黄金船の長い旅路 或いは悲劇の先を幸せにしたい少女の頑張り   作:雅媛

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黄金船の学園案内

 拝啓、メジロのお屋敷にいるおばあ様

 

 ドリームジャーニーのお姉さまと、オルフェーヴルのお姉さまはいろいろダメウマ娘であることをここにご報告差し上げます。

 

 というか、オルフェのアネキは1年、ドリジャのアネキに至っては5年も通っているのに、食堂にたどり着けないのは本当にどうかしてると思うゴルシちゃんである。

 食堂にも行けないのにドリジャのアネキはどうやって自分を学園案内しようとしたのだろう。きっと何も考えていないのだろう。妹を学園案内するというそのお題目に惹かれただけに違いない。

 そういう考えなしなところがあるのがドリームジャーニーというウマ娘だった。

 一方ゴールドシップは前世? で10年以上学園に通っている。目をつぶっていてもどこにでも行ける自信があった。

 

「というかお二人とも、お昼どうしてるんですか?」

 

 ゴールドシップは疑問に思った。

 生徒のほとんどは、この食堂で昼食を食べているはずだ。

 なのに二人とも場所を知らないということは、ここをあまり利用していないのだろう。

 どこで昼食を食べているのだろうか。購買で何か買っているのだろうか。

 なんか嫌な予感がするが……

 

「オレ様は、周りからいろいろ貰ってやってるぜ!」

 

 ドヤ顔するドリジャのアネキ。

 人が多い食堂で暴れられると面倒だから、隔離されているようだ。

 あと、なんだかんだで見た目だけで言えば、ドリジャのアネキは小さくてかわいい小動物系ウマ娘である。食べている間は大人しいし、小さい口で一生懸命食べる姿はリス的な可愛さがある。見た目だけはいいのだ。

 多分クラスメイトがうまく扱っているのだろう。今度菓子折りをクラスに差し入れた方がいいかもしれない。

 

「でオルフェお姉さまはどうしてるんですか?」

「トイレで一人パンを食べてる」

「え?」

「トイレで一人パンを食べてる」

 

 オルフェアネキ、トイレボッチ飯発覚。

 ネットなんかでの逸話でしか聞いたことがなかったトイレボッチ飯。

 それをこんな身近で実行している人が居ることに、ゴールドシップは衝撃を受けた。

 いじめられているのだろうか? 

 視界に入った教官でもあるイクノディクタスおばあちゃんにアイサインを送る。

 イクノおばあちゃんは笑顔で手を振り返してきた。

 イクノおばあちゃんは、孫にやさしいところはあるが基本は放任主義だ。いじめられていたりしたらさすがに助けるだろうが、自分でボッチになりにいく孫を助けるタイプじゃない。

 

 でもトイレボッチ飯はないだろう。いくらトレセン学園が女子高でトイレがきれいだからって、そんなところで飯を食うものではない。

 特に気にせず、マスクも外さずにオレンジジュースをチューチュー吸うオルフェのアネキを見ていると、なんか怒りがこみあげてくるゴールドシップであった。

 

 この怒り、誰にぶつけるべきか、ゴールドシップは考える。

 本来一番悪いのはあのイクノおばあちゃんだ。絶対あの感じ、オルフェのアネキがボッチ飯をしていたのを知っている。

 だが、敵に回すには分が悪い相手だ。頭も回るし口も回るタイプだ。過去の頃は口が回るタイプじゃなかったと思うが、癖馬が多いトレセン学園で長年教官をしていれば鍛えられるのだろう。きっと文句を言っても丸め込まれるだけで、フラストレーションが溜まるだけである。

 くそっ、マックイーンならば簡単に丸め込めるのに。

 祖母であるメジロマックイーンは、メジロを背負い、メジロを終わらせただけありその政治力は素晴らしいものがあるが、孫バカなので、ゴールドシップが何か言うと無条件で信じてくれるのだ。

 端的に言うとちょろい。

 脳内でメジロまんじうをぷにぷにして精神を落ち着けながら、ゴールドシップは八つ当たり先を探す。

 そうして、ゴールドシップの目線はドリジャのアネキで止まった。

 ドリジャのアネキは涙目になった。

 

「あ、あのねゴルシちゃん、お姉ちゃん、オルフェちゃんがそうなってるなんてこと知らなかったというか」

「そうでしょうね、1年間、妹がボッチ飯してても気づかないぐらい鈍感なお姉さまですからね」

「な、何で手を伸ばしてくるんぎぃ!?」

 

 ゴールドシップはドリームジャーニーの顔面をアイアンクローでつかみ上げた。

 暴れるドリームジャーニーだが、体格も、パワーも、何もかもゴールドシップのほうが圧倒的だ。

 

「妹が可愛いならもうちょっと気を使ってあげるべきだと思うの? 一緒にご飯食べようっていえばこんなことにならなかったのに」

「指食い込んでる! みぎゃあああああ!!!」

 

 そのままゴールドシップは食堂から外に出て、ダートコースに行くと……

 

「そおぃ!!!」

「みぎゃっ!!!」

 

 ドリームジャーニーをダートコースに突き刺した。

 かつてスピカでの名物だった、ダートに埋めるぞ、である。

 過去から戻ってから10年以上、一度もやったことがなかったが、魂が覚えていたようだ。非常にスムーズにドリジャのアネキをダートに突き刺すことができた。

 

 まあ、結局八つ当たりでしかないのだが。

 そのまま突き刺さったドリジャのアネキを放置したゴールドシップは、

 

「オルフェーヴルお姉さま、明日から、お昼一緒に食べましょうね」

 

 と、オルフェのアネキと食事を一緒に取る約束をするのであった。

 ついでに朝晩も、トイレ飯をしていないか、確認する必要があると認識したゴールドシップであった。

 

 

 

 この事件により、ゴールドシップはドリームジャーニーを上回るスクールカーストトップと周りから認識される。

 それに加え、問題児の姉二人に比べ、成績もよく、上品な彼女により学園が落ち着くことを期待する教官やトレーナーも多くいた。

 

 それに対してイクノディクタス教官は、こう述べている。

 

「学園が騒がしいのは昔からずっとです。それに、ゴールドシップは三姉妹の中で一番騒々しいですよ」

 

 気性のまま暴れるドリームジャーニー、恥ずかしがり屋でラインを超えると暴走するオルフェーヴルに比べ、ゴールドシップは確かにそうそう暴走することはない。

 だが、その胸に秘めた情熱は、二人を上回るものなのだ。

 更にその知性と行動力が合わさればどうなるか。

 

 上品で優秀なウマ娘と認識されたゴールドシップだが、

 すぐにあの姉二人の妹だと認識され、

 更に姉の方が可愛いものだったと認識されるのは、そう遠い話ではないかもしれない。

 




見切り発車の不定期更新になる予定です。

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