シノンと共にガンゲイル・オンライン   作:ヴィヴィオ

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第25話

 

 

 

 

 

 

 都内某所の高級喫茶店

 

 

 

 そこでは男性二人と少女二人が会話をしていた。テーブルの上には高価なケーキが多数置かれ、美味しそうな匂いをただよわせている。それに合う紅茶も用意されている。

「それで今回はどのようなご用件でしょうか?」

「私や姉上、兄上をお呼びになったのです。それ相応の事でしょうか?」

 赤みのかかった綺麗な銀髪を持つ二人の美少女が答える。

「ええ、もちろん」

「まあ、俺は蚊帳の外だろうがな」

 男性二人はスーツに身を包み、身だしなみが整っている。男性二人のうちの一人が携帯端末を取り出して他の三人へと見せる。

「まずはこれを見て欲しい」

「これはネットインタビューですね」

「GGOの特集ですか」

「GGOといやあ、プロが居るんだよな」

「ええ、日本で唯一リアルマネーに還元できるゲームですね」

「そんなのがどうしたんだよ?」

「とりあえずこのまま見てください」

 男性が動画を再生させる。画面には二人の男性と女性が一人、会話を行っている。

『もうすぐBOBが始まりますが、今回は前回のBoB(バレット・オブ・バレッツ)で活躍されたお人達に来ていただいております。まず前回の優勝者である闇風さんです』

『どうも』

 眼鏡を掛けた髪の短い男性が答える。彼の頭上にはプレイヤーネームである闇風という文字が出現している。

『次に三位であるゼクシードさんです。準優勝者のシノンさんですが、彼女は忙しいとの事で残念ながら参加して頂けませんでした』

『よろしく』

『それではお二方に話を聞いてみましょう。まずは意気込みについてです。闇風さん、どうぞ』

『私の目的は前回戦った者との再戦だ』

『準優勝者のシノンさんですか?』

『いや、ダースベイダーの方だ』

『彼も今回のBoBに参加されるのですか?』

『個人として出るそうだ。ここしばらく、私は彼を倒す為に訓練を重ねてきた。次は勝つ』

『あれは運営が用意したものだろう。個人としてなら楽勝でしょう』

『馬鹿を言うな。彼はアバターの外見を変えて参加していただけだ』

『いやいや、ありえませんって。どこの世界に銃弾を避ける人がいるんですか』

『ここにいる』

『『えっ!?』』

『私もGGOでなら避けられる』

『無理ですって。アジリティ万能論なんていうのは所詮単なる幻想なんですよ。確かにアジリティは重要なステータスです。速射と乖離この二つの能力が吐出していれば強者たりえた、今まではね。しかしそれはもう過去の話ですよ。サブマシンガン系統の攻撃を全て避けるなんて現実的じゃありません。それこそ予測でもしていないとーー』

『予測はできる。銃とは所詮、直線状にしか飛ばない武器だ。ならば弾道を予測し、発射される前に回避行動を取ればなんの問題もない』

『んな無茶苦茶な』

『わ、私でも無茶だと思いますが・・・・』

『実際に回避できる。それを戦場でお見せしよう。もっとも、銃弾の回避ぐらいやってみせないと彼等に出会ったらその時点で終わりだろうがな』

 その後も動画が進んでいく。

『これまでは確かにアジをガンガン上げて強力な実弾火器を連射するのが最強のスタイルでした。でもMMOというのは刻々とバランスが変わっていくものなんですよ。特にレベル型は原則的にステータスの振り替えができないんだから。常に先を予測しながらポイントを振らなきゃ、そのレベルゾーンで最強のスタイルが次でも最強とは限らない。今後出現する火器は装備要求ストレングスも命中精度もドンドン上がっていきますよ』

