ダンジョンの下に落ちて狙撃ポイントを見つけたとしか書いてませんでしか?
修正
2025年4月、ガンゲイル・オンラインに3日遅れてログインした俺はキャラクター作成をする事となった。遅れた原因は仕事の過密スケジュールだが、お金が欲しかったので仕方ない。目的はちょっと大きな買い物をする為だ。そして、そっちは問題なく弁護士を通して購入出来た。
『ようこそ、Gun Gale Onlineへ。まずはキャラクターの名前を作成してください』
名前はそのままキリトにしておく。取られてないみたいで、無事に登録できた。
『次にクレジットカードと口座の登録をさせて頂く事ができます。如何いたしますか?』
Yes./No.と選択肢が出てきたのでクレジットカードと口座の登録をする。このゲームは日本で稼働しているVRMMORPGで唯一リアルマネートレーディングが可能であり、これによって生計を立てる事もできるとの事だ。電子マネー還元レートは100クレジット=1円でクレジットがこのゲームの通貨単位だ。
このガンゲイル・オンラインは最終戦争後の荒れ果てた遠い未来の地球が舞台で、剣と魔法ではなく銃火器による銃撃戦がメインとなっており、プレイヤーは筋力(STR)、敏捷力(AGI)、耐久力(VIT)、器用度(DEX)などの6つのステータスと数百種類のスキルを自由に選択・上昇させて、自分だけの能力構成(ビルド)を構成していくのだ。このステータスはあくまでも補助機能であり、元の身体能力……反射神経によってはトランザムとかほざく事もできる。脳量子波とか。ALOでキリトが異常な速度を出した理由だったりするそうだ。いや、詳しくは知らないが。
ガンゲイル・オンラインの説明に戻るが、このゲーム内に登場する銃器は大きく分けて実弾銃と光学銃の2つがあり、双方にメリット・デメリットがある。実弾銃は現実の銃器をモデルとしている為、マニアも多くいるそうだ。また、ゲーム的な面白さを盛り込むため、銃撃者には自身が発射する弾丸の
『アバターを自動生成します。その為に必要なデータを得る為、現実の身体をスキャンします。よろしいでしょうか?』
「了解」
『スキャンを開始します。身体を指示に従って触れてください』
指示通りに身体の至る所を触れる。股間まで触れさせられたのには驚いたが、これが一番性別を確定させるのにあっているのだろう。
『スキャンが完了しました。こちらのアバターが貴方となります。なお、再度作成も可能ですが、課金アイテムが必要となります』
現実の俺の姿が映し出されたが、どう見ても女の子にも見える。いや、男性としても見えなくはない。かろうじて。まあ、構わないんだけどね。とりあえず瞳の色を黒っぽいのから紫色に強くなったくらいしか変化がない。ここまで神様の修正力が効いているのか。流石は神様印の容姿だ。
『アバターの外見をデコレーションするアタッチメントなどは課金のもございます。また、強化アイテムも販売しております』
見てみるとアバターのガチャガチャや、武器のガチャガチャなどがある。武器を決めるのにこれに任せて見るのはいいかもしれない。試しに10回ほど回してみると光剣とデザートイーグル.50AE、弾薬セット×10が3つ、回復薬セット×10が3つ、プレゼントボックスが2つだった。とりあえず、画像で見たキリトはこっちでも剣を使ってたし俺も使おうかな。反射神経なら負けてるとは思わないし。今の俺は銃弾雨ですら避けれる。銃からアサルトライフルに変えて数を増やしたりしてるしね。
「そういえば他の課金アイテムに何があるんだろ?」
『こちらをご参照ください』
出てきたページをみると色々と便利グッツがある。とりあえずアイテムストレージを30万クレジットで10枠と1枠の容量限界が増やせる。最大強化45回で現在持ってる枠が50だから最大強化すると500枠になる。他にも最大強化すると1枠の重量制限がなくなるみたいだ。まあ、1枠99個までという制限はあるんだが。ちなみに30万クレジットは3千円だ。13万5千円で最大強化できる。
「ヒャッハー!」
連打して最大強化してしまう。次に一ヶ月間の経験値、ドロップアップの1万円コースに入って、パーティーにも恩恵を与える強化ブートパックなる5万円のコースに入る。これと蘇生アイテムを何個か購入してページを閉じた。
「詩乃に怒られそうだな~まあ、その前に母さんはともかく直葉にバレたら五月蝿いか」
