黄金船の長い旅路 或いは悲劇の先を幸せにしたい少女の頑張り   作:雅媛

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特別なところ

「シンボリルドルフさんに、勝つためにですか?」

「スぺちゃんからも話を聞きたいなって」

 

テイオーが次に訪れたのは生徒会室にいるだろうスペシャルウィークの元だった。

しばらく見ないうちに生徒会室の中身もかなり変わっていた。

前は各役員の机といす、そして応接セットであるソファと机しかなかった。

質実剛健な感じだった生徒会室が、今はカオスになっていた。

まず、机が大きなテーブル一つしかなくなっている。

「自由席です!」とスぺちゃんがどや顔をしているが、書類の山があり、確実に席が決まっているだろうところが1カ所ほどあった。きっとスぺちゃんの場所である。

他にも隅に畳が敷いてあるのはグラスワンダーがお茶をたてる場所だろうし、布製のハンモックはセイウンスカイあたりの持ち込んだものだろうか。

壁一面ぬいぐるみが置いてあって、スクールモットーもすでに埋もれているし、やりたい放題のカオスになっていた。

あの真面目なエアグルーヴが文句を言わないのか、少し不思議になった。

 

「ルドルフさんの実際の走りって見たことないんですが、この前のテイオーさんのと同じでいいんですよね」

「そうだと思うよ」

「んー、それならそんなに怖いですか?」

「え?」

 

スぺはとんでもないことを言い始めた。

 

「いえ、ルドルフさんは無敗の三冠を達成して七冠を達成した、すごいウマ娘ですよ。今の練習してない私ではとてもかなわない相手だとは思います」

「そうだよね」

「でも『それ以上に』強いですかね?」

「?」

「皇帝だから強いんであって、絶対だから強いわけではないと思います。むしろ完璧な皇帝の弱点がそこなのではないかと思います」

「むむ……」

「精神は肉体を凌駕するともいいます。絶対の状態の精神が強いとはとても思いません。スピードでもスタミナでもパワーでも勝つのが難しいなら、勝つにはそこをつくのが一番かなぁと」

「なるほど」

 

皇帝の走りは確かに強い。テイオーもかなりのものであるという自負があるが、皇帝に敵うかというと若干疑問符がつく。だからこそこうやっていろいろ対策を考えているのだが、スぺの言うことは確実なきっかけになった気がした。

ただ速いウマ娘が勝つわけではない。ただ強いウマ娘が勝つわけではない。

それは今までの経験でテイオーが一番わかっていたことだ。

 

「ありがとうスぺちゃん。とっても参考になった」

「絶対勝ってくださいね」

 

スぺは笑顔でそう激励した。

 

 

 

「テイオー、頑張ってるみたいですね」

「マックイーンも、頑張ってるみたいだからね」

 

スピカのチームルームに戻ってくると、そこには偶然マックイーンが残っていた。

すでに怪我も治り、リハビリに励んでいる状況だと聞いている。

現状は低負荷で長時間動いて固まった関節などを柔らかくしているのだろう。だからこそマックイーンは遅い時間までチームルームにいたのだろうとおもった。

 

「マックイーンはさ」

「なんですの?」

「どうして頑張ってるの?」

「ん~ 結構難しい質問ですわね」

 

テイオーは今年の前半、マックイーンと競い続けてきた。

とても強かったが、それ以上にマックイーンは身を削るようにレースに出ていた気がした。

そこまでして頑張っていた理由は何か。少し気になった。

 

「私のためでもあり、ゴールドシップのためでもあり、メジロ家のためでもありますわね」

「多いね~」

「私は欲張りなのですわ。それだけ目標があれば、それだけがんばれますの」

「マックイーンは強いね」

 

ゴールドシップのことはある程度聞いている。

メジロ家の因縁は単純に有名だ。

背負うものは時につらいが、それだけ力を与えてくれるのかもしれない。

 

「テイオーだって同じではありませんか」

「ボクが?」

「自分のためでもあり、共に競う友のためでもあり、目指すシンボリルドルフのためでもあり、指導してくれるスズカやゴールドシップのためでもあり、私よりよほど背負っているように思いますわ」

「……そうかもしれないね」

 

思えば走り始めた時とはまるで違った。遠くまで来たような、そんな気がした。

 

「初めてあなたと走った時」

「ホープフルステークスの時だね」

「テイオーのこと、なんて詰まらない子なんだろうって思っていました」

「ボク、そんな風に思われていたんだ」

 

負けた後、さっさとクラシックに出ないと宣言したマックイーンに、テイオーは見捨てられたと悲しんだが、まったくその通りだったようだ。

 

「菊花賞でネイチャさんと走っているのを見ても、全く燃えませんでしたし」

「そうかもねぇ」

「でも、大阪杯の時は、テイオーは強くなっていました。とても強くなっていて、目を離せなくなりました」

「そうだったんだ。ちょっとうれしいかも」

「天皇賞、そして宝塚記念。テイオーは私よりどんどん強くなって、最後には負けてしまいましたわ」

「頑張ったからね」

 

テイオーのことをある意味一番追いかけてきたのは、マックイーンかもしれない。

がんばって、勝って、最後に負けて。とるに足らない詰まらない相手にいつの間にか追い抜かれていた。

 

「私に勝ったんですから、皇帝にだって負けてはいけませんよ」

「責任重大だなぁ……」

 

様々な思いがテイオーの肩に乗っていく。それはとても重くて、とてもきついけど、いやな気持はしなかった。

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