黄金船の長い旅路 或いは悲劇の先を幸せにしたい少女の頑張り   作:雅媛

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閑話:マックイーンとサトイモとゆかいな仲間たち

「イクノさん! 私とイクノさんの子を拾いました!!」

「ちょっと待てマックイーン。すべてがおかしいのにまず気付け」

 

ある日の練習中。

学園一周のランニングから帰ってきたマックイーンが、小さい子を拾ってきた。

小学生だろう、とてもかわいい子である。

ふんす、ふんすとなぜか偉そうにしていた。

 

そう、拾ってきたのである。すべてにおいて問題しかなかった。

 

「そうですね。この子は鹿毛。栗毛の私と、葦毛のマックイーンさんの間の子供として無理があるのでは?」

「そういう事じゃねーだろイクノ!!」

「隔世遺伝かもしれませんわ」

「マックイーンは少し黙ってろ!!」

 

ひとまず収拾がつかなくなりそうなので、マックイーンからゴールドシップはその子を受け取った。

 

「お嬢さん、お名前は?」

「サトノダイヤモンドです!!」

「お父さんとお母さんは?」

「マックイーンさんとイクノさんです!」

「よくやりましたわ! サトノちゃん!」

「ふんすっ!!」

「よし、マックイーン、お前スイーツ一週間抜きな」

「なんでですの!?」

「あほなことやった罰にきまってんだろ!」

「そんな!」

 

確実にマックイーンがあほなことをこの子に仕込んだのだろう。

スイーツを抜かれることが決定したマックイーンは絶望の表情を浮かべる。

 

「マックイーンさん」

「イクノさん!!」

「そもそも私とも、マックイーンさんとも似ていませんしその設定は無理があるかと。あとサトノさんには大事なご両親がいらっしゃるはずです。おふざけでもそういったことはするべきではありません」

「うぐっ!」

 

そこに追い打ちをかけるイクノの正論にマックイーンは撃沈した。

ごめんなさい、許してくださいまし、捨てないでくださいましぃ! とイクノにすりつくマックイーンを背に、ゴールドシップはサトノダイヤモンドを連れて、場所を移すのだった。

 

 

 

「で、サトイモ」

「サトノダイヤモンドです!」

「そうか、それでサトイモ」

「サトノダイヤモンドです!」

「お前、マックイーンファンクラブの鉄の掟、わかってるよな」

「!?」

 

ゴールドシップの低い声にサトノダイヤモンドは驚いた。

そして告げられたそれには余計驚くのだった。

メジロマックイーンファンクラブ。完全会員制のメジロマックイーンのファンクラブだ。紹介が必須の会であり、一見さんお断りの敷居の高いファンクラブである。

しかしその情報は精度、詳細さ、そして何よりも内容と写真の多さから、非常に人気があった。

それだけの情報量だ。確かにマックイーンの近くにファンクラブ関係者がいてもおかしくない。

サトノダイヤモンドは身構えた。

 

「ファンクラブ鉄の掟第12条、マックイーンに不用意に近づくなかれ。おまえ、最近マックイーンをつけてたよな?」

「っ!?」

「どう落とし前つけるんだ?」

「くっ、ですがあなたにどんな権限があるんですか! 私はナンバー2ですよ!!」

 

サトノダイヤモンドもまた、最初期のマックイーンファンクラブメンバーだった。

毎日マックイーンのファンサイトを確認し、見過ぎてスマホに視線だけで穴をあけたこと2回。

現在の目標は、あのファンクラブナンバー1と大好きな親友のキタサンブラックを奪った腐れテイオーの抹殺であった。

 

財力と社会的地位で最悪ゴリ押す、という危険思想に染まりつつあったサトノダイヤモンド。しかしゴールドシップは涼しい顔だ。

 

「サトイモ」

「な、なんですか?」

「私が、ファンクラブのマスターだ」

「!?」

 

マスター。それはファンクラブの運営者だ。

一人で大量のマックイーン情報を送り付けるその存在はファンクラブにおけるまさに神であった。

ファンクラブナンバー1を上回る、ゼロナンバー。

イケメンのあしながおじさんだという噂があったが、実際それがゴールドシップだったとは、サトノダイヤモンドも知らなかった。

 

「私が今、ここをクリックすれば、お前はファンクラブから永久に追放される」

「あ、あ……」

「ついでにお前の書いた、マックイーンとの夢小説もご両親に送信する」

「それだけはやめて!?」

「あとはご両親と三者面談もありかもしれないなぁ……」

「ごめんなさい許して下さい!!」

 

サトノダイヤモンドは土下座した。

勝負ははっきり決まった。

 

 

 

「だってぇ、キタちゃんがテイオーさんばっかりで構ってくれないしぃ! あとテイオーさんとお出かけしたりしているしぃ!! 羨ましかったんです!!!」

「でもルール違反はダメだろ? そもそも学園に部外者が入っちゃだめだぞ。まあその辺はマックイーンが悪いんだが」

「マックイーンさんは悪くありません! 悪いのは私です!」

「忠義にあふれた武士みたいなムーブは止めろ」

「ごめんなさい」

 

ションボリするサトイモ。

可愛らしいが、ケジメは必要だ。

 

「そりゃマックイーンが喜ぶのはいいんだが、ファンに集られても対応が大変だからルールがあるんだ。サトイモみたいなのが一気に来たら完全にパンクしちまうだろ」

「おっしゃる通りです……」

「今度何か勝ったら、祝勝会には呼んでやるから、それで我慢しろ」

「本当ですか!」

「まあいつも応援してくれてるからな、1度ぐらいは許されるだろう」

「わかりました!!」

「じゃあ今日は帰れ」

「はい! お世話様でした!」

 

ご機嫌になったサトイモは、意気揚々と家に帰るのであった。

 

 

 

翌日

 

「また捕まえました!!」

「まずだぁ、だずげでくだざいぃ……」

 

マックイーンはサトイモの抱き心地が気に入ったらしい。

近くに住んでいるサトイモを見つけると、拉致ってきたようだ。

サトイモもさすがにマックイーンから拉致られるのは想定外だっただろう。

遠くから見守れない状況に、どうしていいかわからずに泣いていた。

 

「マックイーン?」

「なんですの?」

「ごるしっ!!」

「めじろっ!!」

 

マックイーンをかちあげて上空に吹き飛ばすゴールドシップ。

飛んで行ったマックイーンはそのままきりもみしながら落下し、ダートの地面に逆さまに突き刺さった。

マックイーンが抱えていたサトイモは、ゴールドシップが無事キャッチした。

 

「ほら、サトイモ、泣くなって。マックイーンが悪いのはわかってるからさ」

「まずだぁ……」

 

結局サトイモはゴールドシップに肩車されながら、カノープスの練習を見ていた。

マックイーンはしばらくダートに逆さまに刺さったままだった。

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