黄金船の長い旅路 或いは悲劇の先を幸せにしたい少女の頑張り 作:雅媛
「バカですの!? バカですの!? バカなんですの!?」
「そうポリポリすんなよマックイーン。三回言わなくてもわかってるって。ほら、ポッキーやるから。京都限定の抹茶味だぜ」
「ポリポリ…… って騙されませんわよ!」
疲れて寝てしまったテイオーを抱え、一度マックイーンと合流したゴールドシップ。
キタサンブラックとテイオーが揉めたらしいこともマックイーン経由で聞いていたので、年少二人は今カノープスに預かってもらっている。
二人ともネイチャの髪をモフモフしてどうにか機嫌が戻っているらしい。
ネイチャパワー凄いな、とゴールドシップも感心した。
そしてテイオーである。
このままゴールドシップだけならまだしも、揉めたキタサンブラックと一緒に帰るのはさすがにやばいだろう。
とすると年少二人とマックイーンだけ先に帰すか、というところだ。
という事でその辺りの話をマックイーンにしたら怒涛の三連悪口であった。
「パパ~ たすけて~♪ マックイーンが怖いの」
「うるせえのしかかるな! 重い! 暑い!」
「ロリコンのリョテイにキタちゃんとサトちゃん預けたら大変な大変なことになるからダメですわ!」
「おいマックイーン、のしかかるな! 重いんだよお前も! あと誰がロリコンだ!」
「はぁ? マックイーン! パパはロリコンじゃなくてむしろ熟女好きだぞ!」
「おいゴールドシップ! お前はお前で不名誉な発言し始めるんじゃねえ!! あと重いって言ってるだろうが!!」
口論するマックイーンとゴールドシップ。その二人に挟まれて潰れているキンイロリョテイは心底うんざりしていた。
リョテイはこの場ではカノープスリーダーとして話し合いに参加しているのだが二人の痴話げんかに挟まれるだけになっていた。
別にあの年少二人をマックイーンと一緒に連れていくこと自体どちらでも構わない。どうせ府中までみんな今日中に戻るのだから引き受けるのも問題ない。
問題はこの二人の面倒な喧嘩と、それをなぜかリョテイの頭上でやっていることだろう。
二人とリョテイは身長差が40cmもあるから二人の胸部にリョテイの頭が挟まっている状態だ。
暑いし重いし、最悪であった。
「さすがに今日はテイオーはリギルで連れて帰った方がいいと思うからこちらで預かるよ。幸いルドルフはマルゼンスキーと別口で帰るみたいだしね」
話し合いに交ざってるのはもう一人、リギルからフジキセキが来ていた。
テイオーの応援に来ていたリギルだが、ライブ後テイオーを見失い、その後ルドルフだけ帰ってきてテイオーをスピカに移籍させるとか言い出したものだから大混乱であった。
ひとまず京都まで車で来ていたマルゼンスキーがシンボリルドルフを引きずって車で帰る事となったようだが、いまだにリギル内で混乱が続いているようだった。
「大丈夫なのか?」
「リギルの問題もあるからね。ひとまずテイオーとこちらでもよく話しておくよ。それに、そっちもちゃんと説明した方がいいでしょ?」
「説明するのですわ! ですわ!!」
マックイーンが怒りと混乱で語彙を失いつつあり、ゴールドシップに迫るマックイーンに押しつぶされて、リョテイが体力を削られていた。
「ほかにも沖野トレーナーに話したりも必要でしょ。たぶんそっちに移籍する方向でまとまると思うけど」
「そうだな。面倒掛けてごめんな。ほらマックイーン、八つ橋食って落ち着け」
「いい加減俺のことを放してくれないか」
「パパは譲らない!」
「ですわ! ですわ!!」
「じゃあひとまず、テイオーは預かっていくから」
大混乱しながらいちゃつく三人のことをキセキはあきらめたようだ。
ベンチで眠っているテイオーをフジキセキが抱きかかえた。
お姫様抱っこである。
「フジ、俺のことも助けてくれ……」
「リョテイ、頑張れ」
「……」
「ですわ!!」
「ほら、マックイーン。ひとまずスイーツ食って落ち着け」
「ですわ!!」
テイオーはキセキが連れて行った。
もぐもぐと饅頭を食べ始めるマックイーン。
リョテイは死んだ目をしながら、いまだ二人に挟まれていた。
後日、テイオーは正式にリギルからスピカへ移籍することになった。
さすがに捨て置けなかったゴールドシップの説得に、マックイーンが折れた形だ。
これが今後どう転ぶかは、誰にもわからなかった。