黄金船の長い旅路 或いは悲劇の先を幸せにしたい少女の頑張り 作:雅媛
運命の分岐点を超えたところで
負けるわけにはいかない。
そう、スズカさんと約束したのだから、負けるわけにはいかないはずであった。
「なんでっ! なんでぇえ!!!」
菊花賞
クラシック三冠の最後のレース。
もっとも強いウマ娘が勝つといわれたこのレースに、スペシャルウィークは負けるつもりはなかった。
3000mという長距離はレースでは初めてであったが、地元では通学などで走っていた距離であり、苦もない距離だったはずだ。
レースプランだって完璧なはずであった。
トレーナーさんやタキオン先輩とも話し合い、今の自分が走るのに最適なプランを作ったはずだった。
現にその通りに走ることができた。
逃げるセイウンスカイを余裕でとらえられるタイミング。
京都のカーブが終わったところからのラストスパートをしたはずなのに。
その背中は遠かった。
最後の末脚で伸び悩んだスペシャルウィークは、菊花賞は3着に終わった。
とても、スズカさんに顔を合わせられない。
スぺはそう思った。
「負けられない! 負けられないのにっ!」
その次のジャパンカップ
東京競馬場芝2400mで行われるここは、日本ダービーと同じコースだ。
直線も長く、差し脚鋭いスペシャルウィークには有利なコースであった。
今度こそは絶対負けられない。
そんな決意で挑んだレース。
しかし、ライバルたちはスぺの上をいった。
スぺより少し前目で展開した怪鳥エルコンドルパサー
そしてスぺより少しだけ早い、最善のタイミングでスパートをした女帝エアグルーヴ
末脚をいくら発揮しても同じ速度で直線を突き進む二人をスペシャルウィークは捉えきれなかった。
全く追いつけない二人の背中。
展開で敗けたスペシャルウィークのジャパンカップは3着に終わった。
とても、スズカさんに顔を合わせられない。
スぺはそう思ってしまった。
「なっ!? なんでなんでなんでなんでっ!」
そして年末の有馬記念。
同期のセイウンスカイにキングヘイロー、ジャパンカップで追いつけなかったエアグルーヴ、そして長期休養から復活した同期グラスワンダーが出場するこの年最後のグランプリ。
今度こそ万全の対策をもって挑んだはずであった。
セイウンスカイに逃げ切りをさせずに最適な距離を保ち直線で差し、
キングヘイローやエアグルーヴの差し脚に対しても負けない最適なタイミングでの仕掛け。
今度こそ勝てる。
そう思った時だった。
「私を忘れていませんか? スぺちゃん?」
地に響くような声が
本当にかすかな声が
しかしスペシャルウィークの耳に突き刺さった。
名刀で薙ぎ払うかのような豪快な差し脚で、後続もスペシャルウィークも、一気に抜き去ったグラスワンダー。
サイレンススズカに勝つことを想定し鍛え上げられた、圧倒的な切れ味の差し脚は、スペシャルウィークでは太刀打ちできるものではなかった。
結局スペシャルウィークの有馬記念は2着で終わった。
とても、スズカさんに顔を合わせられない。
スぺはそう思ってしまったのだ。
そうでなかったはずなのに。
それをたしなめられる者がいなかったのがこの時災いした。
普段チームをまとめているゴールドシップは高知に行ってしまった。細かい事に気を回すメジロマックイーンも同様だ。
ウオッカもスカーレットも、タキオンの世話に忙殺され、スぺの様子まで確認していなかった。
血を吐く思いでスズカの治療に当たっているタキオンは推して知るべしである。
そして沖野トレーナーは広がり過ぎたスズカ関連やらタキオン関連の対応にやはり忙殺されていた。
皆、自分の事でいっぱいいっぱいだった。
いや、それは言い訳に過ぎないだろう。
皆、スペシャルウィークに、強くて優しい彼女に、本当はちっぽけな少女でしかない彼女に甘えてしまっていたのだ。
有馬記念のライブの翌日スぺはスズカに会いに行った。
結果を告げ、そして涙ながらに謝った。
スズカが求めていたものが何かすら、スぺにはわからなくなっていた。
そしてスズカから決定的な一言が出てしまった。
「私たち、もう会わない方がいいわ」
努力はした
才能もあった
全力を尽くした
でも己を見失った走りに勝利はない
テイオー編の内容について どういうテイオーが見たいですか
-
絶対的な強さを持つ帝王なテイオー
-
ナメクジテイオーをみんなで頑張らせて三冠
-
アプリっぽい無敗の貴公子テイオー
-
アニメっぽい不屈の帝王なテイオー