黄金船の長い旅路 或いは悲劇の先を幸せにしたい少女の頑張り   作:雅媛

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第四章 物語の始まり
テイオーとお姉さまの出会い


ゴールドシップはキタサンブラックとサトノダイヤモンドを探していた。

 

レース後、キタサンブラックがテイオーを探しに行ってしまったため、見失ってしまったのだ。

とはいえサトイモが一緒だし、テイオーの行動範囲にいるだろうと思ってあまり焦ってはいなかった。

 

だが、そうして探していたところに、なぜかトウカイテイオーが落ちているのにはビビった。

道端に落ちているウマ娘である。意味が分からない。

ひとまず負けて落ち込んでいるのだろうとあたりをつける。

頭の飾りを外して気合を入れ、お姉さまモードになるとテイオーを抱き起した。

 

「大丈夫ですか?」

「……」

 

テイオーは泣いていた。

何が起きたのかさっぱりわからないゴールドシップは焦った。

だがひとまずここに置いておくのも体に悪い。

死闘を繰り広げて体が疲弊しているはずだし、エネルギーが足りなくて体が冷えるはずだ。

ひとまず甘いものでも食べさせるために、レース場近くの喫茶店に入るのであった。

 

 

 

だいたいこういうところはウマ娘用のメニューが置いてある。

予想通り、ウマ娘用のメニューがあったので、温まるようにと特大お汁粉を二つ頼む。

どんぶりの大きさのお汁粉がすぐに出てきた。

 

「ほら、食べましょう?」

「……」

 

食べるように促すが、どことなくぼんやりしたテイオー。

全然反応がなかった。

ひとまず蓮華で掬って、口にお汁粉を突っ込んだ。

 

「あちゃああああい!?」

「あ、やっと反応しましたね」

「なに!? なんなの!?」

「お汁粉星人の襲来です」

「何それ!? 怖いんだけど!?」

「だから早くお汁粉食べましょう。食べないとまたお汁粉星人が来ますよ」

「というかお姉さん誰!?」

「私のことはそうですね、お姉さまと呼んでください。ポニーちゃん」

「え? え?」

「ひとまずもう一度、お汁粉星人襲来です。えいっ!」

「ふぎゃあああああ!!」

 

熱さのせいか、甘さのせいか。

少しテイオーは元気が出ていた。

 

 

 

また口に熱々のお汁粉を突っ込まれてはたまらないと、テイオーは自分でお汁粉を食べ始めた。

 

「で、どうして落ち込んでたの、ポニーちゃん」

「……」

「何があったか教えてくれないかな?」

「どうせ、お姉さんには関係ないでしょ」

「ふむふむ、そういう憎まれ口を好きな子に言っちゃったのかな?」

「!?」

「負けたからって八つ当たりはいけないなぁ、ポニーちゃん」

「……見てたの?」

「見てなくたってわかるわ。あなたがどこのだれか、有名人なんだから私だって知っているし」

「……」

「普段冷静なあなたがそういう精神状態にいるのを見れば、ああ、他の子、そうね、あなたを一番応援してくれていた子にも似たような事言っちゃったんじゃないかなって簡単に推測はできるわ」

「……」

 

顔や耳に感情は出やすいし、テイオーの考えは非常に読みやすい。

勝負の相手だし、ある程度周りの人間関係や性格も情報収集しているからゴールドシップにとってそれくらい予想するのは簡単だった。

だが、そうなるとテイオーが悪態ついてしまった相手はおそらくキタサンブラックだろう。

大丈夫だろうかと、テイオーが見えていない位置でノールックでマックイーンとサトイモにメールを打つ。

 

「ほら、元気出しなさい。今度はお餅星人襲来よ」

「ふぎゃあああああ!?」

 

油断していたテイオーの口にお汁粉を突っ込み、メールの返信を確認する。

どうやらキタサトはマックイーンと合流できたらしい。

少し用事ができたことと、カノープスに合流するようにお願いするメールを送った。

 

 

 

さて、今後どうしようか。

キタサンブラックとの関係もどうにかした方がいいだろう。

一度詫びを入れさせる仲介でもするべきか。

しかし、そもそもリギルのメンツもテイオーを探しているのではなかろうか。

後はトレーナーの地位にいるはずのルドルフなどもどうしているのか。

必死にお汁粉を食べるテイオーをひとまず置いて、あたりを探すべく外に出た。

 

「こんばんは、シンボリルドルフさん」

「こんばんは、ゴールドシップ君」

 

そうしてゴールドシップは皇帝に出会ったのであった。


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