黄金船の長い旅路 或いは悲劇の先を幸せにしたい少女の頑張り 作:雅媛
「マックイーン、風邪を引きますよ」
「大丈夫ですわ。私みたいなバカ者は風邪をひきませんもの」
「夏風邪はバカが引くらしいですし、ダメですよ」
「ふふふ」
試合後、私服に着替えたマックイーンは一人海を見ていた。
自分が情けなくて、恥ずかしくて、誰にも会いたくなくて。
一人にしてほしいとみんなに一方的に連絡だけして、海を見ていた。
そんな中、ライブを終えたイクノディクタスは目ざとくマックイーンを見つけたのだった。
「イクノさん。ごめんなさい」
「何がですか?」
「私、イクノさんもネイチャさんも、下に見て侮ってました」
「ふむ?」
「一緒に走るのが楽しみ、と言いながらどこか下に見ていました。負けるわけないと思っていました。そんなおごりが、今日の走りにつながりました」
「なるほど」
イクノはマックイーンに近寄る。
何かと振り向くマックイーン。そんなマックイーンの唇に、イクノは自分の唇を落とした。
「私は、マックイーンのことが好きですよ」
「は、恥ずかしいこと言わないでくださいまし!?」
「私は、傲慢なマックイーンも、情けないマックイーンも、愚かなマックイーンも、もちろんきれいなマックイーンも、どれもみな好きですよ」
「っ!!」
「私にとって、好きというのはそういう事です。マックイーンの存在自体が、私の心を乱すのです」
人生初めてのキス、そして告白に、マックイーンは真っ赤になった。
いつもイチャイチャするスぺとスズカを見ていて耐性はあると思っていたが自分にされるのは全く別口の話であった。
「私も今日のレースを走って思いました」
「?」
「私は走るのが好きでした。レースに出るのも好きでした。だけど、ただ、走るだけならレースに出なくてもいいじゃないか、とそう思っていました」
「……」
「今までなんとなくレースに出ていました。でも、今日のレースでわかりました。キラキラ輝くネイチャさんみたいになりたい、と」
「なるほど……」
「そして、また悔しがるマックイーンも見たいと」
「それは悪趣味じゃありませんか!?」
顔を上げて膨れるマックイーン
かわいいと言いながら再度口づけをするイクノ。
マックイーンはまた真っ赤な焼きまんじうになった。
「私はいまだに、負けて悔しいという気持ちがいまいちわかりません。だけど、あなたやネイチャのように輝きたいと憧れは抱きました」
「イクノも、輝いていますわ」
「いいえ、あなたやネイチャに比べれば、私はまだ屑石のような存在だと今日気づきました。だからこそ……」
イクノはマックイーンを見つめた。
「次に競うときは、あなた以上の星になって見せます」
「…… 楽しみにしていますわ」
そうして二人して笑うと、イクノは立ち上がった。
「さてと、あまり待たせるのも悪いですね」
「待たせる?」
「ほら、あそこに、スピカの皆さんがいらっしゃいますよ」
「!?」
指さす方を見ると、こちらを見つめる四人の姿があった。
「おい、サトイモ、やっぱりスマホのカメラじゃ暗すぎてダメだ。そっちはどうだ」
「ふっふっふ、暗視機能付き最高級デジカメですからばっちりですよ。秒間16連射でちゃんととりました」
「二人とも仲よしね」
「そうですね」
スピカとして応援に来ていたゴルシ、スぺ、スズカとサトノダイヤモンドである。
「あの、いつからいましたの……」
「いつからって、マックイーンが一人にしてッていうメッセージを送ってから30分後には集合していたな」
「ずいぶん前じゃありませんか!!」
「さすがにあのメッセージ受け取って一人にはしとかねーだろ」
「確かにそうですが!!」
つまり、今のキスシーン含めて全部見られていたという事だ。
マックイーンはまた真っ赤になった。
「さて、そろそろ行きましょうか。ネイチャの祝賀会はネイチャ一色で居場所がないんです。スピカの方にお付き合いさせてください」
「お、良いぜ。スぺ、予約一人追加で」
「はーい。おいしいフグのお店予約してますから!!」
「いやそれ、本当に予算大丈夫なのかよ」
「私に任せてください!!」
「サトイモに集るのはダメだろどう考えても!?」
騒ぎながら移動を始めるスピカのメンバー
マックイーンはイクノに手を引かれて、皆についていくのであった。