ようやく次へのページを押すとスキルの選択とステータスの割り振りを決めるページになった。現状でのスキル枠は二つなので体術と腕力強化を取る。なぜならこのままだデザートイーグルが持てないからさ。技術は補正がなくてもどうにかする。敏捷は少しは欲しいので敏捷に振っておく。体力は当たらなければどうという事はないという事でとりあえず振らない。ちなみにステータスは敏捷に特化させ、スキルは腕力強化だ。これでデザートイーグルは問題なく装備できる。最悪課金だけど振り直し可能なアイテムが一週間だけ特別に売っているのでこれを買えばいい。
『全ての設定が終了しました。これよりSBCグロッケンへと転送します。よろしいですか?』
「いいよ」
『では、転送します。どうぞ、ガンゲイル・オンラインの世界をお楽しみください』
身体が光に包まれて移動させられる。そして、次の瞬間には空一面が薄く赤みを帯びた黄色に染まっていた。正に黄昏時という感じだ。この世界は最終戦争後の地球という事からそのせいなのかも知れない。そして、眼前に広がるのはGGO世界の中央都市であるSBCグロッケン。メタリックな数々の高層建築郡が存在し、半透明のチューブのような空中回廊がビルとビルの間を繋いでいる。その中を人や車が通っている。ビルとビルの間には他にも広告が流れており、音も大きくまるで洪水のようだ。もちろん、地面は土などではなく金属プレートで舗装されている。
背後を振り向くと、そちらには初期作成したキャラクターの出現位置になっているのか、ドーム状の大きな建物がある。更に視線をずらすとメインストリートがあり、迷彩服を着ているプレイヤーや軍服を着ているプレイヤー、更にはボディアーマーや防弾ジャケットを着ているプレイヤーが見える。もちろん、俺と同じように初期装備なのか、ラフな格好をした人も居る。
「にしても、やっぱ男性が多いね」
恐らく男女比は7対3、下手したら8対2だろう。まあ、それでもやっている人は居るのだけど。それにここは戦って殺し、奪う事を目的としたゲームだ。何も対象は敵性型NPCのエネミーだけじゃない。プレイヤーも敵なのだ。持っている銃は装飾ではなく、純然たる殺戮の道具だ。そう、この華奢ながら凶悪的な力を秘めている身体と同じだ。楽しくなってきた。ようやく暴れられる。ソードアート・オンラインをやる準備は整えて来ている。本当ならあくまでもソードアート・オンラインから始めるつもりだったが、このガンゲイル・オンラインは詩乃に誘われたからやる事にしたんだ。でも、手を抜くつもりはない。全力で楽しむ。
「和人?」
そう思っていると、呼ばれたので振り返る。そこにはさらさらと細いペールブルーの髪を無造作に流してショートカットにし、額の両側で結わえた細い房がアクセントになっている女の子が居た。くっきりした眉の下に猫科を思わせる大きな藍色の瞳が輝き、小振りな鼻と色の薄い唇が言葉を発する。
「和人よね?」
「そうだよ。詩乃?」
「うん。っと、そうよ。こっちではシノンね」
どうやらこちらでは強気に行こうと思っているみたいだ。確かに女の子がこんな世界で過ごそうと思ったらそっちの方がいいだろう。それよりも問題がある。
「……シノ……ン……」
「どうしたの?」
「あっ、いや。なんでもない」
詩乃の、シノンの姿は見覚えがあった。そう、あれは髪の毛が長いキリト、つまり俺の姿の時に横に居た子だ。ただ、マフラーとか装備は違っていて、迷彩柄のジャケットと長い厚手のズボンだ。それぐらいの違いはあれど間違いなく原作キャラだ。でも、それを言うなら俺だって原作キャラではある。まあ、SAOなんてやれてないけどな。それにこの世界で生きて既に十年以上経ってるんだ。俺だってこの世界の存在だし原作なんて知ったこっちゃない。つまり気にする事もない。
「それで、和人の名前は? そのままじゃない方がいいって聞いたけど……姿だけじゃなくて名前までそのままなの?」
「え? 瞳の色だけは変えたよ」
「無意味でしょ」
「……ごもっとも。まあ、名前はキリトにしたからそう呼んでくれ」
「わかった。それじゃあ、これからよろしくね」
「ああ。こっちでもフレンド登録するんだよな?」
「そうよ。えっと、こうだったかな……」
たどたどしくシノンが操作して俺に申請を送って来るので申請を受ける。するとフレンドリストにシノンの名前が登録された。あちらも一番上に俺の名前が出ている。ん? なんかおかしい。
