黄金船の長い旅路 或いは悲劇の先を幸せにしたい少女の頑張り 作:雅媛
「勝てると思ったんだけどなぁ……」
ライブ前の控室
G1ともなると、個室が与えられるそこで、テイオーはぼんやりといった。
コース取りも完璧だった。
マックイーンの対応も完璧だった、はずだった。
いや、完璧ではなかったのだ。
ああいう手をあそこで使ってくるのは予想外だったのは確かだ。
だが、マックイーンが、あのまま負ける現状で素直に負けてくれるはずなんてなかったのだ。
こういうところがおそらく、ネイチャのような準備を完全にして挑む子と自分のようなウマ娘の差なのだろう。
経験の差、知識の差、努力の差。
そういったものが自分とマックイーンの間にあることを感じていた。
キタちゃんが買ってきてくれたコーラを飲み干す。
甘くて少しだけ元気が出た。
キタちゃんは何も言わないで近くにいてくれる。
前に傷つけてしまったときのことを考えて何も言わないのだろう。
少し悪い気がして、抱っこすると暖かかった。
「惜しかったわね」
「勝てると思ったんだけど」
「作戦負けだったわね。ごめんなさい」
「そんなことないよ。スズカもスぺちゃんもいろいろ教えてくれたし、そうじゃなきゃボクもあそこまで勝負できなかったと思うし」
「……」
テイオーはそういうがスズカは自分が不甲斐なかった。
スズカはトレーナーを目指していた。
自分ではスぺのように人の上に立つのは難しい。
同期のタイキシャトルのように人を魅せるのも難しい。
同じくマチカネフクキタルのように特殊な技能もない。
そんな中、自分が何をしたいか、何になりたいかと考えたときに思いついたのがトレーナーだった。
誰かを導く、そんな自分になってみたいとスズカは思ったのだ。
テイオーの面倒を誰が見るか、となった時に手を挙げたのはそんなこともあったからだ。
もちろんまだトレーナー免許の勉強中のスズカは名義上トレーナーではない。
だが、スピカのトレーナーもゴールドシップもかなりの部分をスズカに任せてくれた。
ときにはスピカのトレーナーやゴールドシップのアドバイスも受けて自分なりに頑張ってみた。
しかしやはり甘くはなかった。
実力的に見たら、テイオーはマックイーンを上回っていたはずだ。
スパート開始時三バ身あった差はゴール時には二バ身に縮まっていた。
マックイーンの奥の手がなければ、道中の有利も加味すれば最低でも一バ身半の差でで勝てていたはずである。
だがあれを読めず、また、そういう場合に備えた対応も取れなかった。
実力負けではない。完全に作戦負けだった。
テイオーがああいう場合に対応力が低めだというのもあるが、それを含めてみるのがトレーナーだった。
最低でもリギルでもスピカでも、そこまでトレーナーたちは対応していた。
「でも、悔しいんだけどさ、ちょっとうれしかったりもするんだ」
「?」
「マックイーンに負けて、悔しいって、今度は勝ちたいって思える自分がいる」
「……いいことね」
「こうやって、一緒に悔しがってくれる仲間もいる。二人とも、ありがとう」
「次こそは、勝ちたいわね」
「勝てますよ、絶対」
キタちゃんが楽しそうにそういう。
そうだ。祈ってくれる彼女の願いも叶えなければならないのだ。テイオーもスズカも気合を入れるのであった。