黄金船の長い旅路 或いは悲劇の先を幸せにしたい少女の頑張り 作:雅媛
実際こちらがモデルと考えてもいいように思います。モットーにエクリプスの名前がありますし。
ちなみにヘロド系は現在非常に少ないですが、シンボリルドルフやメジロマックイーンはヘロド系です。
「さて、早々遅刻しそうなマックイーンは果たして入学式に間に合うのか。実況は三女神の一人、エクリプスが」
「解説は私、同じく三女神のマッチェムがお送りします」
「あれ、ヘロドちゃんは?」
「入学式見に行ってるから今回は不参加だって」
「ヘロドちゃん、会長さんが大好きだからねぇ。しょうがない」
「という事で出走バの紹介です。1番、メジロマックイーン。スイーツがないといいながら果物に夢中です」
「食べ過ぎて重め残りが無ければいいのですが」
「2番、ゴールドシップ。こちらはマックイーンに夢中です」
「イレ込み過ぎてますね。恋人の様に甘やかしています。レースに影響しないか心配です」
学食にはだれもいない。
見ているのはゴールドシップを見守る女神たちだけである。
といっても三女神の一柱はお気に入りの会長シンボリルドルフとトウカイテイオーを見守るため別のところを見ていて、今回は不参加である。
神のみぞ知る、と言わんばかりに誰もいない学食で恋人のようにいちゃついている二人。
二人はそんなつもりは全くないのだろうが。
そんなやり取りをしていて、ゴールドシップはふと時計を見た。
「ゴールドシップが時計に気づきました」
「入学式の時間に気づいたようですね。時間一杯です。各バ一斉にゲートイン」
「今、スタートです」
遅刻寸前の状況に気づいたマックイーンが学食を飛び出し、ゴールドシップが続く。
学食の扉というゲートを潜り抜け、廊下を爆走していく。
「ゴールドシップ、出遅れていますね」
「スタートが苦手なウマ娘ですからね。その分最後の追い込みは怖いですよ」
「先ずは最初の直線。渡り廊下のカーブまで400mほど直線が続きます」
メジロマックイーンは入学式に遅れるわけにはいかなかった。
当たり前である。入学式から遅れるなんて不真面目もいい所である。
さらにマックイーンは入学生代表であいさつすることになっていた。
挨拶文は既に頭に入っているし、スケジュールも理解しているが、最後の打ち合わせがあったはずである。
つまりすでに遅刻状態だ。これ以上遅れるわけにはいかなかった。
全力で廊下を駆けていく。
学内にはだれもいない。
だが後ろから凄いプレッシャーがかかる。
「な、なんで追いかけてきてますのぉおおお!!」
ちらりと後ろを確認すると、なんとゴールドシップが追いかけてきていた。
なんで追いかけてくるのか、何を考えているのか何もわからない。ただ、真剣な顔で追いかけてきている。
その恐ろしい状況とあまりのプレッシャーに、マックイーンはペースを上げた。
ゴールドシップがマックイーンと同時に出発したのは、特に意味はない。気分である。
ただ、憧れの祖母と競ってみたいという気持ちがあったのは否めない。
現役時代、どう頑張ってもよくならなかったスタートは今回も悪いままで、完全に出遅れてしまった。
ただ、まだ勝ち目はある。コースは廊下を400mほど直進し、曲がって渡り廊下を200mほど進んで、残りはまっすぐの直線だ。
直線で差し切る。そんな決意でゴールドシップは走っていた。
「さて、第三コーナーを曲がって渡り廊下に入りました。ここの直線は200m。第四コーナーで直角に曲がることを考えると、あまり速度は出せませんね」
「マックイーンは快調に飛ばしていますね。ゴールドシップは……!?」
「ゴールドシップ、仕掛け始めましたよ!? ここから仕掛けて、果たして第四コーナーは曲がれるのか!?」
「これは読めなくなってきましたよ!」
半分が直線のコースだ。第四コーナーを曲がってから仕掛けると思っていたが、ゴールドシップはこのタイミングで仕掛けた。
確かにゴールドシップの持ち味はロングスパートだが、さすがに無理な仕掛けではないだろうか。
解説と実況の二柱は思った。
「ひいいいいいい!!!」
マックイーンは圧力が強くなったのを感じた。
それは単に気配、というだけではない。
ドッ! ドッ! ドッ! ドッ! ドッ!