「確か誘ってくれた人が居るんじゃなかったけ?」
「ええ、いるわよ? それがどうかしたの?」
「いや、フレンドリストに登録されてなかったみたいだし……」
「っ!? と、登録してなかっただけよ。ほら、さっさと行くわよ」
シノンが俺の手を掴んでグイグイと引っ張っていく。色々な人に注目されてるけどいいのかね? まあ、俺は視線に慣れているしどうでもいいけどね。
「どこ行くんだ?」
「まずは装備を買いに行くのよ」
「ああ、装備ならあるよ」
「え?」
「課金してガチャガチャ回してみた」
「……そう。何が出たの?」
相変わらず歩きながら質問してくるので素直に答える。
「光剣とデザートイーグル.50AE、弾薬セット×10が3つ、回復薬セット×10が3つ、プレゼントボックスが2つかな、光剣とデザートイーグルを武器にするつもりだよ」
「結構高いのが出たわね」
「まあね。あっ、そうだ。これプレゼントするよ」
アイテムストレージからプレゼントボックスを取り出してシノンに渡す。
「え? 悪いからいいわよ。それに和人……キリトには色々と世話になってるし……」
「いいからいいから。それじゃあ、材料費だすから今度お弁当作ってきてよ。母さんは仕事で忙しくて作れないし、俺も作る気ないし」
「……まあ、それぐらいならいいわよ。でも、味や種類の保証はしないわよ」
「わかってるよ。濃硫酸45ccとか硝酸カリウムとかクロロ酢酸とか入れなかったら大丈夫だ」
「何それ?」
「いや、残念な事にそんなのを料理に入れる奴がいてな……」
「有り得ないわよ。王水になるじゃない。そもそもどうやってそんなの手に入れるの?」
「だよな……まあ、普通は有り得ないよな」
「そうね。でも、望むなら使ってあげようか? もちろん、食べて貰うけど」
「遠慮するよ」
片手を上げて降参を知らせる。そもそも王水は酸化力が非常に強く、王水との反応で生じた金属化合物はその金属の最高酸化数なので通常の酸では溶けない金や白金などの貴金属の溶解に使うものなのだ。
「っと、ここね。ここなら防具も売ってる大型マーケット……っ」
慌ててシノンが手を離すと、前を向いてスタスタと歩いていく。
「おーい」
「ほら、早く行くわよ」
「了解」
走って並んだ時に見えたシノンの顔は少し赤くなっていた。どうやら、今頃気が付いたみたいだ。
店内に入ると、様々な光が乱舞し、喧騒が聞こえてくる。それはテーマパークのような感じすらする。しかも店員のNPCが露出の多い服を着た美人でその手に握られているのが黒光りする銃だったり、サブマシンガンとかなのだ。しかもそれを笑顔で売りさばいている。
「なんというか……凄いな」
「そうよね。私も初めて来た時には驚いたわ」
「それとここは初心者向け?」
俺が着ている服と似たような物を着ている人が多い。俺が着ているのはオレンジ色のカジュアルウェアの奴だが、結構似合っていていい感じだ。
「防具って要るのか?」
「いや、要るに決まってるでしょ……せめて防弾ジャケットとか防刃のアンダーウェアとか」
「それもそうだな」
「私が言うのもなんだけど不安ね……」
とりあえずアンダーウェアを購入しにいく。千クレジットしかないので安物を買っておく。他にも服をシノンと一緒に買っていく。
20分ほどで銃弾や通信用のヘッドセットなどの買い物が終了して、中にある部屋で着替えて来た。見た目は変わっていないけど防御力は確かに増えた。それにガンベルトとホルスターを買ったのでデザートイーグル(黒色)と光剣を設置しておいた。弾薬はセットで3種類まで選べる奴だったので50口径用の50.AE弾を選択して120発×10が3つで合計3600発貰えた。これらはアイテムストレージに入れて置いた。残り2種類が問題だ。
「シノンは銃って何を使うんだ?」
「その……ハンドガンはまだ無理だったから、アサルトライフルとスナイパーライフルを使ってる」
ちょっと言いづらそうにしながらも答えてくれた。
「そっか。あっ、プレゼント開けてみようか」
「そうね」
「さて、なっにが出るかな~」
俺が開けると中からアバターアイテムの髪留めが出てきた。左右に取り付けるタイプみたいだ。
「うっ、嘘……」
「どうした?」
「こんなの出ちゃった」
