黄金船の長い旅路 或いは悲劇の先を幸せにしたい少女の頑張り 作:雅媛
チームミモザ
GⅠウマ娘も輩出しているそれなりに有名なチームだ。
去年の宝塚記念、有馬記念を制したドリームジャーニー、うちのアネキが現在の代表的な所属ウマ娘だろうが、過去は宝塚記念含めたGⅠ3勝したスイープトウショウや、短距離で大活躍したデュランダルなどなかなかの名バがそろったチームである。
そんなチームなはずなのだが……
「うおおおおおお!!!」
トレーナーらしきアラフォーの男性がコースを全速力で走っている。
その後ろを、マスクを外した暴走モードのオルフェのアネキと、同じくすごい形相のドリジャのアネキと、魔女帽に猫耳生やした独特の格好をした、推定スイープトウショウが追いかけている。
併せウマってそういうのじゃないよな、とゴールドシップは困惑した。
ジャスは芦毛を探してきょろきょろしている。
ブリは、「やっぱりブリしゃぶにされるんですねぇ……」と頭を抱えている。
お嬢は茫然と謎の併せウマを見つめていた。
併せウマだか、競争だか、何かだかわからないそれは、推定トレーナーがオルフェのアネキにドロップキックを食らい、ドリジャのアネキに人間魚雷頭突きをうけ、最後にスイープトウショウ先輩に頭からかじられることで終わった。
終わったといっていいのだろうか。何が起きているかわからない。
「あなたが、オルフェちゃんとジャーニーちゃんの妹さん?」
「あ、そうですけど…… あれはいったい?」
「お兄ちゃんに対する愛情表現かな」
「ア、ハイ……」
まだかなり色が濃く黒っぽい芦毛のウマ娘が声をかけてきた。
チームメンバーだろう。芦毛は白くなってからが本格化、なんて言われるからまだ発展途上なのかもしれないが、先輩だろうことは間違いなかった。
「芦毛のお嬢さん、私とデートしませんか」
ジャスがそんなことを言い始める。相変わらずぶれない奴である。
だが、ジャスのナンパの成功率は実はそう悪くはない。
ジャスは身長が高くて外見がいいし、中性的なので男装の麗人っぽいのだ。
ウマ娘には人気が高いタイプである。
「あはは、カレンチャンをデートに誘うには、まだ力不足かな。お嬢さん♪」
だが、その芦毛のウマ娘、カレンチャンはそう言って人差し指でチョン、っとジャスの鼻先を触る。何と言うか、アクションがいちいちかわいいというか、あざといというか。
「ゴルシさん、カレンチャンですよカレンチャン!!」
「知っているのかライデン!?」
「ライデンじゃないけど知っていますぅ!」
ブリちゃんが興奮して早口で説明をし始める。
お嬢もジャスも知らなかったようなので一部だけの人気だろうが、ネット界のウマドルらしい。
確かに何と言うか、見た目が可愛いのもあるが、動きがいちいち計算されててかわいらしい。あざといともいえるが、それもまたいいのだろう。最低でもゴルシちゃんにはまねできない可愛さだった。
「そして、カレンチャンの恋人、ロードカナロア様だ!!」
「カナロアちゃん?」
「なんだいマイハニー」
「そぉい!!!」
そんなカレンチャンと話していると、急に話に割り込んできたウマ娘が現れた。ロードカナロアと名乗った彼女は、カレンチャンにアイアンクローを食らい、そのままダートに突き刺された。
「あの、チームメンバーじゃないのですか?」
「カナロアちゃんはうちのチームじゃないし、単に付きまとってくるストーカーだから放置でいいよ。トレーニング終わったら焼却炉で燃やしておくから」
笑顔でそんなことをを言うカレンチャン。きっとウマドルは大変なのだろう。突き刺さっているウマ娘は気にしないことにしたゴールドシップたちであった。