だが、あえて言おう! 登場する最後の人の話になるとくっそ重いので飛ばし推奨であると。
ちなみに作者はその娘が大好きです。あえていうなら、転生者の人達ならこれくらいやる奴がいるという事。
取り敢えず、ごめんなさいと謝っておきます。
時系列の問題をなくす為に、シリカの部分を一部変更しました。
黒髪の少女に装備を受け取って欲しい事情を話すのだが、どうせならと喫茶店に入る事になった。彼女の待ち人にも連絡を入れてここに来て貰うようにした。俺もシノンからメールが届いていたので連絡を入れておく。さて、そんな訳でボックス席で対面に座っている彼女はユウキというらしい。
「でも、本当にこんな装備を貰っていいのかな?」
「ああ、どうせ要らないくらい出ているしね」
「そんなに狩ってるんだ……」
何時間も籠って、リーファが惨殺しているようだしな。リーファはブログに動画としてアップしているようだが、再生数もやばい事になっているし、アメリカで友達になったらしいハリウッドの人達も見ていて、やばい事になってるらしい。SAMURAIGIRLの呼び名をつけられたそうだ。ちなみにこちらの服装はご丁寧にポニーテールの和装だ。
「じゃあ、交換条件があるけどいい?」
「何だ? 簡単な事ならいいけど、応えられない事もあるからね」
「大丈夫。この
「ん? こんなアイテムあったかな……」
黒髪の少女、ユウキが取り出したロザリオをテーブルの上に置く。ユウキを見るとニコニコしてこちらを見ている。
「あっ、大丈夫だよ。データを抜くとか、ボクには出来ないから。それは単に探し人を見つける為のアイテムだから」
「探し人?」
「うん。この世界に
「そうか」
まあ、うちはサイバー対策もドクターにお願いして強化しているので大丈夫だろう。可愛い詩乃と直葉が居るのだから、対策は万全だ。そう思って触れると、ロザリオが急に光り輝き、強い光を発してから崩れ去っていった。
「え!? わ、悪いっ!」
慌てて前を向くと、何故かユウキは泣いていた。これは不味いと思った瞬間、彼女は飛び上がって俺に抱き着いてきた。
「え? え?」
「見つけたっ! やっと、見つけたよっ!」
「なっ、なにが……」
「ボク達の
そう呼んだ彼女は頬ずりまでしてくる。ハラスメントコードは
「ちょっとまてぇええええぇぇぇぇっ‼‼」
そう叫んだ瞬間、部屋の扉が開いて見覚え有る少女が入って来た。パスコードを打ち込まないと開かない扉なので、関係者以外は知り合いしか居ない。
「キリト、少し話が……」
入って来た少女、シノンは俺達の姿を見て、持っていたカップを落とした。カップは地面にカーンと当たってポリゴンとなって消えていく。
「ごっ、ごめんなさい。取り込み中みたいね」
そう言って、踵を返して去っていこうとする。
「待ってくれっ、これは違うっ!」
しかし、シノンは止まらずに出て行こうとする。仕方ないので、最終手段を使う。
「シノンっ、
「っ⁉」
後ろを向いたシノンの身体が、ビクッと震えて止まる。普段から自分の事を俺の奴隷だと言って、実際にそう思っているシノンは俺の命令ならば絶対にきく。やりたくないが、ここで逃げられたら余計にややこしくなるだろう。というか、たぶん、直葉に伝わったら真剣で襲い掛かられても仕方ないレベルだ。
「こっちに来い」
「いいの?」
「ああ」
「うにゃ?」
不思議そうにしているユウキを置いて、シノンを優先する。彼女は少し手を動かしてから、こちらに振り向いてやってくる。振り向く時に少し涙が虚空に消えていった。
「あ、もしかして彼女さん?」
「結婚する予定のな」
「あ~これはごめんね。ささ、どうぞどうぞ」
直ぐにユウキは離れてシノンを俺に押し付けてくる。俺はシノンを抱きしめてゆっくりと座る。そのまま膝の間にシノンを収めて後ろから抱き着く。
「やぁ、ごめんね。つい感極まっちゃって」
「いい。それと、私はキリトと結婚する気はない。迷惑をかけちゃうから」
「いや、そんな事はないから。なんとしても結婚して貰うからな」
「でも……」
「あの、別の所でやってくれるかな? ボクも居るのに放置されると、泣いちゃうよ?」
「あ、悪い」
謝った後、改めてユウキを見る。彼女も泣いていたのだが、今は落ち着いたようだ。いや、それ以前にこちら見てニコニコしている。同時にシノンを観察しているようだ。
「で、取り敢えずシノンはなんの用だったんだ?」
「えっと、書類にサインが要るって連絡と、晩御飯は何がいいかなって」
「じゃあ、後でいいか。いざとなれば食いに行くか出前でいいし」
「ん、わかった」
「じゃあ、こっちでいいかな。っと、その前にどうやらもう一人、関係者が来たようだし」
「ん?」
扉が開いて入ってきたのは
「ほら、シリカも座りなよ」
軽く頷いた彼女はふらふらとした足取りで、無言のままユウキの隣に座る。彼女の名前から思い出したが、彼女が前世で見た事があった。確か天真爛漫な感じだったはずだが……何が有ったんだろ?
