黄金船の長い旅路 或いは悲劇の先を幸せにしたい少女の頑張り 作:雅媛
高知トレセン学園は良くも悪くも地域密着である。
基本的に高知県で生まれ育ったウマ娘しか入学してこない。
瀬戸内海側の四国三県のウマ娘は、皆神戸の方のトレセン学園へと行く。四国山脈を越えるのはアクセスが非常に悪いからだ。
そうすると在学生も、OGもみな地元の人間ばかりだった。
それらの伝とコネを全力で使い、地元の新聞社や公官庁に働きかけ、新聞や公報紙に宣伝を載せたのだ。
地元の祭りで出張ミニライブを行う、なんてこともした。
なんだかんだでウマ娘はお祭りが好きだし、地域的にもお祭り好きな者が多い。
こうして高知競バ場と高知トレセン学園の知名度はすぐに上がっていった。
全国的に知らせる必要はない。地元で有名になればいいのだ、と考えればそう難しくはなかった。
一度調子に乗れば、あとは好循環が続いていく。
次に変わったのは衣装だった。
高知にはよさこい祭りというお祭りがある。
地元の皆が踊り子となって、よさこい節に合わせて踊るというそれは、衣装も振り付けも特に制限がないというおおらかな祭りだ。
それゆえ、きれいな衣装というものを作ることへの意識や情熱も、技術や伝もあった。
誰かが中央のG1レースを見てこういいだしたのが発端だった。
「うちの子に、レースに出る時ぐらいこれくらいきれいなのを着せてあげたい」
そうなれば動きは速かった。
地元で後援会が結成され、それぞれに思い思いの衣装が作られていく。
一人が始めれば対抗意識で他の子の衣装も出来上がっていく。
そのうちレースに参加する子たちは、たとえデビュー戦であっても煌びやかな衣装を着るようになっていった。
もちろん専門家が作ったわけではない衣装だが、地元の人たちの思いがこもっているせいで体操着などよりよほど効果が高いバフ衣装に仕上がっていた。
さらによさこい節を改良した歌や踊りもいろいろなパターンが開発されていき、ライブもどんどんとにぎやかになっていく。
こうなればもはや毎回の開催がお祭りである。
地元ケーブルテレビでも中継されるようになり、目標の観客を超える人が集まるようになった。
「ゴールドシップ、お疲れ様」
「ああ、マックイーンもお疲れ様」
大盛況だった重賞「土佐春花賞」も終わり、二人は丘の上でのんびりしていた。
とんとん拍子でうまくいったが、当然裏方の多大な努力があってこそであり、二人は駆けずり回っていた。
光りながら色とりどりの衣装で踊るウマ娘達を肴に、ふたりでニンジンジュースを飲む。
本当にいろいろな苦労があった。
まず広報に出すための文章を考えるときは大変だった。
ゴルシもマックイーンも、高知についてほとんど知識がないため在学生数人に書かせたのだがあまり文章がうまくなかった。
書き直してみたり、校正してみたり、試行錯誤して原稿を作り上げたころには二人ともへとへとになっていた。
出張ミニライブだって大変だった。
書式を作り、それを広報しないと手続きが進まない。
適当になじみのウマ娘に言って終わり、とすると責任問題も生じて大変なのだ。
だから申込期限を設けて参加メンバーを募集する期間を設けながら、お祭りの予定を聞くたびに実行委員会に売り込みに行くという作業をし続けていた。
最後の方は公共交通機関を使うのが面倒で普通に走って回っていたぐらいだ。
お遍路さんのおかげで道はあったので走ること自体は可能だったが、アップダウンに距離にとかなりへとへとになった。
衣装だって大変だった。
そもそもレースに間に合わないなんていう事態や、作ってもらう後援会を組織できないなんて言う場合すら出てきた。
地域ごとに出身者全員の後援をする組織にしてもらって、いくつかそれぞれ枚数を出してもらって予備を確保したりする必要があった。
それでも足りない場合はおばあ様とゴールドシップとマックイーンとで深夜ミシンを回して作ったりまでした。
それに加えて日々のトレーニング指導やらライブ指導やら、休む暇がないぐらい大変だったのだ。
それがひと段落して、やっと一息付けた感じだった。
「それでゴールドシップ、調子は少し出てきましたか」
「まあまあ、かな」
忙しく動いていると、悩んでいたのが少しずつ馬鹿らしくなってくる気がしていた。
ただ、まだ本調子とはいいがたかった。
「それで、何を悩んでいましたの?」
「スズカのこと、かな」
「ふむ…… もしかして、事故のこと、自分のせいだと思ってます?」
「……」
「ゴールドシップ?」
振り向くと、近くにはマックイーンの顔。
そしてゴールドシップはほっぺたを引っ張られた。
「にゃにしゅりゅんだまっきゅいーん」
「ゴールドシップがおバカオブおバカみたいですから、一度気合を入れて差し上げようと思いまして」
「にゃんりゃとー」
「あなたが頑張っていたのは知っています。スズカ先輩のことだって異様に気にしてたのも知っています。もしかしたら事故のことを知っていたのかもしれない、と思っています」
「むにゅー」
「事故はあなたのせいではないのです。助かったのはあなたのおかげかどうかまでは私にはわかりません。でも努力をしていました」
「らって、もうはしれにゃいかも」
「その責任を負うのはあなたではありません。助かったことを喜んでください。できたことを誇ってください。あなたのおかげで、幸せになった人はもういっぱいいるのですから」
「……」
「それにきっと、あなたの使命はまだ終わっていないのでしょう?」
「ふにゅっ」
「じゃあこんな風に腑抜けていてはだめですよね」
「……そうだな」
マックイーンに励まされて、やっと気合が入った気がした。
スズカの件は最善には程遠いが、最悪は避けられたのだ。
そしてまだ、悲劇は残っている。
ここで戸惑っている時間はなかった。
「ひとまずあなたはスズカの激励に行きなさい。愛しのポニーちゃんのお姉さまなんでしょう?」
「……マックイーン? 何を知っている?」
「下手にばれたらスぺ先輩に刺されてもスぺ先輩は無罪かな、って思うようなことですね」
「そこまで手を出していないのぜ!?」
「冗談です。ほら、早く行きなさい、お姉さま」
若干納得がいかないゴールドシップは、しかし立ち上がった。
既に高知での仕事の大体の道筋はついている。もうここに居なくてもことは進むだろう。
おばあさまに断りを入れると、翌朝の飛行機でゴールドシップは東京へと戻るのであった。
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