黄金船の長い旅路 或いは悲劇の先を幸せにしたい少女の頑張り   作:雅媛

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第二章 三冠を目指すテイオーとチーム・カノープス
マックイーンの日常とチーム・カノープス


マックイーンの今後の予定について決まった。

クラシックの上半期は全くレースを入れずにトレーニングに励み、新しく生み出した必殺走法をものにする。

そして夏ごろから復帰し天皇賞秋、そして調子次第でジャパンカップや有馬記念を目指すことになった。

 

ゴールドシップもその方針には一切反対しなかった。

未来でマックイーンが引退した原因は繫靭帯炎であった。

基本的に繋靭帯炎は脚の酷使により生じるわけだし、体調管理に慎重になってなり過ぎることはない。

タキオン博士の診察も受けながら、慎重にやっていくことになった。

 

 

 

そうしてスピカのトレーニングは3組に分かれることになる。

一つはトレーナーが見るスぺとスズカだ。

またスぺとスズカが仲たがいでもして前回のようなことになると大変だという事で重点的に二人を見ることになった。

スぺは天皇賞春から宝塚記念を目指し、スズカもまた、一昨年と同じように重賞戦から宝塚記念を目指す。

そして二人で宝塚記念で競う予定らしかった。

スぺは宝塚記念を最後にドリームワールドトロフィーに移行し、スズカも移行するか、留学するかで迷っているらしい。

二人の予定が春期いっぱいだし、マックイーンが本格的に動くのは夏以降なので、二人に重点を置くのに誰も反対しなかった。

 

もう一つはタキオン博士が見るスカーレットとウオッカだ。

そろそろ二人とタキオンもデビューを見据え始めており、その調整に入っていた。

タキオンが自分で調整をやるとずいぶん駄々をこねて、マンハッタンカフェに珈琲をキめさせられていたが、それでも譲らなかったのでトレーナーが折れた形である。

 

で、最後にマックイーンとマックイーンを見るゴールドシップのペアだ。

こちらは最近、別チームであるカノープスと一緒にトレーニングしていた。

カノープスの南坂トレーナーとスピカの沖野トレーナーは兄弟弟子にあたるらしく、沖野トレーナーがお願いしてくれており、また、マックイーンの激烈なプッシュにより一緒にトレーニングすることになっていた。

 

「今日もイクノさんはかっこいいですわ……」

「マックイーンさんも今日も美人ですよ」

「キャー、褒められてしまいましたわ!」

 

こんな感じでいつもいちゃつく二人。

イクノディクタスの方は単に素で言っているだけだろうが、傍から見たらいちゃついているようにしか見えない。

そしてマックイーンは舞い上がりまくっていた。

 

「はぁ、二人とも仲いいねぇ」

「そういうネイチャさんも、今日もかわいいですわ。大丈夫ですわネイチャしか勝たん!」

「あはは、お世辞でも褒められると照れ臭いね」

「お世辞じゃありませんわ! 本音だと信じてもらえるまで100万回コールしましょうか?」

「やめて!?」

「そうだぞ! ネイチャはかわいい!」

「そうですね、ネイチャさんはかわいいと思います」

「何この褒め殺し!?」

 

マックイーンのお気に入りその二、ナイスネイチャである。

名前の通りの良い素質と、そして人受けするかわいさを持ったウマ娘だが、妙に本人に自信がない。

南坂トレーナーもその点を気にしていたが、マックイーンがそれを聞きつけて毎回過剰なぐらい褒め称えていた。

まあマックイーンのことだから全部本気だろうけど……

 

「ったく、遊んでないでさっさと練習しようぜ」

「うるさいですわ阿寒湖」

「阿寒湖って言うんじゃねえ!!」

 

ガルルルル、と威嚇するマックイーンとにらみ合う非常に小柄な彼女はキンイロリョテイ。

スズカと同期の彼女はカノープスのリーダーであり、マックイーンとは妙にウマが合わない。

そして、彼女はゴールドシップの、未来ではすでに亡くなっていた父親であった。

 

 

 

ウマ娘というのは未知の部分がかなりある。

そのよくわからない生態の中に、ウマ娘同士のパートナーからウマ娘が生まれることがある、という事がある。

男性と結ばれるウマ娘は多いが、ウマ娘同士、またはヒトの女性との間からも子を成すことができるのだ。

ゴールドシップの母はマックイーンの娘だが、父は目の前の彼女であろうことはゴールドシップは察していた。

ゴールドシップが知る父は、すでに引退後であり、現役時のウマ娘としての名前を名乗ったことが無かった。

なのでゴールドシップには名前だけではわからなかったし、世代的にもこの時代のウマ娘だと思っていなかったので最初は空似とかかとおもっていた。

だが実際に会って、話をして、今ではゴールドシップは確信をしていた。

 

「ほら、マックイーンもリョテイも喧嘩するなって」

「ゴールドシップ! いつも言っているだろうが! 抱き上げんな! 頬ずりすんな!!」

「リョテイは小っちゃくてかわいくてなぁ」

「ゴールドシップ! なんでリョテイの肩をもつのですか!」

 

未来の父は、小柄で上品で非常に大人しく優しい人だった。

ゴールドシップはそんな父が大好きだった。今の元気な彼女を見ていると思わず抱きしめたりしたくなってしまう。

マックイーンはそれに嫉妬するし、リョテイはじたばたと暴れるが、ゴールドシップも止める気はなかった。

 

「はいはい、皆さん遊んでいないでください。トレーナー、今日のメニューは?」

「キングさん、いつもありがとうございます。これでどうでしょう?」

「良いと思いますよ。リョテイも、今度こそ勝つんでしょ? 頑張らないとだめなんじゃないですの?」

「そうだ! 俺が次こそは勝つんだからな!!!」

「ターボも勝つ!!」

「そうですね、頑張りましょう」

「みんな元気だねぇ」

 

キングヘイローがトレーナーを連れて練習場に現れた。

彼女もまたカノープスのメンバーで、実質的なとりまとめ役であった。

彼女の一声で、マックイーンも交ざって皆練習を始めたのだった。

 

 

二部で有馬記念が行われる予定ですが、その勝者は(なお、結果が反映されるとは限りません

  • 日本総大将 スペシャルウィーク
  • スペチャンキラー グラスワンダー
  • 凱旋門再挑戦検討中 エルコンドルパサー
  • 最近同室のあの子が気になるキングヘイロー
  • 将来の夢はお花屋さん セイウンスカイ
  • 空気を読まない テイエムオペラオー
  • うららーん ハルウララ
  • 大外一気 ゴールドシップ

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