「ごめんね。彼女も色々とあってね。ボクが紹介するね。まずはボクから。改めて、ボクはユウキ。リアルじゃ紺野木綿季だよ。彼女はシリカ。リアルじゃ綾野珪子だよ」
「ちょっ、なんでリアルまで言っているんだ!」
「これから話す事に関係あるからね、
「いや、それはどういう……」
「あれ、言わないとわからない?」
「わかるはずない……」
「そう? でも、そっちの人は頷いてるよ」
「え?」
シノンを見るとしきりに納得したように頷いていた。どういう事だ?
「キリト、前に自分が何をしたか忘れたの?」
「えっと……」
「今から少し前に
「あっ!? って、ちょっと待てっ! それは俺じゃ……」
「さっきのロザリオは特別性なんだよね。お祈りすると
「そんなファンタジーな物がある訳が……」
「この世に有り得ないなんて事は有り得ないんだよ。それは奇跡によって証明されてしまったから」
「っ⁉」
確かにそうだ。というか、おそらく彼女が持っていたロザリオはアイツの仕業かも知れない。
「納得した所で、貴方様が
あの光は天使かっ! どちらにしても要らない事をしてくれたな。
「それは……」
「取り敢えず、こっちの自己紹介。こっちの名前だけでいい? まだそちらの目的がわからない」
「もちろんいいよ。シリカもいいよね」
シリカはこくりと頷いただけで、こちらをずっと見ている。ちょっと、いやかなり怖い。
「えっと、取り敢えず自己紹介だな。俺はキリトだ。こっちがシノン」
「シノン。キリトの奴隷」
「ちょっ、何言ってんの⁉」
「あっ」
シノンはばつが悪そうに視線をそらしただけだ。どうやら、結構落ち着いているように見えて、混乱しているようだ。普段なら危ない発言でも女とか、都合のいい女とかそれぐらいしか言わないからな。
「へぇ~そう言う関係なんだ」
「違うっ!」
シリカの方は身体震わせて、ユウキにすがりついている。本当に何が有ったのだろうか。
「あ~大丈夫だよ。よしよし」
ユウキがシリカを撫でていると、だんだんと落ち着いてきたようだ。
「さて、でもそういう関係ならボク達的には大助かりかな」
「どういう事だ? さっき抱き着いてきた事といい……」
「えっとね、ボクの事情から話すね。シリカはちょっと重いし」
「あ、ああ……」
「ボクは家族と双子の姉ちゃんと一緒にHIV・エイズにかかっていたんだ。あの奇跡が起きるまでの14年間、ずっと闘病を続けてきたんだ」
「「っ」」
俺とシノンは息を飲む。
「あっ、安心してね。今は完全回復しているから。ううん、それ以上に元気だよ。ボクも姉ちゃんも今は凄く幸せで、救世主様にはとっても感謝しているんだ」
「救世主様は止めてくれ」
「ん、わかった。じゃあ、キリト様ってよぶね」
「キリトでいい」
「それはちょっと恐れ多いかな……」
「いや、別に……」
「別に今は様でいい。話が進まない」
「そうだな、悪い」
改めてユウキが話しだす。
「両親は死んじゃったけど、ボクにとっては姉ちゃんが生きてくれただけでも十分嬉しかったんだ。だから、姉ちゃんと幼い頃から行ってた教会で退院から毎日救世主様に感謝して、お礼がしたいですってお祈りしてたの。そしたら、天使様が降臨成されて、このロザリオを渡して救世主様のお嫁さんか愛人になりなさいって言われたの。それが男の人が一番喜ぶ事だって」
「ちょっと待てっ!」
「え? 違った? でも、もう天使様と契約しちゃったから、ボクはキリト様のものだよ」
「いやいや」
「あ、そういえばロザリオを渡したら手紙が出現するって言ってたよ」
「いや、ないが……ここがゲームだからか?」
「キリト、ある」
「え?」
「アイテムストレージの中」
