黄金船の長い旅路 或いは悲劇の先を幸せにしたい少女の頑張り 作:雅媛
「で、ゴールドシップ」
「なんだマックイーン」
「なんというか、渋すぎませんか?」
ゴールドシップがマックイーンとテイオーを連れてきたのは、近所の温泉施設だった。
そこで三人で温泉に浸かって、三人でマッサージを受けて、三人でニンジン牛乳を飲んで、そのまま休憩スペースでくつろいでいた。
ゴロゴロするマックイーンに抱き着いて、そのままテイオーは眠ってしまった。
胸に頭を埋めるとちょうど抱き枕にいいらしい。
気持ちよさそうに眠るテイオーに、マックイーンはどうしていいかわからなくなっていた。
「テイオーも動いてくれないし」
「ゴルシちゃんが膝枕しながらマンガ読み聞かせてやろうか?」
「ではお願いします」
「え?」
「膝枕お願いします」
「あ、はい」
ゴールドシップの冗談に普通に乗ってきたマックイーンに若干困惑を覚えつつ、ゴールドシップはマックイーンに膝枕をした。
謎の三連結である。
暇なのでゴールドシップは備え付けの漫画を読み始め、マックイーンもまた漫画を読み始めた。
ただただそうして、1時間ほど、テイオーが起きるまで三人のんびり時間を過ごしたのであった。
ちなみにゴールドシップは足が極限までしびれ、抱き着かれて身じろぎできなかったマックイーンの体はバキバキになったが、テイオーの調子は上がったようだった。
違う日、テイオーはネイチャやターボと一緒に料理教室を受けることになった。
料理教室といっても教えてくれるのはトレーナーさん達である。
トレーナーになるには栄養学の知識が必須であり、大なり小なり料理ができる。
現状比較的余裕があるカノープスの南坂トレーナーが、3人に加わったゴールドシップに料理を教えてくれることになった。
内容は定番のニンジンハンバーグである。
合挽のひき肉とニンジンのすりおろしを混ぜて焼くだけという簡単なレシピであったが……
なんせテイオーとターボは全く料理をしたことが無い。
包丁を持つ手からおっかなびっくりであるし、ニンジンをおろし金ですりおろす途中で指をすり下ろしそうになるし、と大騒ぎであった。
その度に実家で料理経験があったネイチャが必死にフォローし、トレーナーさんが必死に止めることでどうにか進んでいく。
一応チームメンバー全員分という事で、予備も合わせて20人分のハンバーグ種を丸めることができた。
「で、ゴールドシップは何作ってるの」
「フルコース」
ゴールドシップはコース料理を作っていた。
イタリアンのフルコースから、お酒類を抜いたものだ。
パスタやリゾット、鯛のアクアパッツァに子羊のロースト等、色とりどりの料理が出来上がっていく。
スゴイ腕前に感心はするが、もともとのニンジンハンバーグはいったいどうなったのか、全員が首を傾げた。
そしてそのまま夕食はここで作った料理になった。
ニンジンハンバーグは大好評であり、作った三人は鼻が高かった。
「これならご飯5杯はいけます!」
そう言ってモリモリ食べてたスぺは、3杯でスズカに止められていた。
一方マックイーンもニンジンハンバーグを食べたかったが、なぜかフルコース料理を食べさせられていた。
脳筋でも一応メジロのご令嬢である。
礼儀作法は一通り身に着けており、作法通りに美しく食べるその姿に周りは感心していた。
一通り料理は出てくるが、しかしマックイーンの腹は膨れない。
人だったら十分な量だが、運動するウマ娘には足りないのだ。
結局マックイーンはきれいに完食した後、部屋に帰って特盛カップ麺を食べて無事太った。
そんな感じでテイオーはいろいろ楽しんでいた。
寮のみんなで除夜の鐘をきくこともあった。
栗東寮の寮長であるフジキセキも苦笑しながら許してくれて、寮に残ったみんなで食堂に集まって除夜の鐘をきいたのだ。
普段ならほとんど寝ている深夜12時に起きているというのも少しわくわくした。
最後にゴールドシップがあらかじめ用意してくれていた甘酒をみんなで飲んで、寝ただけだがとても楽しかった。
他にもみんなで初詣に行ったり、七草がゆを食べたり、カラオケ大会を開いたり、いろいろ遊んで騒いでいた。
徐々に近づいていくウィンタードリームトロフィーレース。
テイオーの調子は絶好調であった。