黄金船の長い旅路 或いは悲劇の先を幸せにしたい少女の頑張り   作:雅媛

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吹きすさぶ木枯らしに

レース展開は予想通りになった。

大内から全速力で逃げ始めたツインターボに、メジロパーマーがついていく。

さらにダイタクヘリオスまで競り合い始めるのだから狂乱的なペースになりつつあった。

 

他の参加者が皆、その狂乱的な雰囲気とペースに流され始める中、テイオーは一人氷のように冷静だった。

バ群後方を走り続けるテイオーは、その速いペースの中で脚を溜め続ける。

ハイペースになったときには脚を残し切ったウマ娘が一番有利だ。だが、後につけていれば脚が残せるかというとそういうわけではない。

ハイペースというのは先頭だけが速いわけではない。参加ウマ娘全員の速度が速くなるのだ。だから下手についていこうとすると予想以上に体力を消耗する。最終直線で脚が残っていないなんていうことはしばしばあることだ。

じゃあ全く無視をしてしまうと、先頭を自由に走らせてしまう。それだとあまりにリードが出来過ぎる。セーフティリードと呼ばれる、先頭が完全にばてたとしても追い込みバがとどかない状況になってしまう。

速すぎることもなく、遅すぎることもなく。脚を残せるだけのペースを維持することが対逃げウマ娘では必須なのだ。

 

そしてターボの逃げに対してはそういった適正なペースの範囲が非常に狭い。

彼女の逃げに駆け引きはない。パーマーのように幻惑したりすることも非常に少ない。

ただただ、全力で逃げて、ただただ、ゴールまで必死に走る。シンプルなそんな戦略だからこそ、しかし対応が難しかった。

 

1000mを57秒台で駆け抜けていくターボ。

圧倒的なペースに他のウマ娘達は次々にペースを崩していく。

テイオーはそんなウマ娘の後ろに隠れながら、じっくりと足を溜め続けていたのであった。

 

 

 

ネイチャはただただ走り続けていた。

ターボがいる以上展開は読めていた。

パーマーやヘリオスの逃げは勝つための逃げだ。ターボのあの、ただ全力で走りたいから走るという破滅逃げの方が展開を作ることは予想されたことであったし現にそういう展開になった。

適切な場所を陣取りながら、ネイチャは走っていく。

ハイペースになりバ群がバラバラになっている現状で、差すときの進路がつぶされる心配もない。

直線に入ってからスパートをかけるべく、ネイチャは準備していた。

 

ネイチャは考える。

自分はターボに勝てるのだろうか。自分はリョテイに勝てるのだろうか。自分はイクノに勝てるのだろうか。何より今の自分はテイオーに勝てるのだろうか。

そんなことを考えながら、いまいち気持ちが燃えなかった。

 

ターボのエンジン全開の大逃げだが、どうせいつものように最後には失速する。

十分脚を残して直線に入れば追いつくことは難しくない。府中の直線は長いのだ。

丁寧にコーナリングをして直線に入り、スパートを始める。既に周りのウマ娘は皆顎が上がってしまっている。すでにスタミナが切れてしまっているのだろう。

あの狂乱のハイペースを走るのは非常にコツがいる。だがネイチャはこのペースに慣れていた。

しかし……

ターボが、垂れてこない。

明らかに顎が上がって息も絶え絶えになっている。しかしそれでも執念で走るのを止めないターボに、ネイチャは詰め切れない。

あの青い髪の背中が遠い。

そう思った瞬間、自分の右を風が通り抜けた。

 

 

 

テイオーは十分溜め切った脚を直線で解放した。

バ群に隠れ空気抵抗を減らし、体力を可能な限り温存したテイオーは、スローペースの時と変わらないぐらいのスタミナを維持していた。

そして直線に入ってスパートをかければ、圧倒的な速度になった。

3ハロン33秒台のとてつもない末脚だ。

疲れ切った先行ウマ娘達では並ぶこともできない。

大外の綺麗な芝を駆け抜けていくテイオー。

ターボを追いすがるネイチャをかわし、先頭を行くターボもかわし、そのままゴール板の前へと駆けこんだのであった。

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