黄金船の長い旅路 或いは悲劇の先を幸せにしたい少女の頑張り   作:雅媛

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ウララ編といったな、あれは嘘だ


第六章 運命の日
スペシャルウィークの弥生賞と皐月賞


「ということで、弥生賞の研究をしていこう」

 

トレーナーがこういったときに、止めるべきだったとスズカは後悔した。

 

 

年が変わって、その年のスピカの初戦はスペシャルウィークのきさらぎ賞、そして弥生賞という順番であった。

早速スぺは圧倒的な強さできさらぎ賞を勝利し、弥生賞へとコマを進めた。

早くも三強と謳われ始めたスペシャルウィークだったが、弥生賞にはキングヘイローとセイウンスカイが出る。

あの二人に勝つには、単にトレーニングを重ねるだけでなく研究も必要であるという事で、展開の研究やコース分析などをすることになってしまった。

そして教材となったのが去年の弥生賞だった。

 

 

 

「へー、スズカさんも出てたんですね」

「……」

 

ワクワク、といった体でビデオを見るスぺ。

去年の黒歴史を掘り起こされたスズカは顔面蒼白である。

他のメンバーもスズカが負けたという事だけは知っていそうだが、これから起きることについては知らなそうである。

いや、ゴールドシップだけはニヤニヤしているので確実に知っている。

トレーナーが苦笑しながら、ビデオを再生し始めた。

 

 

 

ビデオの中のスズカはスタート直前、ゴールゲートの下をくぐった。

 

「スズカさん!?」

 

スぺが悲鳴を上げる。

 

「「「スズカ先輩!?」」」

 

マックイーンとスカーレット、ウオッカも悲鳴を上げる。

 

「これはなかなか……」

 

タキオンは興味深そうに見ていて

 

「ふふっ」

 

ゴールドシップは笑いをこらえていた。

スズカは真っ赤になって固まっていた。

しかし、これで受難は終わらなかった。

 

「スズカ、どうしてこういうことをしたんだ?」

 

トレーナーからのさらなる問い詰めである。

トレーナーとして理由を知りたいのは当たり前である。当時の東条トレーナーにだってかなり理由を聞かれた。

公開処刑すぎる状況に、スズカは真っ赤になりながらもしぶしぶ答える。

 

「前日…… 緊張しちゃって眠れなくて…… それで当日も寝ぼけてて全然覚えてないんです…… 多分エアグルーヴが世話してくれて連れてってくれたんだと思うんですけど……」

「なるほど」

「それで、ファンファーレで目が覚めたんですけど、何が起きてるかわからないし、エアグルーヴを探して……」

「スズカさん……」

 

真っ赤になりながら理由をしゃべるスズカ。

自分でもひどい理由だと思っている、あるまじき暴挙だった。

 

「繰り返さないようにしないとな」

「はい……」

「大丈夫ですよ! スズカさん、緊張して寝れそうにないときはわたしと一緒に寝てますから!」

「スぺちゃん!?」

 

反省しなきゃ、とスズカが気合を入れた瞬間、スペシャルウィークから大暴露が始まった。

 

「緊張している時、スズカさんは部屋でずっとぐるぐる左回りしてるんですけど、寝ないと体に悪いと思って。ぎゅって胸に抱きしめるとすぐ寝るんですよ、スズカさん」

「スぺちゃん!?」

「逆に私のレース直前は、スズカさんがぎゅってしながら寝てくれるんです。スズカさん、いいにおいがしてよく寝れるんですよね」

「スぺちゃん!?」

「香港国際カップの朝なんか、勝利の女神の……」

「スぺちゃん!?」

 

慌ててスズカはスぺの口を手で押さえた。

香港国際カップは、去年の年末にスズカが招待された香港で行われた国際G2だ。

スズカにはトレーナーの他にもスぺが同行していたが、まさかそこまでしていたとはだれも知らなかった。

ちなみに絶好調のスズカは全員ぶっちぎって優勝していた。

 

スカーレットとウオッカは真っ赤になっていた。

空気に耐えられなかったタキオンは、窓から逃げようとして窓枠に足を引っかけて地面に落下した。

ゴールドシップはマックイーンを見た。

マックイーンはスイーツ食べたいな、と思った。

 

「あー、対策ができていて何よりだな、うん」

 

トレーナーが強引に話を締めた。

誰も見ていないところでビデオの中のスズカが惨敗をしていた。

 

 

 

結局弥生賞は、スズカの勝利の女神のおまじないのおかげか、スぺが圧勝した。

しかし皐月賞はスズカが恥ずかしがって拒否したため3着に終わってしまうのであった。




スぺスズはいいぞ

キングヘイローは弥生賞も皐月賞も2着でした。

テイオー編の内容について どういうテイオーが見たいですか

  • 絶対的な強さを持つ帝王なテイオー
  • ナメクジテイオーをみんなで頑張らせて三冠
  • アプリっぽい無敗の貴公子テイオー
  • アニメっぽい不屈の帝王なテイオー

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