エンジンか削岩機か、そんなものに聞き間違うような重い音が後ろから近づいてくるのだ。
音が怖すぎて振り返れないでいるが、ゴールドシップの足音だろうことは想像がついた。
ウマ娘の踏み込みは確かに重い音がするが、ここまで重く、地面がえぐられるような音は初めて聞いた。
しかもテンポは異常に遅い。マックイーンの3歩走る間に音は2回ぐらいのテンポだ。にもかかわらず徐々に音が近づいてくる。一歩でどれだけ踏み込んでいるのが怖くなる。
マックイーンは悲鳴を上げながら、第四コーナーをきれいに曲がった。
マックイーンは予想以上に速かった。
いくら伝説のターフの名優とは言え、今はまだ入学したての若ウマ娘である。
ドリームトロフィー所属で全盛期である自分なら簡単に追いつけると油断した自分を、ゴールドシップは恥じた。
直線が600mほどあることを考えても、あの速度で走るマックイーンに対して10バ身近い差を詰められるか自信がなかった。
だからゴールドシップは早めに仕掛けた。
自分の売りは、祖母譲りのスタミナと、それに支えられたロングスパートだ。
それを見せるためにも、ゴールドシップは渡り廊下に差し掛かってすぐ仕掛けた。
問題は最後のコーナーだが……
「でりゃあああああ!! まがれええええええ!!!」
最高速で走れば、このコーナーが曲がり切れないのはわかっていた。
だから、曲がり切れない分は壁を走った。
ドゴッ! ドゴゥ! ゴッ!
鈍い音をたてながら、壁を三歩ほど走れば、遠心力は重力に負ける。
ゴールドシップは、コースへスピードのロスなく戻れた。
速度もテンションも最高潮である。
マックイーンの背中は間近に迫っていた。
「ゴールドシップ! 速い! これは速い! マックイーンに並んだ!」
「いえ、並ばせません! 一気に追い抜いた! そのまま講堂の入り口を蹴り開けて……」
「「ゴール!!」」
「いやぁ、すごかったですね」
「あのゴールドシップの追い上げ、とんでもない脚ですね」
「一着はゴールドシップ、三バ身離れてメジロマックイーンという結果に終わりました」
「という事で実況はエクリプス」
「解説はマッチェムでお送りしました」
先に講堂にたどり着いたゴールドシップは、その勢いのまま、講堂の扉を蹴り開けた。
大きな音がして、扉が開く。
皆が音の元であるゴールドシップを振り返った。
ここでゴールドシップは正気に戻る。
あれ、自分はどうして走っていたんだろうか。
別に入学式、自分は関係ないよな?
だが、そう思っても蹴り開けてしまった後である。
ひとまず騒がせたお詫びにその場で土下座をした。
周りから見たら、見たこともない長身の美人がいきなり飛び込んできて、いきなり完璧な土下座をした、という状況だ。
見ていた者は全員困惑した。
マックイーンはこの隙に講堂に潜り込んだ。
沈黙があたりを支配する。
ゴールドシップも困惑した。
土下座でも許されないというのか。
ならば、一発芸で場を和ますしかない。ゴールドシップは覚悟を決めた。
「ゴルシちゃんの一発芸! 変顔しながら何もない所からシルクハットを出します!」
後輩にバカ受けだった一発芸だ。
トーセンジョーダンすら爆笑させる変顔をしながら、フジキセキ流手品術の奥義であるシルクハットを何もない所から大量に取り出すというゴールドシップの108ある奥の手の一つだ。
いきなり出てきた大量のシルクハットととんでもない変顔に、周囲は困惑を深めた。
声一つ上がらない。
だが、ゴールドシップは一発芸をした時点で、みんなにわかってもらったと一人納得して、その場を堂々と立ち去った。
シルクハットだけが大量に残される。
マックイーンは遅刻を会長に見つかり怒られた。
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蹴りたいトセジョさん&きれいなシチーさん
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不屈の帝王 トーカイテイオー
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不撓の王・高貴な雑草魂 キングヘイロー
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うーららーん! ハルウララ
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