シノンと共にダンジョンの奥へと進んでいく。まあ、入り口がどっちかもわからないし、どこが奥なのかもわからないけれど。ただ、トラップを警戒しながら進んでいるので遅い。
「出られる?」
「最悪、死に戻りかな」
「へカートを失いたくないから、よろしく」
「任せて。銃弾も勿体無いし、光剣で行くから」
「うん」
シノンも狙撃銃ではなく普通のガバメントを装備して付いてくる。どんどん広くなって来て、気持ち体感温度が下がって来た。それでも奥に行くと気温が下がってくる。
「ねえ、寒くない?」
「そうだね。まあ、原因はアレみたいだけど」
奥の方に巨大な二足歩行の巨大な人型のエネミー。手には棍棒を持つ青いトロールだ。身長5メートルという巨大な姿はまさに強力無比なエネミーといえる。
「ねえ、あんなのと戦う気?」
「もちろん。援護よろしくね」
「はぁ……わかった」
シノンが近場で寝転がって狙撃体勢に入る。シノンが持ち出したのは先程のへカートⅡだ。そして引き金を引くと轟音と共に弾丸が発射されてトロールの頭部に命中する。俺は走りながら光剣のスイッチを入れて刀身を作り出す。アンチマテリアルライフルの一撃に体勢を崩したトロールは慌てて接近する俺に棍棒を振り下ろしてくる。それを横に飛んで避けると地面にクレーターが出来た。
「なんつー馬鹿威力」
足に接近した俺は光剣を高速で振るって切り裂いて行く。トロールは俺を踏みつぶそうとするが、見切って指の付け根を切り裂いてやる。リアルに準じたのか、クリティカルヒットが入って倒れてくるトロールを慌てて避ける。直ぐに倒れたままのトロールの頭部の後ろにまわって瞳に光剣を突き刺して継続ダメージを与える。
「――ッ!!」
暴れまわり、俺に向けて自分ごと棍棒で殴ろうとするが、手にシノンが撃った弾丸が命中して軌道がずれる。その間に離れて起き上がったトロールをもう一度転かす。そして、攻撃。何度か繰り返すとトロールは倒れてドロップが手に入った。
「楽勝だね」
「いや、普通はもっと大変だから」
「そう? まあ、ドロップは美味しいし次行こう」
「そうだね」
どんどん奥へと進んでいく。何度もトロールが出てきたが、アルゴリズムを理解した後はもはや雑魚だった。更に進んでいくと広大な広場のような場所に着いた。そこには高速で動き回る馬に乗った黒い騎士が居た。明らかにやばい。
「よ~し、張り切っちゃうぞ」
「援護はするからよろしく」
相手はこちらに気づくと突撃(チャージ)してくる。軌道を見極めて横を通る瞬間にすくい上げるようにカウンターで切り裂く。時速60キロくらいでている速度にカウンターを合わせるのは結構大変だ。まあ、銃弾には及ばないけど。
相手の物質剣を光剣で受け流し、近距離から弾丸を瞳に叩き込む。直様馬の攻撃を避けて攻撃する。チャージを封じる為にインファイトを行い、何度も剣閃を交差させる。微々たるダメージしか与えられないが、掠っただけでこちらのヒットポイントは半減する。
「ちぃっ!?」
馬が口を開けると巨大なビームを放って来る。それをなんとか避けると今度は直ぐに大剣が迫って来る。この剣の攻撃はパッシブで剣閃を飛ばして来るので掻い潜るしかない。禍々しい鎧と同じ鎧の馬といい、厄介でしかない。
「あはっ、あははははははっ、たっ、のっ、しぃいいいいいっ!!」
テンションが上がってきてどんどん身体を加速させて行く。相手の剣を受け流すのではなく、瞬時に何発も当てて軌道を変えさせ、突きを放つ。直様、連続で切り裂いて頭を下げて攻撃を避ける。跳ね上げるように手首を切って首を狙う。馬の動きによって回避された所を無理矢理下に軌道を変えて馬を切る。ついでに蹴りも放って距離を取る。距離を取った瞬間にシノンからの援護射撃が飛んでくる。それも馬が口を開いてチャージしていた場所に。結果、馬は口内で爆発して少なくないダメージを負った。
「ほらほら、もっともっと来いよ!」
「ウォオオオオオオオオオオオオオオォォォォッ!!!」
ヒットポイントが半分を切ると全身から真っ赤なオーラを噴出させて速度が2倍くらいに上がったが、まだまだ追いつける。相手の攻撃を計算して事前に避けてひたすら攻撃する。
「飛天御剣流、九頭龍閃(くずりゅうせん)!」
九つの急所を連続で切って突く。
「遊びすぎでしょ」
「いいじゃないか!」
格闘と銃撃も織り交ぜて徹底的に戦う。しかし、だんだんと物足りなくなってきた。
「本物の銃弾より早く動けよ!」
「無理だから。普通の人じゃ勝てないから」
「ちぇー」
馬と黒騎士の攻撃を避けて下から切り裂き、蹴りで黒騎士を叩き落とし、その上に飛び降りて光剣を顔面に突き刺したら終わった。
「まあまあだったね」
光剣と拳銃を放り投げて、回転させながらホルスターと所定の位置にセットする。
「何か出た?」
「アクセラレートの装置だって」
「なにそれ」
「加速装置だね。短時間だけ速度が上がるって」
「キリトが持ったら駄目な奴ね」
「だねえ。後、パワードスーツかな。一応、2対のエネミー扱いなのか、ボスだったのかも」
「パワードスーツ」
「装備していい?」
「どうぞ」
黒をメインに赤を施した鎧はどちらかというと見覚えがあった。前世でやったエロゲー三極姫に出て来た鄧艾 士載(とうがい しさい)の鎧にそっくりだった。黒い髪の毛も同じだし、垂れ流したままだと同じになる。
「似合ってるね」
「ありがとう。でも、使うのかね?」
「さあ? 使えばいいんじゃない」
「シノンが装備するのも安全性が上がっていいんだけど……」
「無いとは思うけど前衛のキリトが落ちたら危ないからよろしく」
「まあ、そうだね。それじゃあ出口を探そうか」
「うん」
しかし、二刀流も楽しそうだし、買おうかな。そんな事を考えながら出てくる騎士達を斬り殺していく。あちら側はトロールが出てきたけど、こちらは普通の歩兵の騎士だったので相手にもならない。
「ガンガンにレベル上がるね」
「まあ、ペアでこんな所来てたらね」
「普通は狩れないでしょうしね」
縦横無尽に動き回って敵に仕事をさせずに屠っていく。サブミッションとかも試してみたら結構有効だった。それにシノンの射撃である程度ダメージが入っているので簡単だ。
「お、セーフティエリアだね」
「やっと戻れるね」
現実へ戻る為のセーフティエリアを見つけて俺達はそこでログアウトした。まだダンジョンの中だけど、頑張って抜け出さないとね。