シノンが出したのは1165mmもある軍用のスナイパーライフル。名前を確認してみると、Heckler&Koch MSG90という名前が出ていた。説明では軍用スナイパーライフルとして開発された経緯からセミ・オートマティックにもかかわらず、高い命中精度と耐久機能性を両立しており、完成度が非常に高い品物だと書かれている。実際に命中補正や威力補正もかなり高い物になっている。
「ならこれあげるよ」
「ライフル弾じゃない。というか、悪いわよ」
ライフルの弾を大量に渡してやった。あとは便利そうなアサルトライフル辺りにしておいた。容量最大のお陰で空きには余裕があるしな。
「いいの?」
「どうせ使わないし、シノンの援護射撃に期待するから。ああ、そうだ。アサルトライフル頂戴。それでいいよ」
「わかった。じゃあ、護衛と前衛はよろしくね」
シノンがアサルトライフルを渡してくる。弾も貰った。こっちのはH&K MSG90用のにして渡してあるから問題ない。ライフルの方はまだH&K MSG90が持てないのでそっちで練習するみたいだ。
「了解。じゃあ、これからどうする?」
「早速ミッションに行ってみる?」
「それいいね。戦いたくてウズウズしてたよ。対人戦とか、中学生以来だし」
「何してたの?」
「秘密」
「そう。別にいいけどね」
「まあ、簡単に言えば喧嘩売られて買っただけだよ。一体多数だったけど歯応えなくて結局、こちらから仕掛ける事はやらなかったけどね」
「当たり前よ。っと、こっちよ」
「うん」
案内された所は酒場で、ここで依頼を受けるみたいだ。しかし、色んなプレイヤーから注目されてるな。喧嘩売って来ないかな~?
「あ、パーティー組んどかないと……こうだったかな。あれ?」
「こうじゃない?」
俺はシノンの横から画面を覗き込んで公式サイトに書いてあった方法をシノンに教えていく。
「あ、ありがと(近い)」
またシノンが赤くなってる。まあ、ちょっと近すぎたか。下手したらハラスメント警告が……って出てやがるな。
「押してみよっか」
「やめて」
「しょうがないな。まあ、弾も貰ったし許してあげる」
「よかったよ」
シノンがNoを押してくれたので警告が消えた。もちろん、パーティーの方はちゃんと組んだ。
「じゃあ、簡単な討伐ミッションを受けましょうか」
「そうだね」
「すいません、ミッションを受けたいんだけど」
「ミッションですね。貴方達に依頼できるのはこちらにある物ですね」
シノンがカウンターに居るお姉さんに話しかけて、カウンターの上に置かれた装置に指を乗せると直ぐにピッ、という音が聞こえて仮想スクリーンで依頼が提示された。どうやら、指紋認証で本人のデータを読み込む演出がされているようだ。
「どれにする?」
「どんなのがあるんだ?」
「簡単なのはお使いね。もちろん討伐系もあるけど」
「討伐かな。戦いたいし」
「じゃあ、討伐系ね。メタルドッグとメタルゴブリンね」
「なにその名前」
「全身鉄で覆われているエネミーよ。基本的にそのままつけられてるみたいね。あとフィールドに蜘蛛のエネミーも出るから」
「それはそれは、面白そうだね」
「そうね。出会った時が楽しみね」
「ミッションを受領しました。討伐数は最低20体です」
シノンがミッションを受けたので俺の方にも表示された。しかし、どうなるかね。全身が鉄なら実弾はあんまり効かなさそうだ。
「あっ、お昼ご飯の時間ね。どうする?」
「一旦落ちて待ち合わせかな。そういえばこのゲームってお腹減るんだよね」
「そうね。何か食べた方がいいかな」
「じゃあ、どっか店でも入ろうか」
「じゃあ、奢るね」
「む」
「ここでは私の方がお金を持ってるんだから大人しく奢られてよ」
「そっか。わかったよ」
「じゃあ、こっちよ」
それからシノンに案内されたお店で一緒に食事をした。奢って貰ったし、丁度いいので決行する。
「シノン、動かないでね」
「何? って、何するのよ!」
シノンの顔を掴かもうとしたら弾かれた。ハラスメントコードは鉄壁か。パーティーなら大丈夫だと思ったんだけどね。
「これをお礼にあげようと思ってね」
「髪飾り……?」
「プレゼントボックスで出たけど俺は男だし使わないからシノンにプレゼント。自分で付けてシノンの反応を楽しみたかったんだけどな~」
「アンタは……まあいいや。ありがたく貰っとく。どうせ引かないだろうし」
「そうだよ。これは奢って貰ったお礼なんだからね」
シノンが受け取ってくれて付けてくれた。
「うん、似合ってて可愛いよ」
「っ!? 五月蝿いっ! ほら、ログアウトするわよ」
