黄金船の長い旅路 或いは悲劇の先を幸せにしたい少女の頑張り   作:雅媛

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レースの後で

「久しぶりに走ったけどやっぱり気持ちいいわね。もう少し走ってくるわ」

 

それだけ話して、スズカはどこかへ走り去ってしまった。

やっぱりスズカはスズカであった。

 

残された三人は水分補給をしながら、チームルームへと戻る。

 

「ということで、チームリーダーはジャスタウェイに決まりだな!!」

「はぁ!?」

「負けたからには二言はないわ。あなたがチームリーダーよ!!」

「ちょ、ちょっとまって!?」

 

そうして民主主義の名のもと、多数決の暴力によって、ジャスタウェイはスピカチームリーダーを押し付けられようとしていた。

 

「ジャスちゃん、スピカに入るなんて言ってないし……」

「ジャス、入らないのかよ!?」

 

ゴールドシップがショックを受け、しょんぼりした上目遣いでジャスタウェイの袖の裾をにぎってくる。

あざとい態度だ。こういうのにジャスタウェイが弱いのを分かってわざとやっている。

そして、わざとやっているのをジャスタウェイが気付いているのまでわかってやっている。

ゴールドシップはとてもずるいウマ娘なのだ。末っ子気質は伊達ではない。

 

「えっ、入ってくれないの?」

 

一方ブエナビスタは本気でショックを受けているようだった。

強がっていてもソロチームはメンタル的に辛かったのだろう。

二人も入ってくれると内心喜んでいた彼女にとっては意外な状況である。

それに気づいたジャスタウェイの良心が痛んだ。

 

「なあ、入るだろう?」

「ねえ、入ってくれないの?」

 

両側から挟まれて、ジャスタウェイは逃げ場を失った。

 

「は、はいりましゅぅ」

 

ジャスタウェイは完全に押し負けたのであった。

 

 

 

「でさ、チームに入るのはいいけど、実際何するのさ。トレーナーどっかに走って行っちゃったし。いつ帰ってくるの?」

「うーん、久しぶりの暴走だから門限まで帰ってこないと思うわ」

「職務放棄じゃん」

 

スズカはすでに走り去ってしまった。きっと今頃楽しく走っているだろうし、帰ってくるのはおそらく門限を過ぎてからだ。

暗くなったら帰るという発想はスズカには存在しない。星空は綺麗だからだ。

 

「ブエナ先輩、何するんですかー」

「何すると聞かれても…… 私も普段一人で練習していることが多いからわからないわ」

「完全機能不全チームじゃん!?」

「明日はきっと沖野元トレーナーが見に来てくれるから大丈夫よ」

 

大丈夫じゃないし、これどうすればいいんだ。ジャスタウェイは途方に暮れた。

 

「ふっふっふ、お困りかな、スピカリーダー」

「すごい困ってるよ、ゴールドシップ」

「では、元スピカチームリーダーにしてサブトレーナー、宣伝担当だったゴルシちゃんがいろいろ教えてやろう」

「入って一日目なのに経歴と肩書が多すぎる……」

 

ゴールドシップが言うことが理解できないのはいつものことだ。ブエナビスタは困惑したが、ジャスタウェイは軽く流した。

 

「スズカからすでにメールで指示は受けている。今日はタキオン研究所で身体測定だ」

「え、なんで母さんのメールアドレス知ってるの!? 後走ってることに集中してる母さんにどうやってメール読ませてるの!?」

「疑うのかよ。ほら」

「本当に返事来てる!!」

 

ブエナビスタは驚いていた。サイレンススズカというウマ娘は、いくつになっても走りジャンキーである。走っていたら止めようがない。止められるのはスぺ母さんのスぺドライバーだけであった。

メールなどの連絡をしても当然回答が来ないのだが、なぜかゴールドシップには回答が来ている。

 

「コツは五連打メールだ。ア・イ・シ・テ・ルのサインだな」

「スぺ母さん!! スぺ母さん!! スズカ母さんの近くに変なのがいるよぉ!! 助けて!!」

「ブエナ先輩」

「ジャスちゃん……」

「諦めが肝心ですよ」

 

慰めに見せかけたジャスタウェイのとどめで、ブエナビスタの目は死んだ。

 

「ということで、今日はこれから身体検査、明日は歓迎会ライブだからな!!」

「はいはい、頑張ろうね」

 

歓迎会ライブってなんだ、とジャスタウェイは思ったが、いつものわけわからない発言だろうとスルーした。それを彼女が後悔するのは明日のことであるが今は関係ない。

 

「スぺ母さん…… 助けて」

 

ブエナビスタは死んだ目をして北の大地にいる母に助けを求めていた。




ライスちゃんの短編も書いたから読んでね(ダイマ)
トレーナーである貴方とライスシャワーの日常
https://syosetu.org/novel/290416/
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