黄金船の長い旅路 或いは悲劇の先を幸せにしたい少女の頑張り   作:雅媛

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黄金船の日常

トレセン学園の新入生にとって最初の目標は、入学3か月後にある選抜レースである。

最終的にはトゥインクルレースの大舞台で走り、栄冠を手にすることが目標だが、それまでには何段階もステップがあるのだ。

そして、レースに出るには自分に合うトレーナーを見つける必要があり、自分に合うトレーナーを見つけるには選抜レースで走るのが手っ取り早い。

また、選抜レースはトレセン学園で初めて行われる準公式レースである。

そんなレース自体を楽しみにしている新入生も非常に多いのだ。

 

とはいえ、トレーナーを見つけるという目的だけなら、何も選抜レースに頼る必要は必ずしもない。

自分の脚で情報を稼いで、トレーナーに申し込むもよし、姉妹や親族に関係者がいればそこから紹介を受けるのもよし、何でもありなのである。

 

「ゴルシちゃん、うちのチーム見学に来る?」

 

オルフェのアネキが昼食時、そんな話を提案してきたとき、ゴールドシップは素直に頷いた。

オルフェのアネキも、ドリジャのアネキもミモザという同じチームに所属している。

なんだかんだであの気持ちが変わるのが激しいドリジャのアネキが長い期間同じチームに所属しているのだから、興味がかなりあった。

 

「え、本当に行くつもり!?」

 

オルフェのアネキに同席し、アネキの口の周りを吹いてあげているトーセンジョーダンがそんなことを言う。相変わらずオラつくウマ娘である。

だが蹴とばそうとするとオルフェのアネキに「めっ!」って言われるのでそれも難しかった。

 

「なんだよー、文句あるのかよー」

「いや、ないけど…… ミモザはいろいろあるっていうか……」

 

口ごもるトーセンジョーダン。何かあるのかよくわからないがオルフェのアネキをチラチラ見ている。あまり良い話ではないのかもしれない。

さすがにチームメンバーの前でそのチームの悪口は言い難いのだろう。

まあ、どうせ見学、そこから進んだとしても体験入部もある。心配はないだろう。

 

「お姉さま、友達を連れて行ってもいいですか?」

「そんな一杯じゃなきゃ大丈夫」

 

ただ、トーセンジョーダンは善良なウマ娘なのは間違いなく、嘘や嫌がらせで思わせぶりな態度をとっているとは思えない。何か懸念があるのは間違いないだろう。

一応誰かを連れて行こう、ゴールドシップはそんなことを考えたのだった。

 

 

 

「ということで、みんなでミモザに見学に行こうぜー。体操着でコースに3時集合な」

「芦毛のかわいい子いるかな?」

「ゴルシちゃんだけでも十分だろ」

「確かに」

 

早速仲良くなったジャスタウェイに声をかけたら、すぐに同行を承諾した。

 

「お嬢も行こうぜ」

「あなたにお嬢といわれると複雑なんですが……」

 

ジェンティルドンナに声をかけると複雑そうな表情をするが、耳と尻尾は正直で、興味はあるようだ。

血統的にメジロ系のゴールドシップと、そこまで特殊な何かではないジェンティルドンナでは、確かにゴールドシップのほうがお嬢様だろうが、立ち振る舞いとか、存在感とか、あとその胸部は豊満だったりすることを考えれば、お嬢様っぽさはジェンティルドンナのほうが圧倒的だ。

だからお嬢なのである。クラスでも徐々に根付き始めているニックネームだった。

 

「私が行ったら、鰤大根にされないですかね……」

「いや、さすがにされないだろ……」

 

ディープブリランテが謎の懸念を口にする。

ブリちゃん、体格は他の3人にも劣らない高身長でいい体格をしているのだが、かなり気弱なウマ娘だ。

だが、鰤大根にはされないだろう…… なんだその懸念……

 

「ほら、ブリランテも一緒に行ってみましょう。入るかとかはあとで考えるにしても、先輩方の走りはきっと参考になるわ」

「お嬢がそういうなら……」

 

ジェンティルドンナの提案に、ブリちゃんも一緒にチーム見学に行くことになったのであった。




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