慌ててアイテムストレージを見ると、確かに手紙が入っていた。天使からキリトへ愛(憎悪)を込めてと。内容を見てみる。
拝啓、親愛なるキリト様。
貴方様はいかがお過ごしでしょうか。こちらは貴方様のせいで、80年分ほどの始末書の山に四苦八苦しております。
つきましてはいやが……救世主様と崇められる貴方様にプレゼントを用意しました。彼女達紺野姉妹です。彼女達を貴方様のお嫁さんとして差し上げます。彼女達は使徒として強化してありますので、どうぞ修羅場を楽しっ……ハーレムを楽しんでください。あ、返品は受け付けません。その場合、彼女達は天に召されます。神託を失敗した者として苦しい罰が待っているでしょう。別に気にしないという鬼畜なら放っておいて構いません。なお、この手紙は読み終えた後、自動的に爆発します。
追伸、完全回復の時に運悪く、とんでもない事になった子も居るのでその娘もおつけします。そちらは可哀想な子なので頑張って慰めてあげてください。最後に一言。爆発しろ。
「っ!?」
手紙を思いっきり投げて、光剣を引き抜いて切り裂く。爆発しそうな瞬間に斬った事でどうにか手紙の消滅だけで防げた。
「あ、あの……大丈夫?」
「キリト?」
「ああ、大丈夫だ」
あの糞天使、恨みつらみがかなり詰まっていた。いや、確かに悪かったかもしれないが……で、手紙の事はこの娘達だよな。
「えっと、手紙には凄い事が書いてあったんだが……納得しているのか?」
「うん。むしろ、ばっちこいって感じ。ボク達姉妹は救世主様に身も心も捧げて尽すよ」
「だが、俺にはシノンがいるんだよな……」
「私は別にいい。彼女は私と同じ気持ちで、同じ境遇。ううん、彼女の方が強いかもしれない」
シノンの場合は母親だしな。それに加えて彼女達は二人で、命まで助けて貰ってると。
「ありがとう。ボク達は二人目とかでいいから、正妻はどうぞ」
「別にいい」
「いやいや、ぽっとでのボク達じゃ駄目だよ。まだ、全然わからないから、そこは先輩に管理してもらわないとね」
「……わかった」
「いいのか」
「実際に私の方が年上。彼女達が妻や愛人になるのは正直、助かる」
「え?」
「キリト、体力ありすぎだから、リアルじゃ一人で相手するのは辛い」
「あぁ……ごめん」
「別にいい。嬉しいし」
「お~熱々だね」
「ところで、姉の方は?」
「姉ちゃんは病院でやらないといけない事があるから、連絡を後でするよ」
「やらなきゃいけない事?」
「うん。ボク達姉妹の血がエイズとかの特効薬になるよう、天使様に契約の時にお願いしたんだ。快く、叶えてくれたよ。んで、その薬を作る為に研究所に血を提供しているんだ。ちなみにキリト様が受け入れてくれなかったら、ボク達は死ぬって事も了承しているから、愛人でも末席でも、玩具でもなんでもいいから受け入れてね」
多分、それの恨み言も入っていたのかも知れないな。
「わかった。シノンが納得しているなら俺の責任でもあるし、出来る限り幸せになるように頑張るさ」
「ありがとう。シリカの事だけど彼女の事は重いけど、聞く? ボクとしてはこのまま受け入れる方がいいと思うけど」
「聞く。そうじゃないといけないからな。たぶん、俺が原因なんだろ?」
「半分はね……」
「じゃあ、尚更な」
「わかった。シリカ、話すけどいい? それと席をはずしていた方がいいかも知れない」
ふるふると首を振って、ユウキにしがみ付くシリカ。
「わかった。じゃあ、話すね。ボクがシリカと出会ったのは教会の墓地だよ。彼女ね、何度も自殺しようとして失敗しているんだ」
「え?」
「それは……」
「あれはリストカットに失敗して、首を吊ろうとしていたんだっけ」
頷くシリカ。どうやら本当の事のようだ。
