黄金船の長い旅路 或いは悲劇の先を幸せにしたい少女の頑張り 作:雅媛
その日、マックイーンは病院へ全速力で走っていた。
孫が生まれるのだ。
その孫を見るために、車にも乗らずマックイーンは走っていた。
3600mレコードになりそうな速度で走っていた。
イクノと結婚したマックイーンは、あまり多くの子宝には恵まれず、生まれたのは娘一人だけであった。
キソジクイーンとメジロの名を継がなかった彼女は、外見と体格と葦毛と脳筋はマックイーンから、丈夫さと走りはイクノから受け継いでいた。
つまり脚が遅かったのだ。
トレセン学園に入れる程度の学力と実力はあったが、残念ながら未勝利で終わってしまった。
そんな彼女がしかし大騒動を起こす。
物心ついたころから初恋の相手で、彼女の専属トレーナーで教官のキンイロリョテイを押し倒して既成事実まで作り上げてしまったのだ。
10年を超える初恋を拗らせ切った狂行に、関係者は阿鼻叫喚に包まれた。
形式的には一回り以上歳上なことに加えて教官であるリョテイの責任である。
しかし、周り中皆、やらかしたのがキソジの方だとわかっていた。
子供もできてしまい責任をいろいろ取らざるを得ない状況だ。
学園理事長になっていたシンボリルドルフの胃に多大なダメージを与え、イクノが土下座を繰り返し、うちの娘に手を出したなと切れるマックイーンが娘に返り討ちにされ、どうにかこうにかまとまって3年が経過した。
なんだかんだで仲良くやっているリョテイの夫婦の、今回が3人目の子供である。
今まですでに二人産まれているが、どちらもリョテイに似て小柄な子供だった。
今回の子はしかし、マックイーンは直感的に確信していた。
きっと、葦毛のあの子であろうことを。
孫がかわいくないわけがない。というかすごくかわいい。
リョテイに似てるのが少しだけ不満だが、それを差し引いてもすごいかわいい。
あまりかわいくて甘やかしすぎて、マックイーンは娘から時々怒られていた。
だが、次に生まれるのが葦毛のあの子ならば。
それは孫であることとはまた別の、特別なことである。
だからこそ、いてもたってもいられずにマックイーンは走り出してしまったのだ。
既におばあちゃんと呼ばれる年齢とは思えない速さで走っていた。
マックイーンが病院についたとき、既に子供は産まれていた。
マックイーンが病室へ行くと、娘の腕に抱かれた葦毛のウマ娘の赤子が目に入ってくる。
彼女が何なのか、マックイーンはすぐに理解した。
「お母様。生まれましたのよ、この子の名前は……」
「ゴールドシップ」
「そう、ゴールドシップですわ。お母様、どうしてお分かりに」
「一人だけ特別扱いは良くないのかもしれませんが……」
そう言いながら娘から赤子を受け取るマックイーン。その右耳に、自分がつけていたリボンをつけてあげる。
「彼女が私にとって、特別な存在だからですわ。おかえりなさい、ゴールドシップ」
祖母に抱かれた葦毛の赤子は、楽しそうに笑っていた。
本編はこれにて完結です。
番外話は書く予定ですが、希望等あれば活動報告のコメントにお願いします。
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