黄金船の長い旅路 或いは悲劇の先を幸せにしたい少女の頑張り 作:雅媛
「という事で三日後の歓迎会、ライブやるからこれ覚えておいてくれよ」
「はぁ!?」
「ちゃんと、マックイーンのためにいい曲選んであるからさ!」
「ちょ、ちょっと待ってください!?」
「サンプルデータもマックイーンのスマホに入れておいたからよろしくな!」
「まってっていってるんですー!!!」
マックイーンがスピカに正式加入して三日後
歓迎会をやってくれる、という話はマックイーンも聞いていた。
スイーツが食べられると楽しみにしていたマックイーンを待ち受けていたのは、なぜか野外ライブだった。
トレセン学園には野外ライブ場があり、申請をすれば利用が可能である。
だが、1つしかない上にその使用の優先度はチームの活躍で決まるため、弱小チームであるスピカは基本使えないはずであった。
そう、普通の方法なら使えないはずだったのだ。
「ないなら作ればいい」
ゴールドシップは言った。
「そうだね、モルモット君たちにお願いしよう」
タキオンがつぶやくと、光る謎のウマ娘達が集まった。
「根性で頑張ります!!」
スぺは張り切ってハンマーをふるい、親指をたたいて腫れさせて、スズカに看護されていた。
そうして主にタキオンがお願いしたモルモット君という名のタキオンファンにより、学園の一角、もともと森があった場所に新しいライブ場ができた。
なんせみんな光っているから夜間作業が得意なのだ。
墨俣の一夜城ならぬ、学園の一夜ライブ場が完成した。
「おかしいですわ! おかしいですわ!! ぜったいおかしいですわ!!!」
大事なことなので三度も言った。
なんで歓迎される側が主演でライブをするのか。全く訳が分からなかった。
だがスピカの面々は誰もマックイーンに賛成してくれなかった。
ゴールドシップがゴーを出すと、基本スピカでは誰も反対をしない。
タキオンは悪乗りするし、タキオンが悪乗りすればスカーレットもそのまま乗っかる。
スズカはなんとなくぼーっとしているし、スぺは勢いだけでゴールドシップに流される。
ウオッカだけは気の毒そうにマックイーンを見ていたが、我が身かわいさもあり何も言わない。
そしてトレーナーは不干渉を貫いた。
マックイーンは叫んだが、抵抗の余地はなかった。
マックイーンの生活は、必要最低限以外はライブの練習で埋め尽くされた。
授業すらなぜか免除されてライブの練習に明け暮れた。
何度逃げ出そうとしたかわからないが、その度にゴールドシップのスイーツに釣られた。
最近のマックイーンのお気に入りは、ゴールドシップ特製のイチゴ大福だった。
これを出されると、マックイーンの機嫌が良くなる。そしてもう少しだけ付き合ってあげよう、と折れるのだ。
マックイーンはひどくチョロかった。
そうして当日になると、すさまじい数の人が集まった。
学園のウマ娘だけではない。
近隣の住民も参加し、屋台なんかも数多く出ている。
メジロ家の面々もみな見に来ていた。
会のタイトルは
新野外ライブ場こけら落とし 兼 近隣住民交流会 兼 タキオン研究所・メジロ家技術提携祝賀会 兼 マックイーンのスピカ加入歓迎会
に変わっていた。
「おかしいですわぁああああ!!」
既に「マックイーンのスピカ加入歓迎会」がかなり隅に追いやられていた。
しかし、マックイーンのライブがメインプログラムとして組み込まれたままだった。
マックイーンは叫んだが、何も変わらなかった。
マックイーンは切れた。
本気になったマックイーンを止められる者はいなかった。
ライブで歌と踊りを完ぺきにこなしながら、要所要所でゴールドシップを投げ飛ばし
ケーキ大食い大会でオグリキャップやスペシャルウィークを圧倒して勝利し
最光モルモット決定戦では「メジロの科学は世界一チイイイイ!!」と叫びながら薬も使わずに根性だけでまばゆく輝くことでメジロの技術をアピールし
ゴールドシップ印の焼きそばを15分で完売してついでにゴールドシップを鉄板で焼いた。
ゴールドシップはボロボロになり、タキオンはうるさいからと早々に家に帰った。
スぺとスズカは楽しそうに二人でお祭りを巡って、スカーレットとウオッカはいつものように競うように祭りを回っていた。
マックイーンの騒がしいスピカ加入歓迎会は幕を閉じた。
ウマ娘の楽曲、NexToneに登録されているので、歌詞の記載可能だというのに今気づきました。
まあ今回も使ってないんですが……