黄金船の長い旅路 或いは悲劇の先を幸せにしたい少女の頑張り 作:雅媛
レースがスタートした。
さすがどのウマ娘も、G1に出場するだけの実力を持った子たちである。
あのマックイーンの重々しいスイーツオーラにのまれて出遅れることもなく、きれいに並んでスタートをした。
快調に飛ばすトウカイテイオー
他のウマ娘のほとんどは、テイオーをマークする作戦を取っていた。
今までのレースでわかっていることは、テイオーはかなり理想的なレース展開をするという事だ。
すなわち、彼女のペースで走るのがベストに近い、という事である。
ならばそれをマークして勝負するというのは間違いではない。
テイオーの一歩前にいて同時にスパートして競り勝つ
テイオーの一歩後ろにいて足を溜めスパートで勝つ
テイオーの横にいて一歩早くスパートをする
ただ普通に競ったら勝てないがゆえに、対テイオーの戦術としてそれぞれがテイオーに勝つ方法を、策を練っていた。
一方マックイーンは比較的後めの展開を取っていた。
マックイーンもまた、王道の先行策を好むウマ娘である。先に行って勝つのがいままでのスタイルだった。
それが一転後方待機策である。
マックイーンをマークしようとしていた娘達も、これには面喰らい、ふらふらと自分の位置を定められずにいた。
マックイーンは考えていた。
テイオーにどうすれば勝利できるか、という事である。
テイオーのレースはどれも生でも見たし、ビデオでも何回も確認した。
頭の中でテイオーと競ったが、勝てる気がしなかった。
それくらい彼女は速かった。
一か八かでいつもと同じように走る選択肢は当然あった。
だがそんな、相手の失敗を待つような方法は性に合わなかった。
だからマックイーンは奥の手を使うことにした。
参考にしたのはゴールドシップの走りだ。
入学式の時、そして高知で彼女の走りは見た。
すさまじく広いストライド。
そして圧倒的なパワーによる踏み込み。
その走りは本当にかっこよかった。
何度か真似をしようとしたが、しかしなかなかうまくいかなかった。
ゴールドシップに比べ、体格が小さく体重も少ない自分では、踏み込みの反動に耐えきれず、体が宙に浮いてしまったのだ。
だが、今なら、体も完成し、十分なパワーがある自分なら、きっとできるはずだ。
あと1000m。第三コーナーが見えてきたあたりで、決意を込めて、マックイーンは一歩、思いっきり踏み込んだ。
ドンッ!
鈍い音がレース場に響く。
大きな音だが、何の音だか誰にもわからなかった。
ドンッ!
また鈍い音が響いた。
レース場の方から音がしている、と多くの者が気づいた。
皆がレース場を見る。
だがその音が何か、見ていてもわからなかった。
ドンッ!
