黄金船の長い旅路 或いは悲劇の先を幸せにしたい少女の頑張り 作:雅媛
「ということで、ボクがチームミモザのトレーナーの沼添だ。よろしく、ッて痛たたたたた!?」
「がるるるるるるる」
「スイーピーちゃん、押さえて押さえて」
笑顔でゴールドシップたちにあいさつしたトレーナーに、スイープトウショウが物理的に嚙みついた。
気性難のゴルシちゃんと言えどもここまでひどくはない。
何が彼女をここまで駆り立てるのだろうか。
一瞬スイープトウショウを引き離そうとしたカレンチャンだがすぐに諦めた。
おそらく日常なのだろう。
「スイーピーちゃん、パパが大好きだからほかのウマ娘と会話していると、嫉妬しちゃうんだよね……」
「大好きじゃないし! 大嫌いだし!!」
「パパ泣いちゃうよ!?」
「……パパ?」
ゴールドシップたちは首をかしげる。
「トレーナーさんとスイーピーちゃんは実の父娘なんだよ」
「珍しいですわね……」
父親がトレーナーというパターンはそれなりに多いが、お嬢の言うように担当を受け持つというのはレアケースだろう。親子の情が入るのを嫌うためだ。
そのため、一瞬パパ活的なパパがよぎったゴールドシップは口に出さなくてよかったと内心で思っていた。口に出した瞬間、あのスイープトウショウの牙はこちらに向きかねない。
「あれ、でもカレンチャンさんは、トレーナーさんのことをお兄ちゃんって言ってましたよね? ということは、カレンチャンさんはスイープトウショウさんのおば「カレンチャンはみんなの妹だからトレーナーさんのことをお兄ちゃんって呼んでるだけだよ」アッハイ」
余計なことを言いそうになったブリちゃんがカレンチャンに睨まれる。
お前、鰤大根にすんぞ、と言わんばかりの視線である。
というか、ゴルシちゃんの後ろに隠れるんじゃない。カレンチャンの視線が怖すぎんだよ。
「さて、すまないが見学に来てくれた諸君、自己紹介してくれないか?」
スイープトウショウを頭にくっつけたトレーナーが仕切り直して、そんなことを聞いてきた。
身替りの早さにビビりながら、こちらも自己紹介を始める。
「ゴールドシップです。ドリームジャーニーのお姉さまと、オルフェーヴルのお姉さまがいつもお世話になっております」
「ジャスタウェイ。世界一のウマ娘になる予定だぜ」
「ジェンティルドンナです。今日は一日よろしくお願いします」
「ディ、ディープブリランテですぅ」
「なるほどなるほど。今日は見学って言ってたけど、どうせだからウチのトレーニングに付き合ってくれよ」
「いいですけど……」
見学だし見ているだけかと思ったが、トレーニングまで見てくれるらしい。
「じゃ、ブリランテちゃんは、カレンチャンに頼むわ」
「まかされたよ」
「ひっ」
カレンチャンがブリちゃんの手を引く。
ブリちゃんのほうが体格はいいのだが、その姿は市場へ向かう牛かなにかのようだ。
「照り焼きにされたら、おいしく食べてください……」
ブリちゃんはそんな遺言を残してカレンチャンに連れていかれた。
芦毛が居なくなったジャスは明らかにやる気を失っていた。
「ジャーニーとオルフェはドンナちゃんと走って来い。できれば潰れない程度でな」
「任せろ」
「よろしくお願いしますわ……」
ゴルシちゃんの本性を知っているお嬢は、ゴルシちゃん以上のやばさを醸し出す姉二人に警戒しながらついていった。
「スイーピーはジャスちゃんにいろいろ教えてやってくれ」
「仕方ないわね」
「お手柔らかに」
外面モードになったジャスがスイープトウショウについていく。
「ゴルシちゃん余ったんだが?」
「ゴルシちゃんはボクがみてあげるよ」
ゴールドシップはトレーナーさんの担当となったようだった。
ゴルシちゃん以外の3人の話をどこまでやるか
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ブリちゃんが鰤大根になるまで
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ドンナにオルフェが吹き飛ばされるまで
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ジャスちゃんが爆発するまで
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いいから先に進めよう
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全部だ……