「最初の原因はSAOなんだ。そこで、彼女はビーストテイマーでピナってドラゴンをパートナーにしてたんだって。そこである男に付きまとわれて、そのピナって子を捕まえられて、人質にされ自分自身も脅されてレイプされたんだ」
「「っ」」
「その後、散々玩具にされた後、他の連中に売られてあるPKギルドで飼われていたらしいんだよ。そのPKギルドも討伐されたんだけど、その前に別の所に売り飛ばされて、SAOがクリアされるまでずっとこんな感じだったらしい。この事は現実でも影響していて、シリカは監禁されて色々な事をしている間にリアルの事も喋らされていたんだ」
やっていた連中ももしもの事があると困るから、それの対策にしたんだろうか。しかし、ろくでもない連中だ。これからの事も予想できる。
「復帰して自宅に戻ったシリカは家に籠っていたんだけど、それでも最後に売り渡された奴等が最悪でね。リアルでもシリカを犯そうと家にやって来たんだ。家を監視していたのか、両親が仕事で居ない時に配送業者を偽って侵入してきたんだ。ここまでも重いんだけど、ここからがキリト様が関わってるの」
「嫌な予感しかしないんだが……」
「あの奇跡のタイミングの少し前に、パニックになって窓を突き破って飛び降りたらしいんだ。彼女の家は高台にあって、それが崖側でね。そこで死ぬはずだったんだけど……」
「うわっ」
想像以上にやばい事が起きてる。あの天使、何してくれてるんだ。いや、俺も悪いな。
「身体は血液の状態からして見れないような状態になっていたみたい。でも、その直前にアミュスフィアを使ってカウンセリングプログラムを受けていた最中だったみたいで、アミュスフィアをつけていたんだ。それでどうにか頭は無事だったみたいらしいけれど、ある意味では運が悪く、そして運がよくて奇跡が身体が壊れる直前に発動してシリカは再生と死を繰り返す事になった」
想像するだけで悲惨な光景だ。
「それが続いてシリカは綺麗な状態で動かなくなったんだ。アミュスフィアも消えていて、綺麗な身体だけど動けない。心臓も止まっていたらしい。それでね、彼女は棺桶に入れられて土葬されたんだ。でも、恐ろし……こほん。凄いのは救世主様の奇跡で、蘇生したのか仮死状態だったからかはわからない。けれども、なんと土葬されてしばらくしてから、彼女は棺桶の蓋を上の土ごと吹き飛ばして出て来たんだよね。それを見た、人達や彼女の家族は……その、ね」
「なんとなくわかる」
「まあ、そこから色々とあったんだけど、診察とかしても生きている事が証明され、生き返れた。でも、普通に考えて土を積まれた棺桶を吹き飛ばしてでてこれる?」
「無理。キリトなら可能?」
「いや、俺でも無理……か?」
できそうで怖いな。なんせ成長限界なんてないし。
「まあ、彼女は驚異的な身体能力を持っていたんだ。それが更に家族とか近所の人に怖がられて、あのモンスターの名前とかで呼ばれるようになって彼女は傷ついて、自殺しようとしたんだ。でもさ、手首を思いっきり深く切っても発動しちゃったんだ。アレが」
「アレ?」
「スキルがね……」
「現実だろっ!」
「うん、パッシブだけみたいだけど……どうやら、再生の時に脳や身体をやられていたせいで繋がっていたアミュスフィアを取り込んでアバターのデータを使って補完したのかな? 実際にアミュスフィアは消えていてどこにもなかったんだ」
天使は知らないが、近くに見本となるアバターのデータがあったんでそれで再生させたんだろうな。あの時、超忙しい事になったみたいだし。
「シリカの身体がアバターだから、バトルヒーリングがね、動いちゃったんだ」
