった。

 

軽くウォーミングアップをした後に、テイオーはカノープスのツインターボと併走を始めた。

ツインターボのことはカノープスに一時期いたマックイーンもよく知っている。

個人的に好き嫌いで言えばかなり好きなタイプだが、ライバルになるとはとても思えない実力であった。

ところがテイオーと二人でなりふり構わないスタートからの全力疾走をし始めたのだ。

速度はターボの方があのテイオーより少しばかりだが速い。信じられない速度で1000mまで走ると……

ターボはそのままぶっ倒れた。

テイオーは少しだけ遅れてターボを抜き去ると、1周して1600mまでは走り切ったが、やはりそのままぶっ倒れた。

 

併走とはいったい何だったっけ? とマックイーンは不思議に思った。

ただ、マックイーンも一つ分かったことがある。

テイオーが、ライバルになったという事だ。

確かに今までテイオーは強かった。

しかしふわふわした信念のない走りに負ける気は毛頭なかった。

今のテイオーを見るとまだ軽い。だが、こうやって全力で他人と走ることを覚えたのは確かだった。

確実な脅威に、テイオーがなってきているのをマックイーンは認めざるを得なかった。

 

春の三冠、そして秋の三冠はなかなか厳しいものになりそうだ。

マックイーンはゴールドシップを褒めたい気持ちとともに恨めしい気持ちを抱くのであった。

 

 

 

テイオーに対抗するためにマックイーンも新しい方法を考える必要があった。

今までのゴールドシップから発想を得たあれはかなり負担が大きい。

天皇賞秋に勝つのに使ったのは後悔しないが、春のシニア三冠を取るにはあんな方法では体がもたない。

また、コーナーリングや進路変更を器用に行うゴールドシップに比べ、マックイーンはそこまで器用ではない。そこまでマックイーンに向いた走法とは言えなかった。

安定して勝てるようにするために、新しい何かが必要だった。

 

戦法は先行で走るのが無難だろう。

ただ、周りをウマ娘に囲まれ、もまれながら隙を見て抜け出す先行では、集中が必要なあのゴールドシップの走法は少し難しい。

そう考えていくつか試しに走ってみたが、なかなかこれといった方法が見つからなかった。

スズカや最近よくテイオーと走っているツインターボのような瞬発力はマックイーンにはない。

あれは小柄な二人だからこそできる加速であり、体格の良いマックイーンには難しい。

メジロだとパーマーが良く逃げをしているが、あれはマックイーン以上に無尽蔵のスタミナをもって押し切るスタイルだ。

安定して勝てる戦術ではなく、マックイーンには必ずしも向いている方法ではなかった。

 

試行錯誤自体は無駄ではなかった。スムーズな抜け出しや加速のタイミングなどを含め、見直すこと自体はとても有効だった。だがこれといった決め手にはならない。

 

 

 

「何かいい方法ねぇ」

「テイオーばかりにかまわないで私にも構ってほしいのですわ!」

「うーん」

 

ゴールドシップに相談すると、悩みながらもいくつか手を教えてくれた。

 

「例えばネコだましとか?」

「ねこだまし?」

「レース中に、パン、と手を叩いて周りの集中を乱すんだ」

 

そう言いながらゴールドシップは柏手を打つ。ぱあああん! と良い音がした。

 

「こうやってほかの参加者の気を散らす方法もあったりする。相手に直接攻撃してないからルール上セーフだ。だが効果がまちまちなのもあってあまり流行らない手だな」

「なるほど……」

「直接攻撃は原則NGだからな。こういう相手に影響を与える方法っていうのは難しいんだぜ」

 

ブロックされた時の跳ね飛ばし以外は、基本相手に当たるのはNGだ。

だからこそ、意図的に相手に影響を与えるというのは結構難しかったりする。

 

「一つ手を思いつきましたわ」

「どんなんだ?」

「試してみますのでゴールドシップ、併走してください」

「仕方ねえな」

 

マックイーンの新しい何かは完成するのか、それは誰にもわからなかった。

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