黄金船の長い旅路 或いは悲劇の先を幸せにしたい少女の頑張り 作:雅媛
マックイーンはおばあさまに呼び出された。
応接セットのところに座ると、目の前にはふわふわのイチゴショートケーキがあった。
飲み物ははちみつだ。スイーツにスイーツを重ねるという暴虐的な展開にマックイーンの調子は上がった。
しかし、マックイーンにとって少し意外でもある。
おばあさまはあまり甘いものが好きではないと思っていた。
今まで渡されるのはほのかに甘い素朴なお菓子が多かった気がする。
それはそれでマックイーンは嫌いではないが、やはりこの暴虐的な甘さが子供舌なマックイーンは好きだった。
「ゴールドシップさんはいかがでした?」
「とてもいい子でしたね」
「そうですか……」
あのゴールドシップのことだから、何かとんでもないことをしたのではないかと気にしていたマックイーンはひとまず安心した。
「あなたは彼女に好かれているようですね」
「……良くはしてもらっています」
毎日のようにからかわれているが、なんだかんだでいろいろ良くもしてもらっている。
好かれているのかはよくわからないが、彼女を憎めない自分がいるのにマックイーンも気づいていた。
「ほら、こういうのを見ればすぐにわかります」
「……!?」
おばあさまがタブレット型コンピューターを取り出した時、マックイーンは違和感を覚えた。
おばあさまは古い人なので、こういった最新の電気機器は苦手なはずだ。
それを手慣れたように扱い、マックイーンに画面を見せてきた。
そこにあったのはマックイーンの写真だった。
1枚や2枚ではない。数多くの写真が画面には映っていた。
「おばあさま!?」
「ファンクラブだそうですよ。私も会員になってしまいました」
「おばあさま!?」
「とてもよく撮れてますね。あなたのことが本当に好きなんだとわかります」
「おばあさま!?」
「しかし、少し甘いものを食べ過ぎではないですか? 体重管理、できていますか?」
「おばあさま!?」
日記のように、マックイーンの日々の写真が掲載されているファンクラブのサイト。
誰がやってるか、マックイーンはすぐにわかった。ゴールドシップだ。
こんなに毎日自分の写真が撮れるのは、彼女以外にいない。
どうしていいかわからずにマックイーンは目の前のスイーツを食べ始めた。
反対して止めさせたかったがおばあさまがゴールドシップ側についてしまっている以上止めさせる方法がない。
ケーキの舌がしびれんばかりの甘さが体に染みる。気分が落ち着いてくる。
ダイエットは明日からにしようとマックイーンは誓った。
体重はそろそろ微増では済まなくなりつつあった。
「それで、おばあ様、ゴールドシップさんのことですが、何かわかりましたか?」
「そうですね、私の推測も多く含まれますが、彼女が三女神様に導かれた精霊ウマであることは間違いなさそうです」
「精霊ウマ?」
「ウマ娘達を助け、導く三女神様の神子です」
「……」
急に大それた話が出てきて驚くマックイーン。
ただ、彼女は冗談や悪ふざけは多いが、誰かを助けるために一生懸命なのはマックイーンも知っていた。
そういわれてもあまり不思議には思わなかった。
「驚きました?」
「いえ、なんとなく納得しました。それで……」
「それで?」
「ゴールドシップは、どうなるんですか?」
「わからないです」
「わからない……」
「何十年に一度現れるといわれる存在です。情報も何もかも少ないのです。ただ……」
「ただ……?」
「どの物語もすべて、彼女たちが消えていなくなることで、終わります」
「!」
「私の大事な人も、そうでした」
「おばあ様……」
優しく、厳しかった祖母。
いつもしっかりしていた祖母が、そんな遠い目をしているのを見たのは初めてだった。
「あなたも大事な相手なら、全力で追いかけなさい。彼女たちは驚くほど速い。少しでも戸惑えば置いていかれます」
「……はい」
「私は追いつけませんでした。でも、追いかけたその努力は無駄ではなかったと最近やっとわかりました」
「……おばあ様」
「きっとあなたは、わたしよりもっと賢くて、速いウマ娘です」
「そんな……」
「頑張りなさい」
「……はい」
マックイーンは頷いた。
すべてが分かったわけではない。
だが、テレたりしている余裕が全くないことだけは気づいた。
このままだと、彼女が失われる。
その時どう思うのか、目の前の祖母を見ていればなんとなく想像ができた。
「おばあさま、ありがとうございます。学園に戻ります」
「これ、ゴールドシップさんと二人で食べなさい」
「……ありがとうございます」
おばあ様が持たせてくれたのは、クリームたっぷりのイチゴシュークリームだった。
翌日、マックイーンはスピカへと入部した。
その使命は誰のものか
未来を生きる彼女か、過去を生きる彼女か、それとも今を生きる彼女か