黄金船の長い旅路 或いは悲劇の先を幸せにしたい少女の頑張り   作:雅媛

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祭りの後

本当に一歩も動けずに倒れるテイオー。

よろよろと遅れてゴールしてきたターボがその上に倒れてきた。

ターボもまた余力を使い果たしたのだろう。

 

「おーもーいー」

「むーりー」

 

小さくつぶやくテイオーとターボ

二人とも立ち上がる余裕もなかった。

 

どうにか三着には入ったネイチャが二人に寄ってくる。

最初は肩を貸して二人を連れていこうかと考えたが、さすがに二人一度は骨が折れる。

それにどちらか運ぶと絶対あとで文句を言われる。

かといって担架を呼べば大事になる。

二人とも疲れ切っているだけなのでそこまで大事にする必要性も感じなかった。

 

どうしようか迷っているとイクノがターボをつまみ上げた。

 

「ターボさん、ダメですよ。テイオーさんに乗っかっちゃ」

「イークーノー」

 

イクノはそのままターボを抱き上げた。

 

 

 

「お疲れ、テイオー」

「お疲れ、ネイチャ」

 

ネイチャの差し出した手を握ってテイオーは立ち上がる。

そのまま大歓声の観客にテイオーは手を振った。

皇帝も誰もなしえなかった秋のシニア三冠である。

その歴史的瞬間に観客は大歓声を上げていた。

 

「おめでとう、テイオー」

「いやぁ、速すぎでしょ、テイオー」

「すごかったよ、テイオー」

 

他の参加者も皆から祝福の言葉をもらい、テイオーはとてもうれしかった。

おそらく内心は悔しがっている子もいるだろう。

涙を呑んでいる子もいるだろう。

それでもこうやって健闘をたたえてくれているのだ。

それがうれしくて、テイオーは皆に頭を下げた。

 

 

 

テイオーが思い出したのは、皇帝シンボリルドルフの二回目の有馬記念である。

皇帝の二回目の有馬記念も、こうやっていろいろな人に祝福されていたのを覚えている。

テイオーが全力で出した大声が聞こえたのか、皇帝も小さく手を振ってくれたのも覚えている。

 

並ぶものはいなかったかもしれないが、それでも彼女はこうやって同じように祝福されていたのだ。

テイオーはもう一度覚悟を決め直したのだった。

 

 

 

ライブが終われば、あとは適当に皆で食事でもして帰るだけである。

テイオーはスピカやカノープスのみんなと打ち上げをすることになった。

 

マックイーンが「私、いいお店知っていますの」というのでついていったところはただの焼き肉食べ放題の店であった。

てっきり高級な店だと思っていたのに、案外普通の店で皆顔を見合わせた。

とはいえ食べ盛りのウマ娘ばかりであるのも考えると、こういう店の方がいいのかもしれない。

主にトレーナーの財布的に、であるが。

 

 

 

テイオーは、ネイチャ、ターボ、マチタンの三人と同じ席に座った。

見事にカノープスばかりであるが、スピカメンバーの席はどこも地獄そうだったので避けた形である。

マックイーンのところはゴールドシップ、イクノ、そしてリョテイというなんかよくわからない家族オーラを出す席になっていた。とてもではないがテイオーが割り込める気がしない。

スぺちゃんのところはスズカとなぜかいるグラスワンダーの3人だ。イチャイチャする二人に茶々を入れるグラスという謎空間に足を踏み入れる勇気はテイオーにはなかった。

ダイワスカーレットとウオッカはいつものように言い争いしながら肉を焼いて、それをタキオンが食べるという謎サイクルが出来上がっていた。あの元気な二人と一緒の席はそれはそれでつらい。

唯一ありそうなのは、キングとウララのペアのところだが、そっちに移っても結局カノープスばかりだし、トレーナー二人がそちらに移っていったので遠慮していた。トレーナーたちが休める場所も必要だろう。

 

自称普通のペースで、すごい勢いで肉を置きまくるマチタン。焼けてない肉を食べようとするターボ。そしてその二人を制御するネイチャという予想できた展開になりつつあった。

 

「テイオーとの実戦は今日が最後かなぁ」

「ネイチャもドリームトロフィーリーグに移籍すればまた当たるでしょ」

「私はしばらくトゥインクルシリーズにいる予定だからね」

「へぇ、そうなんだ」

 

ドリームトロフィーリーグは大きいレースは年2回、あとはその予選しかなく、レース回数が劇的に下がる。

その分体調管理も楽になるし、勉学など将来の準備に使える時間も増える。

しかしやはり、注目を集めるのはトゥインクルシリーズの方だ。こちらに居続けるウマ娘も時々いた。典型としてはキンイロリョテイだ。今年末でやっとドリームトロフィーリーグ移籍予定だが、彼女はスズカと同期だ。

かなりの期間トゥインクルシリーズにいたことになる。

スズカやエアグルーヴだけでなくスぺたちの世代とも、マックイーンやテイオーとも勝負を繰り広げて来た彼女だ。知名度や人気だけなら一番かもしれない。

ネイチャももしかしたらそういう路線に進むのかもしれないな、とテイオーは思った。

 

「でも、練習とかならいくらでも走れるし。ボク達、友達だからね」

「ターボも走る!!」

「だからターボ、それ焼けてないってば!! でもそうね、また一緒に走ろうね」

「うん」

 

大騒ぎしながら食べる焼肉はとてもおいしかった。

 

 

 

有馬記念後、トウカイテイオーは年度最優秀ウマ娘に選ばれた。

秋のシニア三冠を達成したテイオーは、既に皇帝を超えたか、などといわれることもある。

しかし、テイオーは、確実に皇帝を超えたと皇帝に見せつけるために、ドリームトロフィーリーグに移籍し、皇帝に挑むつもりであった。

 

ウィンタードリームトロフィー

その時は近づいてきていた。




20時のは昨日間違って投稿してしまったのでなしです。
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