「OK。集合は1時間後でいい?」
「ええ。私は昨日の晩御飯のが残ってるからそれでいいけど、そっちは?」
「こっちは当番制で今日は妹だから大丈夫。だと思いたいけど最悪ご飯はあったはずだから塩かけて適当な具材を突っ込んでおにぎりにするから平気だよ」
「食生活が不安になるわね」
「殆ど冷凍食品だしね。まあ、直葉も作れるけど部活があるし、俺は仕事があったりしたからね。当分仕事は無いけど」
「レトルトばかりじゃ栄養面が偏るじゃない」
「むしろカロリーメイトとサプリメントなどで補強」
「はぁ……これはちゃんと作ってあげないと駄目ね」
「いや、半分くらい冗談で言ったから本気にならなくても……」
「残したら……」
「残したら?」
「撃ち抜くから」
「Yes,ma'am」
H&K MSG90をこれ見よがしに構えられたらどうしようもないっての。
「まあ、いいや。可愛い女の子の手料理が食べられるんだから文句は言わないし、ちゃんと完食するよ」
「ほら、ログアウトするわよ」
「わかった。じゃあ、また後で」
「ええ」
真っ赤になってそっぽを向きながらログアウトの操作をしたシノンに遅れながら俺もログアウト操作をして現実に戻る。
ベットから起き上がって、アミュスフィアを頭から外して軽く身体を動かしてから部屋を出て下に降りる。
「お、お兄ちゃん」
「直葉、ご飯何?」
「これ」
「……これが女子力の違いか」
「なっ、何よ!」
「いや、別に」
テーブルの上にあるコンビニで買われてサンドイッチの封を開けて適当に食べていく。
「そういえばお兄ちゃん。アミュスフィアが届いてたけどVRMMOやってるの?」
「ああ、やりだしたよ。確か直葉もやってるんだったよな?」
「うん。ALO……
「知ってる。あと、直葉はまたやりたい?」
テレビを付けると俺が出ているコマーシャルが流れていた。ついでにモデルの仲間や母さんの知り合いなどで作った世界初VR作成の映画の宣伝もしてある。ネタは色々とある。fate/zeroとFate/stay nightの両方を作成して実際にネットで流した視聴1回1500円、ダウンロード15000円で販売したらバカ売れした。この他にもノワールとか、ファントムなども映画化させてこの世界に送り出してやった。SAOが売り出される事はわかっていたし、ならば買うしかないだろう。
「そりゃやりたいよ。やっぱり空を飛ぶのは楽しいし、気持ちいいから」
「そっか。じゃあ、もうすぐゲームが再開するから楽しみにしてるといいよ」
「どっ、どういう事なの!?」
「やっ、あれってSAOのコピーなんだよ。それでやりたかったから……買っちゃった」
「え? まさか、サーバーごと?」
「うん、サーバー丸ごと全部。殆ど無料だったしね。いや、色々とやった。なんなら直ぐにプレイできるけど」
「本当? って、まさか客室埋めてる荷物って!?」
「うん。組まないといけないから専用の人を呼ばないといけない。まあ、やっても他の人は居ないけどね。運営の人を雇うの今、丁度始めたばかりだし」
俺が指さしたテレビには丁度その話が出ていた。テレビの中の俺はアルヴヘイム・オンラインを購入した事を告げて運営の人を募集する事を伝えている。
『なぜこれを購入なされたんですか?』
『映画をする為にもありますが、作成メンバーの中にSAOで家族を亡くした方がその場所に行ってお参りをしたいそうなんですよ。それにどんな場所なのかはちゃんと公開したいと思いますし、何より出た利益を遺族の方に還元しようという話になりました。あのSAOははっきり言って完成度がかなり高いですから、使える物は使わせて頂き、遺族と被害者の方の支援に当てさせて頂こうかと思います』
それからGGOをプレイする事や、その他の仕事など他の人と話していく。
「あっちとこっちとで言ってる事全然違うよ、お兄ちゃん!」
「はっ、内と外が違うのなんてよくある事だぞ、妹よ。良かったな、これで一つ賢くなれたぞ」
「この兄は……まあいいか。お兄ちゃんはお兄ちゃんだし」
「ちなみに今すぐやるならお金を出して業者を呼ぶように」
「やっぱり……大人しく待ってる」
「よろしい」
まあ、これから次第だけどね。とりあえず広告塔は俺がするし、他の人達がちゃんと準備をしてくれるはずだ。ああ、先に映画を撮らないといけないな。いっそ銃も実装してしまうか……バランス調整が面倒だしなしか。とりあえず、今はGGOを楽しもうか。