黄金船の長い旅路 或いは悲劇の先を幸せにしたい少女の頑張り   作:雅媛

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結果は失敗か大成功か

一週間のプールトレーニング後、結果が出た。

 

「納得いきませんわぁ!!!」

 

マックイーンが叫ぶ。

マックイーンの体重は、さらに増加していた。

原因はいくつかある。

一つは単純にトレーニング効果で筋肉が増えたからである。

マックイーンの利用した高速水流プール、通称洗濯機は、有酸素運動中心で減量効果を狙ったものだが、負荷が高いので筋トレ効果も出ていた。

そのため筋肉がついた分重くなっていた。

もう一つはスイーツである。

ゴールドシップが同じプールに飛び込んだり揶揄うものだから、その度にマックイーンが切れて、お詫びスイーツが積み重なっていた。

ゴールドシップも、食べさせ過ぎじゃないかとうすうす思っていたが、可愛いのでどんどん与えてしまっていた。

一応フルーツ中心にしたり、普通の食事でたんぱく質を多くしたりして栄養バランスに気を付けていたが、当然のようにマックイーンの体重は増えてしまっていた。

 

「しかもなんでお二人は減っているんですの!!」

 

マックイーンが指さしたのは、スズカとスぺである。

他のみんながトレーニングに励んでいる間、スズカとスぺはプールを満喫していた。

波の出るプールで二人で遊んでいたり、ウォータースライダーで遊んでいたり、流れるプールで遊んでいたり、なんにしろ二人してイチャイチャしていただけだった。

それなのに二人とも体重が少し減っていた。

苦労した自分が増えていて、遊んでいた二人が減っているのにマックイーンは納得いかなかった。

指を差されたスズカは答えた。

 

「スぺちゃんがかわいいからよ」

「スズカさん!?」

「意味が分かりませんわ!?」

 

なぜか胸を張って緑色に光るスズカ。

スピカに染まったスズカの言動は徐々にスピカに毒されつつあった。

 

「仕上がりはどんなもんだ?」

「トレーナーさん!」

 

そんな風に騒いでいるところにトレーナーがやってくる。

様子を見に来たらしい。

 

「トレーナー、納得いきませんわ!!」

「なにがだ」

「なんで二人がやせてわたくしが増えますの!」

「いや、マックイーンは普通に甘いもの食べすぎだろ」

「うわーん!!!」

 

トレーナーからの当然の指摘にマックイーンは号泣した。

そのままゴールドシップがまた、洗濯機までマックイーンを抱えていき、二人してかき混ぜられる作業を再開した。

 

「トレーナー君」

「タキオン、みんなの仕上がりはどうだ?」

「スぺ君とスズカ君はばっちりだね。最初遊びみたいなプールを作ってくれっていうから何かと思ったが、こういう風に使えるとは思わなかったよ」

「最後の仕上げは結構悩みどころだったからな」

「データもばっちりさ」

「あとで見せてくれ」

 

レース前のトレーニングというのは沖野トレーナーだけでなくほかのチームでも結構悩みどころだった。

普段は皆ハードなトレーニングをしているのもあるので、レース直前期の追切前には体調を戻すために一定の休養と気分転換は必須である。

だが、そこで完全休養にしては鈍ってしまうし、町なんかに出かけさせるとだいたい暴食をして体重が太め残りになる。

かといってトレーニング場に連れてくると、特にスズカみたいな性格のウマ娘は暴走して走り過ぎて休養にならない。

直前期の追切前、調整に使えるプールとしてこれらを準備したわけだが、今回はかなりうまくいったようだった。

 

もともと走るのが好きなスぺとスズカの二人はかなりオーバーワークなトレーニングをしていた。

その分体も栄養を求めて過食気味だった。

今回ストレスが抜けたことで適正な体重に戻ったのだろう。

 

「ただ、もう少しデータが欲しいね」

「リギルの方にも使わないか打診してみる。そろそろおハナさんへの借りが溜まり過ぎてやばいんだ」

「リギル…… 会長のところか。わかった。私からも会長に話しておこう」

「タキオン、お前、チームメンバー以外と付き合いがあったんだな……」

「失礼だねトレーナー君。会長にはお世話になったからね。借りを少しずつでも返しておかないと」

 

スぺのデビュー戦と、スズカの香港国際カップはうまくいきそうである。

あとの追切は、トレーナーの仕事だ、とトレーナーは気合を入れた。

 

「で、マックイーンはどうなんだ?」

「悪くはないよ。スぺ君と一緒で今までが細すぎたんだ。スぺ君と違って病弱な傾向もあるし、できればゴールドシップ君ぐらいまでは体格を増やしてほしいんだが……」

「その辺りはタキオンとゴールドシップに任せるよ」

「トレーナー君」

「なんだ?」

「仕事したらどうだい?」

「下手に手を出すとゴールドシップが睨んでくるからな。お姫様のことはお任せするよ」

「まったく」

「で、スカーレットとウオッカは?」

「若干仕上がり過ぎになりつつあるから、しばらくは遊ばせた方がいいかもね」

「年末近くには一度選抜レースに出すから、それくらいの仕上げでイメージしてくれると助かる」

「全く、わたしの仕事ばかり増やさんでくれよ」

「でも、いやじゃないだろ」

「……まあね」

 

タキオンは苦笑した。

 

 

 

「そういえば、トレーナー君」

「なんだ」

「私の心配はしてくれないのかい?」

「口は出さない約束だからな」

「……むぅ」

「尻尾でたたいてくるなよ」




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