黄金船の長い旅路 或いは悲劇の先を幸せにしたい少女の頑張り   作:雅媛

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玄孫と高祖母のじゃれあい

「意味が分からないんだZE ゴルシちゃんはここにいるんだZE」

「ふふ、メジロ家存続を願うと思いましたか?」

「……」

「玄孫、かしらね。大事な子の命と比べれば、家なんて何でもないわ」

「……」

「納得してない顔ね」

「帰れって言われて帰るほど覚悟は浅くない」

「それはわかっています。でも、私は帰ってほしい。あなたに幸せに生きてほしい」

「幸せは私が決める!!」

「わかっています。だから、おばあちゃんのお願いです」

「……」

 

ゴールドシップは本気だ。自分の命を懸けてでも過去に来た。

その覚悟に他人が口を出してほしくなかった。

しかし、目の前の老人は、ゴールドシップのことを愛しい直系として認識し、ゴールドシップの幸せを願っているのもわかった。

 

「私が子供の頃、精霊ウマの娘に会ったことがあります。多分」

「多分?」

「記録には何も残っていません。誰の記憶にも残りませんでした。私だけが覚えていることです。それが正しいことだと、現実のことだと確信できますか?」

「……」

「私が覚えているのは、私が彼女を大好きだったからですね。でも、今は名前も思い出せません」

「……」

 

最期は歴史から消える、という話は三女神から聞いていた。

きっとその彼女も消えたのだろう。

だが、愛か、執念か、彼女はその彼女を断片だけだが覚えているようだ。

 

「風にたなびく桜色の髪を今でも覚えています」

「……」

「とてもきれいなヒトでした。それだけではなくとても優しい人でした。春の日差しのように、とても和むヒトでした」

「……」

 

繋ぎとめるように、振り絞るように、老人は言葉を重ねる。

 

「速く、賢く、少し天然で、まさに理想のようなウマ娘でした。彼女によって何が変わったか、正確なところは結果しか見ていない私にはわかりませんが、彼女のおかげで私も、メジロ家の皆も幸せになりました」

「……」

 

遠くを見る目はしかし何も見えてないように思えた。

顔すら覚えていないのかもしれない。断片的な記憶すら必死に記憶の底から絞り出そうとしているのかもしれない。

 

「私の初恋でした。しかし彼女はいなくなりました。そこにぽっかりと穴があるのに、誰も彼女を覚えていませんでした。そこにぽっかりと穴があるのに誰も疑問にも思いませんでした」

「それでも私は、皆を幸せにする」

「あなたも優しい子ですね。ですが、今は今の子たちのものです」

「傲慢といわれようと、自己満足といわれようと、間違いといわれようと私は迷わない」

 

強く老人を睨みつけるゴールドシップ。

さすが年の功だ。言っていることはすべて正しかった。

だが、ゴールドシップは譲るつもりはなかった。

少しの間のにらみ合い。

声を上げたのは老人の方だった。

 

「……まったく、誰に似たんだか」

「たぶんおばあ様ですよ」

「そうでしょうね。血は争えません」

「話はこれだけですか」

「もう一つ、お願いがあります」

「聞くかどうかはわかりませんよ」

「おばあちゃんには優しくしてほしいわ」

「で、なんですか?」

「あなたの通う学園に桜色の髪のウマ娘がいるはずよ。彼女について教えてほしいの。来週ぐらいに報告してくれないかしら?」

「報酬は?」

「あなたの尊敬するアグネスタキオンの研究をメジロ家も大々的にバックアップするわ。特に資金的にね」

「……わかりました。では、来週また参ります」

 

良く調べている。ゴールドシップはそう思った。

ゴールドシップは立ち上がる。

老人の出した条件は、ゴールドシップの目標に合っていた。

メジロ家といえばウマ娘の健康の研究の第一人者の組織でもある。そのバックアップはありがたいので、引き受けることにした。

そして立ち去る前に扉の前で振り返る。

 

「最後に一つ」

「なにかしら?」

「私もマックイーンも、上品なお菓子より、クリームたっぷりでイチゴたっぷり、チープなぐらい甘いふわふわなケーキが好きです」

「次はそういうのを用意しておくわ」

「あと飲み物は紅茶より薄目で軟めのはちみつがいいです」

「その組み合わせ、甘すぎない?」

 

くすくすと笑う老人を背に、ゴールドシップは退室をした。




愛ゆえに譲れない
彼女も、そして私も
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