黄金船の長い旅路 或いは悲劇の先を幸せにしたい少女の頑張り 作:雅媛
桜色の髪をしたウマ娘はすぐに見つかった。
というか、既に知っていた。
ハルウララだった。
スぺの同級生であるキングヘイローと同室の彼女はよくよく考えれば異質だった。
トレセン学園というのはエリートウマ娘の集まりだ。
最低限の足の速さを求められるが、彼女の速さは明らかにそれを下回っていた。
かといってバックを目指して入学した、というようにも見えない。
頭の出来もあまり良いわけではない。キングヘイローや友人が良く勉強を教えていた。
そしてあの桜色の髪だ。
染めているわけではない、きれいなピンク色の髪。
ウマ娘では基本的に見ない色だった。
もっともタキオン博士に聞くと、絶対に出ない色ではないらしい。
白毛よりもさらに珍しく、奇跡的な確率で発生する色らしい。
なので、その色は非常に目立っていた。
そのような髪のウマ娘は、トレセン学園には彼女しかいなかった。
おそらく日本中探しても彼女しかいないのではないだろうか。
「えっほ!えっほ!」
ハルウララは今日も走っている。
真面目ではあるのだ。
授業だってちゃんと聞いている。頭の回転が遅いようだが、頑張って必死に授業についていっている。
周りの助けも得て中の下ぐらいはキープしており、決してできるわけではないが、進級には問題ないラインの成績を維持していた。
トレーニングも毎日真面目にやっている。
ただ、すごく遅い。
ゴールドシップは一応タイムを計ったが、芝600mで40秒以上かかっていた。
トレセン学園での普通なら40秒もかからない。
ゴールドシップの上がり3ハロンは33秒台である。
びっくりするぐらい遅かった。
だが、なんというか華があった。
どんなレースでも楽しそうに走り、レースが終わればどんな順位でもみんなに手を振る。
遅いのだが、それでも見ている人々を和ませる雰囲気があった。
ゴールドシップが見ているのに気づいたハルウララが、駆け寄ってくる。
ぱたぱたと走る感じはとても愛らしい。
「あー、ゴルシちゃん、みててくれたの?」
「おう、ウララ。よく見てたぞ!」
「今日の走りどうだった!? どうだった!?」
「一生懸命走っていたな」
「うん! ウララ、一生懸命走ったよ! 5着だったけど、でもがんばった!」
「そうだな、頑張ってたな」
見ててほっこりとする娘である。
なんというか、原始的な欲求を感じるのだ。
競走というものがなかった時代の、走ることを楽しんでいただけのウマ娘の欲求というものだろうか。
彼女にとって、きっと順位は重要ではないのだろう。
一生懸命みんなで走ることが楽しく、嬉しいのだろう。
ゴールドシップも彼女がどうして人気者になるのか、わかる気がした。
トレーニングが終わると、ウララは商店街へと繰り出す。
そこで商店街のお店の手伝いをするのだ。
アルバイトですらない無償の手伝いのようであり、各所で荷物運びや迷子探し、おばあさんの手を引くなどしていた。
さすがウマ娘だけあって、常人よりは多少パワーがあるが、正直トレセン学園に居るウマ娘と比べるとかなり見劣りをした。
ただ、その一生懸命手伝う姿は商店街の皆さんに好評のようだった。
商店街の中にハルウララ後援会までできていた。
トレセン学園の足下であるはずなのに、買い物に来るぐらいで交流が少ないのは改善するべきかもしれないな、とゴールドシップは感じた。
ウララは手伝いのお駄賃に袋一杯のニンジンコロッケをもらいとてもご機嫌そうだった。
そのまま大量のコロッケを抱えてウララは寮に戻った。
その足で食堂に向かい、知り合いにコロッケを配り始める。
渡す相手も非常に多岐にわたった。
キングヘイローやその取り巻きという名の友人たちなどをはじめ、クラスメイトやスピカの面々、どういう繋がりかすらわからない相手にも配っていた。
大量にあったコロッケはすぐになくなってしまい、ウララ本人は一口も食べていなかった。
それでもみんなにおいしいか聞いて回り、おいしいと答えた相手にはどこで買えるかを宣伝していた。
とても楽しそうで、幸せそうな光景だった。
あの老人が、なぜゴールドシップにハルウララのことを調べさせたか。
ゴールドシップは大体想像ができていた。
一週間後のメジロのおばあ様との面会の場所は学園にしよう。そしてあの子を見せよう。
ゴールドシップはそう思ってじいやさんに電話をかけた。
桜色の彼女はとても幸せそうだった
今も
昔も