鈍い音が繰り返しレース場から響き続けた。
「おい、マックイーンのあれ、なんだ?」
「たぶんアタシの走り方の真似だと思うんだが……」
「ゴールドシップの?」
トレーナーがゴールドシップに聞くと、ゴールドシップはそう答える。
過去では基本的にゴールドシップが本気で走ることはなく、トレーナーも見たことが無かった故にそれを知らなかった。
ゴールドシップは自分の走り方の真似かと最初思った。
だが、ゴールドシップも不思議に思った。
踏み込みごとに最大の力を地面に伝える方法は、ゴールドシップと似ている。
だが、ゴールドシップのやり方だと反動で高く地面が跳ね上がるのだ。
砂浜でやれば砂柱が立つし、硬いターフの上でもちぎれた芝や土が大きく跳ね上がる。
だがマックイーンのそれはそういう気配が一切ない。
音がして、ストライドが非常に長くなったこと以外、何も変化がないのだ。
きっと似ているが違うなにかだ。
そう思うとゴールドシップもワクワクし始めた。
一歩ずつ、一歩ずつ、少しずつ加速していく。
急加速はしない。だが、一歩ずつ確実に速度が上がっていく。
速度が上がるたびに反動が強くなっていく。
それを次の踏み込みで必死に押さえつける。
反動を地面を蹴り上げる力にすべて変えて、一切逃がさずに体全部で受け止めながら、マックイーンは走り続ける。
とんでもない走法である、とマックイーンは思った。
一歩ずつの加速が目を見張るほど大きいわけではないが、体力がもつ限り無制限に加速していく。
だが、加速すればするほど、反動が累積していく。
コーナーに入れば殺人的な遠心力が体にかかり、全身が軋む。
綺麗になんて曲がることはできない。外に振られながら、必死に曲がり続けるしかない。
その遠心力でさらに体は加速し、反動が増していく。
しかし、これを押さえつければ
これを使いこなせば
テイオーにきっと届く。
やっと直線にたどり着いたマックイーンは、大外から一気にスパートをかけた。
テイオーは少し失望していた。
マックイーンは出遅れたのかわからないが、いつもと違って後方待機だ。
自分と競り合ってくれると思っていたのに、肩透かしを食らった気がした。
その後マックイーンはずっと後方に待機したまま、コーナーに入ると大外へと振り回されて飛んで行った。
こんなレースじゃ勝負になるわけがない。
他の子も大したことはない。
せっかく楽しみにしていたが、G1とは言えこんなものか、とテイオーは思った。
だが手を抜くつもりはなかった。いつものように、直線に入る最適な瞬間、スパートをかけるテイオー。
マークしていた子たちは、早く仕掛けた子も遅く仕掛けた子も、すべて一瞬にして置いて行かれた。
レベルが違い過ぎた。
後はもう、作業でしかない。
テイオーはそのまま直線を、いつものように走っていた。
既に周りなんて見えていない。そんな余裕もない。
いつものスパートなんて目じゃないほどの速度。
体がバラバラになりそうな反動が一歩ごとに襲ってくる。
少しでも後ろに踏み込みを間違えば地面に突っ込みそうな反動が
少しでも前に踏み込みを間違えば体が吹き飛びそうな反動が
少しでも左右に踏み込みを間違えば脚がへし折れそうな反動が
マックイーンの体を襲う。
しかし
しかし
しかし
マックイーンは一歩ずつ、さらに加速していく。
すでに彼女にはゴール板しか見えていなかった。
テイオーが異変に気付いたのは中山の坂に差し掛かったところだった。
鈍い音が左からしてくる。
ドンッ!
という鈍い音だ。
レース中ずっとしていた音だが、いつの間にか前の方から聞こえてくるようになっていた。
何かと思ってみると、そこには……
メジロマックイーンがいた。
すでに坂の中腹ぐらいの位置にいるマックイーン。
自分より圧倒的に前にいるマックイーン。
全く意味が分からなかった。
大外に振られて投げ出され、勝負にならないような場所にいたはずだ。
それがなぜ、自分より前にいるのだ。
テイオーは必死に追いすがろうと脚に力を入れる。
しかし、テイオーのトップスピードより明らかに速い速度でマックイーンは駆け抜けていく。
結局差は開くばかり。
まったく追いすがることもできずに、ホープフルステークスはメジロマックイーンが勝利したのであった。
不沈艦抜錨ってきっとこんなイメージです。
なお、マックイーンはもともと持っていた固有スキルは忘れた模様。
二部で有馬記念が行われる予定ですが、その勝者は(なお、結果が反映されるとは限りません
-
日本総大将 スペシャルウィーク
-
スペチャンキラー グラスワンダー
-
凱旋門再挑戦検討中 エルコンドルパサー
-
最近同室のあの子が気になるキングヘイロー
-
将来の夢はお花屋さん セイウンスカイ
-
空気を読まない テイエムオペラオー
-
うららーん ハルウララ
-
大外一気 ゴールドシップ