黄金船の長い旅路 或いは悲劇の先を幸せにしたい少女の頑張り 作:雅媛
メジロ家のみんなと一緒にコスメを見に行くことになった。
なんとなくマックイーンが雑誌を見ていると、学園の近くに可愛らしいコスメショップができたことが載っていた。
マックイーンも年頃の少女である。
基本スイーツばかりが頭にあるが、こういったおしゃれにも興味があった。
ただ、一人で行くのは怖すぎる。全くこういうものに知識がないからだ。
なのでメジロ家の面々、ライアンにドーベル、パーマーを誘っていくことにした。
そして何をどう聞きつけたのか、当然のようにゴールドシップもついてきた。
メジロのご令嬢4人にゴルシ1人という組み合わせでコスメショップに来たが、令嬢4人はすぐにどうしていいかわからなくなった。
筋トレしかしていないライアンに、男嫌いで社交性のないドーベル、走ることしかしていないマックイーンとパーマーでは、こんなキラキラした世界、何も理解ができなかった。
三人寄れば文殊の知恵というが、0はいくつ掛けても0であった。
そんな中、活躍するのがゴールドシップであった。
店員さんに何か言うと、店員さんと二人で4人に化粧を施し始めた。
4人並んで座らされ、あれよあれよと何かを塗られていく。
時々何かを聞かれる。
マックイーンはスイーツみたいな名前だな、と思った。
ライアンはトレーニング器具みたいな名前だな、と思った。
パーマーはダイタクヘリオスが良くしゃべるパリピ語みたいだなと思った。
ドーベルは話しかけられて目を回していた。
誰一人として、店員とゴールドシップの言っていることを理解できなかった。
そうして出来上がった四人の顔は美しかった。
もともと皆、ウマ娘ゆえ顔が整っているし、育ちが良いのでそれもにじみ出てきれいな娘達である。
ただ、化粧をするとそれがより栄える。
マックイーンはよりお嬢様っぽくなったし
ライアンは女性っぽさが増した。
パーマーはゆるふわ美女になり、
ドーベルはちょっときりりとした美麗さが増した。
その出来に、店員さんとゴールドシップは満足げにうなずいた。
普段は皆走るばかりだが年頃の少女である。
キャッキャッキャッキャとお互いのことをしゃべり、写真を撮りあい、楽しい時間が流れる。
マックイーンが少しゴールドシップから目を離すと、奥から一人の女性が出てきた。
流れるような葦毛
人形のようにひどく整った顔立ち
少し切れ上がった目
なんてことはない、頭の飾りを取ってかなりしっかり化粧をしているが、ゴールドシップであった。
マックイーンは思った。
黙っていれば本当に美人だなと。
またこんなことも思った。
自分と顔がかなり似ているなと。
もしかしたらメジロの傍流とかなのだろうか、と。
あとで調べてみようと思いながら、マックイーンはゴールドシップに声をかけた。
「ゴールドシップ、あなたもすごくきれいですよ」
ゴールドシップは驚いた顔をした。
ライアンも、パーマーも、ドーベルも驚いた顔をした。
マックイーンは失礼な、と思った。ゴールドシップと付き合うのは面倒だし大変だが、感謝している側面もある。
それに綺麗と思ったら綺麗と褒める、それくらいの素直さは自分だってあるのに、と。
しかし、何かがおかしかった。
「ゴールドシップ? どこにいらっしゃるんです?」
「ゴールドシップなら奥に行ったままもどっていないじゃない」
「マックイーン、大好きなゴールドシップがいないからって幻覚見てるんじゃない?」
なかなかひどい言い回しである。
びっくりするぐらい印象が変わった化粧とはいえ、間違えるほど変わっていないだろう。
「ほら、これがゴールドシップですよ?」
「ゴルシちゃんはマックイーンにお褒め頂き光栄だZE!」
しゃべればもう一発でわかるだろう。しゃべり方も声もゴールドシップそのものなのだから。
しかし、3人の反応は芳しくない。
目の前の女性を認識はしている。
声も認識している。
顔だって認識している。
だがそれがゴールドシップと認識できていない。
そんな感じである。
ふざけているのかとも一瞬思ったがそれも違いそうだ。
パーマーはノリが良いので周りがそうすれば乗る傾向にあるが、根が素直でお堅いのでこういうことを率先してやることはない。
ライアンは質実剛健実直を体現したようなウマ娘ゆえ、こういう悪ふざけは苦手だ。
ドーベルは多少揶揄うことはあってもこういうことは苦手である。
そもそも、今のマックイーンはかなり焦った表情をしている自覚があった。
優しい三人はこういう時にまでふざける性格じゃない。
現に三人も、マックイーンが焦っているのを察して焦っているが、なんでマックイーンが焦っているか、まったくわからないようだった。
ゴールドシップは一瞬悲しい顔をすると奥に戻っていき、化粧を落としいつもの被り物をして戻ってきた。
三人は嬉しそうにゴールドシップにお礼を言いながら、各々気に入った化粧品を買っていた。
何かがおかしい、マックイーンの胸はざわめいた。
マックイーンはゴールドシップについて、同室ながらよく知らなかった。
調べ始めると不思議なところがいろいろあった
チームはスピカ所属。
しかし学年は不明。当然クラスも不明。
不明ってなんだ。学園側の職員でサブトレーナーか、という考えも一瞬よぎったが、現役の学園生でないと栗東寮には入れない。だからそうではないはずだ。
出身も不明。実績等も不明。
全く訳の分からない存在だった。
あのゴールドシップだからしょうがない、という考えが何度かよぎり、それがまた胸をざわめかせる。
しょうがない、ってなんだ。
非開示じゃなくて、データ上不明と出るってどう考えてもおかしい。
学園側のミスならば、報告するべきだし、しょうがないとはならないだろう。
頭がひどく痛んだ。
スピカの沖野トレーナーにも聞いたが彼は一言、「精霊ウマを調べてみろ」と言うだけだった。
何かを知っているのだろう。ただ、あんな悲しい顔をしてそれだけしか言わないのだから、言えない何かがあるのだろうと思い、それ以上は聞けなかった。
精霊ウマについては学園の図書館で調べたが何も出てこなかった。
ならばとゴールドシップがメジロの血縁では、と思いメジロ家の家系を調べることにした。
おばあさまにすべてを話す。特に後ろめたいことをしているわけでもないし、おばあ様はウマ娘業界の大御所だ。
何か知っているだろう。そう思って聞いたのだが……
「一度、ゴールドシップさんを連れてきなさい」
それだけを言われた。
彼女以外は誰も気づけないそれに彼女は気づいた