黄金船の長い旅路 或いは悲劇の先を幸せにしたい少女の頑張り 作:雅媛
「で、トレーナーさん、誰をスカウトしようと考えているんだ?」
ゴールドシップは率直にトレーナーに聞いた。
どいつもこいつも、才能あふれまくっているウマ娘だ。
欲張りなトレーナーなら「全部だ」と言いかねないぐらいいい子がそろっている。
ミモザは全体的に闘志あふれるウマ娘が多いし、そう考えるとやっぱりお嬢だろうか。
ブリはまじめだが気が弱いし、ジャスは何考えてるかわからないところがある。
ゴルシちゃんも、姉二人のように闘志バリバリで走るタイプのウマ娘じゃない。
そんなことを考えていたが……
「んー、たぶん誰とも契約しないんじゃないかな」
トレーナーはあっけらかんとそんなことを言った。
「はぁ!? 目ついてるのかよ!? お嬢もジャスもブリもすげーウマ娘じゃん!!」
「そりゃそうだ。みんな震えるぐらい才能にあふれてるね。でもうちじゃない」
「なんでだよ」
別にここに誰かが絶対入ってほしいわけではない。だが、誰も選ばないというのはゴールドシップには意外過ぎた。
「うちみたいな、短距離専門チームに向いてる子がいないよ。だってみんな長距離に向いてそうだし」
「いやいや、おたくの娘さん普通に中距離だったよな?」
スイーピー先輩が勝ったのは秋華賞、エリザベス女王杯、宝塚記念。全然短いレースじゃない。
過去所属していたらしいデュランダル先輩や、ブリを連れて行ったカレンチャンは短距離っぽそうだが、うちの姉二人だって中長距離向きだし、全然短距離のチームっぽくないのだ。
「あれは、スイーピーが気性難過ぎて、うちでとるしかなかっただけだよ」
「どんだけ暴れたんですかあの人」
トレーナーが遠い目をする。
父親だからって責任取らされるぐらい暴れたようだ。
「で、そしたらほかのトレーナーが持て余した子がちょくちょくうちに来るようになっちゃって」
「二人とも私の姉ですけどね!!」
あの二人が何をやらかしたか。まあ妹の自分ならよくわかる。やべーことである。
「ん、でもそれなら、ゴルシちゃんはいかがですか?」
「パス!」
「そんな断言しなくてもー」
「そもそも君の姉二人にしたって、ボクは全く適当じゃないんだ。なんせもともと短距離専門だからね。だけど、ボクより適当なトレーナーが居なかったという消去法に過ぎない」
「アネキぃ……」
あの二人、そこまで持て余されていたのか。まあ、そうだろう。うん、疑いはないが現実がつらいというだけである。
「その点キミは、気性難だとしても賢いからね。きっともっと合うトレーナーが居るよ」
「ですかね」
「キミだって、ボクにビビッとこないだろう? そういう直感は大事にした方がいい」
そんなもんだろうか。
まあ確かに、ミモザトレーナーにはビビッとこない。もっと人生面白くなさそうにしてるやつのほうがゴルシちゃんの好みだ。ミモザトレーナーはちょっと頼りなさそうだがとても楽しそうである。
遠くを見ると、コースを姉二人とお嬢が爆走している。姉たちよりお嬢のほうが一回り大きく、遠近感がおかしくなりそうである。
コーナーリングでオルフェのアネキがお嬢に体当たりを食らって吹き飛ばされた。
お返しとばかりにドリジャのアネキがお嬢に体当たりを仕掛けるがお嬢はびくともしない。
いつの間にかコース上の荒々しい戦いになっている。
「あれ、良いんですか?」
「んー、楽しそうだねぇ」
「あれ止めないといけないのトレーナーさんですよ」
オルフェのアネキは闘志120%になってるし、お嬢も普段の優雅さをかなぐり捨てて闘志バリバリである。ドリジャのアネキは若干引いている。
ゴール過ぎても二人は全然止まる気がしない。
止めるなら生贄が必要だろう。
ミモザのトレーナーは二人を止めようとして跳ね飛ばされた。
走るウマ娘の前に飛び出してはいけません。
「自分のトレーナーか」
ゴールドシップは悩んでいた。
かつての現役時代、ゴールドシップはトレーナーを何度も変えていた。
誰もしっくりこなかったのだ。
誰かあっているトレーナーはいないだろうか。
こちらから探して見つけ出すべきか。
そんなことを考えながら、他の三人を連れてゴールドシップは帰るのであった。
「いたたたた、あのお嬢様、あたり強すぎだろう…… で、上手くいった?」
「わからないけど、やれることはやったわ」
「カレンも、いうべきことは言えたと思う」
「しかしもどかしいな、直接何もできないのは」
「しょうがないんじゃない。姉といっても、できることは限られてるよ」
「そうなんだけどさ」
「トレーナーも協力してくれたんだし、きっと大丈夫でしょ」