『それは違うでしょうね。それこそバランス調整がされるでしょう。ザスカーは買収されましたし、今運営している会社はバランスを重視しますからね』

『いやいや、そんな事をはありませんよ。それに今回のBoBはチーム戦ですしね』

『そうですね。確かに三人までチームが組めるんですよね』

『ええ。私もすでにメンバーを決めています。個人戦でも中で組むことができますし、それなら最初からメンバーを決めて戦ったほうがいいというのもあるんでしょう。それ以外にも理由があるかもしれませんが』

『今回はエネミーも出るそうですね。それに複数の競技で合計点を競うらしいですね』

『どうなるかはわかりませんが、楽しみです。もっとも、ゼクシードさんは仲間集めに苦労しそうですが』

『そんな事はありませんよ、ええ。それに勝つのは私ですから──』

 会話の最中、いきなりゼクシードが苦しみだして回線が切断された。

「これがどうしたんだよ? ただの回線トラブルだろう」

「次にこちらを見てください」

『ゼクシード、偽りの勝利者よ。今こそ真なる力による裁きを受けるがいい。これが本当の力、本当の強さだ。愚か者どもよ、この名を恐怖と共に刻め。俺とこの銃の名は、デス・ガン(死銃)だ』

 画面の中に居るゼクシードに向かって銃を放つスカルフェイスの男が映っていた。

「おいおい」

「「まさか……」」

「そのまさかですよ。ゼクシードこと茂村 保(しげむら たもつ)は回線が切断された時間に死亡しています」

「おい、それはナーヴギアなのか?」

「違います。アミュスフィアです」

「なら脳の破壊は物理的に不可能ですね」

「電子パルスの量が足りません。そもそも死因はなんですか?」

「彼の死因は心臓発作です」

「それならばマスターキーなどを使用して薬品を注射でもすればいけるのでは?」

「その可能性もありますが、こちらを見てください。同じような事件があり、こちらは脳死と判断されました。それが複数です。どの死体も死後数週間が過ぎており、腐敗臭が漂い出して近隣の住民が発見した」

 一人暮らしの為に発見が遅れたのだ。

「「ごほんっ」」

 回りからの声が聞こえ、彼等は少し声を潜める。喫茶店でしていい話ではない。

「それで私達に何を願うのですか?」

「めちゃくちゃ面倒な事だよな」

「はい。GGOでちょっと撃たれてきてください」

「嫌だぞ!」

「お断わりします」

「ええ、貴方が撃たれてくればいいのでは?」

「あははは、何を言っているのですか。嫌に決まっています」

「潰しますよ?」

「社会的にも、物理的にもです」

「冗談に聞こえませんが……」

「古くから続く旧家である武田家を甘く見ない事ですよ、総務省総合通信基盤局高度通信網振興課第二分室(通信ネットワーク内仮想空間管理課)いえ、防衛省所属の菊岡誠二郎(きくおか せいじろう)二等陸佐」

「そこまでご存じですか、恐ろしいですね」

「まあ、この二人はぶっちゃけ、かなり恐ろしいからな」

「なんですか?」

「兄上、そのような事を思っていたのですね……」

「いや、違うからな」

「しかし、恐ろしいのは事実ですね。デイトレーダーの鬼神としてとんでもない売り上げを上げてますし」

 彼女達は黄金律のスキルも与えられているため、お金には困っていない。

「お陰で気付いたら家は金持ちになってたよ。家はその金で事業を起こしたしな」

「まあ、その話はおいておいて、撃たれるというのは冗談ですが、調査に出向いて欲しいのです。もちろん、報酬も支払いますよ」

「では、貸しで構いません」

「ええ、今度何かお願い事を聞いていただきましょう」

「お、おてやわらかに」

「しかし、大丈夫なのか?」

「ああ、問題ないですよ。我が家には武田の守護者様たちがついていますから」

「では、早速GGOへ向かい準備致しましょう。とりあえず軍資金を用意しないといけませんね。幸い、GGOは通貨還元システムですからその逆も可能なようです」

「兄上はアスナさんに話をしておいてくださいね。私達が先に行って準備を整えておきます」

「おう」

 彼女達はGGOの世界へとコンバートする事になった。

 

 

 

 

 

 

 


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