黄金船の長い旅路 或いは悲劇の先を幸せにしたい少女の頑張り 作:雅媛
ゴールドシップとメジロマックイーンは、毎週末土曜日、二人で出かける。
ゴールドシップがメジロマックイーンに、お詫びとしてスイーツを奢るためだ。
最初に出会った日にゴールドシップがしてしまったことは、翌日にお詫びとしてスイーツを奢ったことで無事和解した二人。
だが、その後もゴールドシップのメジロマックイーン構いは続いた。
最初のように、授業や行事、トレーニングに遅刻するようなことはしなくなったが、それ以外がひどい。
当たり前のようにマックイーンのベッドにもぐりこんだと思ったらベッドから鳩を出したり。
当たり前のように食堂で隣に座ったと思ったらデザートのプリンを最高級ウニにすり替えて、醤油を引けばプリンになるから、と言い始めたり。
当たり前のように一緒にお風呂に入ってきて脱出マジックとか言い始めたと思ったら、お互いの尻尾を結んでほどけなくなったり。
やったことは完全にストーカーだった。
ゴールドシップにも言い分はあった。
まずマックイーンが可愛すぎるのが悪い。
これでも授業中や昼食時、トレーニング時間は邪魔してないから我慢している方だ。
何の言い訳にもなっていなかった。
当然マックイーンは切れた。
マックイーンが怒るたびにゴールドシップはスイーツを奢ることで和解をしてきた。
それが慣習化し、毎週土曜日は「ゴールドシップがメジロマックイーンにスイーツを奢る日」として定着した。
その状況にゴールドシップはこういった。
「反省も後悔もしていない。もっとやりたい」
マックイーンは泣きたくなった。
このスイーツだけはゴールドシップは毎回本気で選んでいた。
一度ふざけて茶碗蒸しをプリンと言い張って食べさせたらマックイーンがガチギレした。
ヒトは本当に怒った時、表情がなくなるというのをあの時はじめて知った。
一週間、部屋に入れてもらえずに廊下で寝ることになった。
もう二度とスイーツでふざけることはしないと心に誓った。
いや、もう一度プリンをウニにすり替えたが。
この時も三日ほど部屋に入れてもらえなかった。
今回食べに来たのは某有名ホテルのパンケーキである。
某政治家も好むというそれは季節ごとにトッピングが変わるが、ゴールドシップ達が行った時はイチゴがメインだった。
マックイーンは甘いものなら何でも好きだが、特に好きなのはクリームとイチゴとふわふわしたものだ。
だからマックイーンが選ぶケーキはショートケーキが鉄板である。
逆に苦いものは苦手で、チョコレートはあまり得意ではないようだ。
チョコレートケーキが学食で出たときは少しションボリしていた。
柔らかく、しかししっかりと焼かれたパンケーキに、たっぷりのクリーム。
イチゴのソースにイチゴのジャムに生のイチゴとイチゴのコラボレーションで飾られたそれは、さすが有名ホテルといわんばかりのキレイな盛り付けであった。
それを一口ずつ、味わって食べるマックイーン。
すさまじく幸せそうである。
ゴールドシップも食べながら、同時にマックイーンの写真を撮っていた。
フラッシュは使わない。目が眩んだら、せっかくスイーツを楽しんでいるマックイーンの笑顔が一瞬曇るからだ。
目を発光させ、手のひらも発光させて影ができないようにライティングしながら、マックイーンの最上の笑顔を写真に写し込んでいく。
タキオン博士もいいものを発明してくれた。これで好きなタイミングで好きにライティングができる。
ゴールドシップはアグネスタキオンに感謝した。
綺麗に切ったパンケーキを口に運ぼうとする真剣な表情は、まるで芸術のように美しく。
クリームが口に入る瞬間のその口元は、なぜか極めて官能的で。
美味しそうに頬張る姿は、とても可愛らしく。
マックイーンのあらゆる表情を、ゴールドシップは撮影し続けた。
これだけでゴールドシップはお腹いっぱいである。
ゴールドシップは結局自分のパンケーキは一口しか口をつけず、残りはマックイーンにあげることとなった。
ちなみにこうやって撮影された写真は、ゴールドシップからメジロマックイーンファンクラブに流される。
ファンクラブからは、お金とともにスイーツや名所の情報がゴールドシップに回ってくる。
そのお金と情報をもってゴールドシップはマックイーンを毎週土曜日連れ出す。
完全な循環がここに成立していた。
ゴルマクはもっと書きたいところなのですが、ストーリー上メインになるのはおそらくかなり後です。
次はスズカ編に入ります。
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