黄金船の長い旅路 或いは悲劇の先を幸せにしたい少女の頑張り   作:雅媛

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メジロマックイーンと、ライアンと、パーマーと

メジロの三羽烏、と呼ばれる三人のウマ娘がいた。

メジロライアン メジロパーマー メジロマックイーン。

同世代でメジロの名を継ぐ優れた三人のウマ娘。

それが彼女らであった。

 

頼りがいがあり快活なライアン

優しく気配りができるパーマー

その二人に比べ生まれた時期が遅く、小柄で人見知りだったマックイーン。

ほかの二人はマックイーンをかわいい妹のように思ってかわいがっていた。

かわいがる二人を、マックイーンもまた姉のように慕っていた。

 

 

半年の高知滞在から帰ってくるマックイーンに会うのを二人は楽しみにしていた。

仲の良い三人だ。半年以上も会わないなんてことは今までなかった。

電話で声は聴いていたので元気なのは知っていたが、やはり会うのは楽しみであった。

 

ドーベルも誘ってまたコスメショップでも行くか。

いや、野球観戦がいいのではないか。

そんな話をしながら待っていた二人を待っていたのは……

 

成長した美女であった。

 

「え?」

「え?」

「ただいま戻りましたわ。ライアン、パーマー」

 

見たこともない美女が、自分たちの名前を呼んでいる。

目の前の女性がマックイーンだという事は、理性が告げている。

しかし、理解がしきれなかった。

 

まずデカい。

ライアンもパーマーも、平均的なウマ娘の身長より背が高かった。

一方でマックイーンは平均より少し低いぐらいであったはずである。

しかし目の前のマックイーン(仮)は明らかに自分たちより背が高かった。

 

次にゴツい。

マックイーンはよく言えば女性的でしなやかなモデル体型。

悪く言えば貧弱で貧相、小柄だった。

しかし目の前のマックイーン(仮)はどうだ。

まずスカートから少しだけ覗く太もも。とても太い。鍛え上げられたトモである。

筋肉に自信があるライアンより太そうである。しかも、ただ太いだけでなく女性的な丸みもちゃんと帯びていて、むちっとした、ちらりと見えているだけにもかかわらずそこはかとないエロスを感じる蠱惑的な太ももである。

胸部も極めて女性らしさが増していた。すさまじく柔らかそうで大きい。きっとあれに顔をうずめてお昼寝したらとても気持ちがよさそうな、そんな胸部である。

他にも腕も腰も、全体的にかなり筋肉がついており、しかし女性的な丸みを忘れない脂肪もありすさまじい色気を放つ美女だった。

そのあり得ない色気に、恋愛耐性が低いライアンは鼻血を吹き出した。

慌ててパーマーが対処する。

 

「ライアン、大丈夫ですの!?」

 

心配そうに寄ってくるマックイーン(仮)を目と仕草で止めるパーマー。

それ以上近づかれるとライアンが持たない。パーマーはそう判断した。

ついでに自分もきつい。

 

「おかえり、マックイーン。いろいろ大きくなってとても綺麗になってて、私もライアンもすごく驚いたよ」

「そ、そんなに変わってますか?」

「成長したと思うよ。ちょっとライアンの調子が悪いみたいだから、また夕飯の時にね」

「わかりましたわ」

 

ションボリしながら部屋を出ていく超絶美女。仕草はやはりマックイーンで、あれがマックイーンだという事を二人は理解した。

その後、マックイーンの色気にやられて廊下に倒れていたドーベルを拾った二人は、ドーベルを交えて対マックイーン緊急会議を開催するのであった。

 

 

 

「あれはやばい」

「あれはやばいよ」

「あれはやばい」

 

三人の意見は一致した。

マックイーンはもともと神々しいまでの美少女だった。

成長したら美人なんだろうなーと思っていたが、実際はちょっと存在しちゃいけないんじゃないかと思うぐらい美人だった。

 

「妹みたいな存在なのに、私血迷いそう」

「お姉さま、ドーベルはお慕いしております……」

「二人とも血迷わないで!!」

 

目がイってるライアンとドーベルを必死に揺さぶるパーマー

別に二人のどちらかがマックイーンと恋愛関係になっても文句はないが、今は完全にマックイーンに酔っぱらっている状態だ。

このまま突き進んだらろくなことは起きないのが分かっていた。

 

「ま、まあ、ひとまずおいておこう。で、あのマックイーンを放っておいていいのだろうか」

「よろしくないのでは? 血迷う人が何人も出ると思うわ」

「現に二人が血迷ってたもんね」

 

げんなりするパーマー。

だが心配はわかる。あそこまできれいで蠱惑的だと、何をしでかすかわからない者も出てきそうだ。

一番箱入りだった彼女がそれに対応をちゃんとできるかはパーマーも心配だった。

 

「おばあ様はなんて言ってるんだろう」

「そうよね、高知にはおばあ様と一緒に行ってたわけだし」

「一度話を聞きに行こうか」

 

わからなかったら人に聞く。三人はおばあ様のところに向かった。

 

途中で庭でお茶をしているマックイーンとゴールドシップを見かけた。

ゴールドシップ。マックイーンの一番の親友だろう。

同じチームでいつも一緒にいる彼女との仲は、圧倒的な分厚い信頼があった。

恋仲ではないのだろう。そういう気配は全くなかった。だが、自分たちとおばあ様の間にあるような、絶対的な信頼が二人の間にあるように感じていた。

おばあ様にも気に入られているゴールドシップがメジロの屋敷にいるのは特に意外でも何でもなかった。

仲が良いな、ぐらいにしか思わなかったが……

 

「ゴールドシップ!!」

「なんだぜ?」

「ケーキは一人三つでしょ! なんで四つ食べてるんですの!」

「マックイーンはもう少し減量した方がいいんだぜ!」

「わたくしのケーキを! 返しなさい!!」

 

上品さのかけらもないことを叫びながら、マックイーンはゴールドシップに技をかける。

メジロスパーク。メジロ殺法100手の奥義だ。

綺麗に技が決まったゴールドシップは庭に倒れ伏した。

 

それを見ていた三人は、目が覚めた。

結局マックイーンはマックイーンだった。なんかいろいろ逞しくなっているが。

これなら大丈夫かと、思いながら、三人は部屋に戻るのであった。

 

 

 

 


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