おそらく、あの状態でも死なれたら困るからバトルヒーリングとかのスキルを有効にしたんだろう。後で文句を言われないように。もしかして、奇跡の発動前後は死亡率がないから少し前までさかのぼってやってくれたのかも知れない。
「それで、色々と試したけれど駄目だったらしいの。水泳も鍛えてたらしいから、水中でも普通に活動できて首吊りだって普通のロープじゃ無意味だし。後は飛び降りぐらいだろうけど、その前にボクが天使様の指示に従って彼女を見つけて止めた。それと、これらのスキルは他の人にも知られていないよ。大変な事になるから」
確実に実験動物にされる可能性があるな。ぶっちゃけ、超人だもんな。俺も身体能力はやばいレベルだけど、なによりバトルヒーリングはやばすぎる。これはシノンが調べてデータを今、見せてくれたが……人体実験まったなしのレベルだ。
「なるほど、確かに重いな。それで、犯人は?」
「侵入した奴等は住居不法侵入と器物破損、強姦未遂で逮捕されているよ。殺人未遂も入ってる」
「そうか、悪かったな。まさかこんな事になるとは思ってもみなかった。シノンを助けるついでに皆が助かればいいと思ったんだ」
そう言うと、シリカはてくてくとこっちに来てぽふっと抱き着いてくる。
「ん?」
そして、見せられたスケッチブックを見て絶句した。それには“責任とってください”と書かれていた。次に見せられたページには“殺してください”と書かれている。
「ごめん、それは無理だ。俺はシノンを……それにユウキ達の面倒も見て、幸せにしないといけない。だから、犯罪者になる殺人は起こせない」
「っ⁉」
涙目で上目遣いをして睨み付けてくるシリカ。不覚にも可愛いと思ってしまった。取り敢えず、指で涙を拭ってやる。
「だけど責任は取る。今の家が辛いなら、俺達の所においで。出来る限り、色々とさせて貰う」
「“辛い事、忘れさせてください”」
「それを望むならいいが、死のうとするのは止めてくれ。シリカには俺達が、俺がいるからな」
「“わかりました”」
「シノン、悪いけどいいよな?」
「大丈夫。ユウキもいいんだよね?」
「もちろん」
「それと、ユウキ、シリカ。辛いかも知れないけど、そいつらの特徴とか、名前はわかる?」
「“銀髪、コフィン、有名な奴です”」
「うわぁ、その言葉で一人だけ思い出すのが……」
「じゃあ、殺そうか」
シノンは英文でメールを打っている。内容は拳銃の調達という物騒な内容だ。というか、リアルでやる気か? 宛先を見た限り、まじで用意しそうだ。なんせ、相手はハリウッドに居た時に知り合ったアメリカ軍の高官だから。
「リアルではやめろ」
「でも……」
「女の敵」
「駄目だ。皆が犯罪者になるのはまずい。こういうのは、社会的に抹殺するんだ。大丈夫、任せてくれ。そういうのは得意な人がいる」
「そうなの?」
「ああ、だから安心しろ。必ず報いは与える」
「“お願いします。ピナの仇を……討ってください”」
泣きながらお願いしてくるシリカの頭を撫でる。自分の事じゃなくて、ピナという所が、この子の凄い所だな。SAOか。確か、どうにかなるかも知れない。急いでドクターにメールしよう。後は銀髪の洗い出しをして個人情報の特定だ。なに、SAOのデータは全て俺達の手にある。
「シリカ、取り敢えずそのピナってドラゴンの事を教えてくれ。ひょっとしたら、蘇らせられるかも知れない」
「……ほ……と……?」
「ああ、だから覚えている限りでいいから、アバターのデータとピナのデータを思い出して教えてくれ。それを元に検索をかける。SAOのデータは全部持っているからな」
「お~それが本当なら凄いね!」
「ああ、そっか。社会的に抹殺する方法、一つ思い付いた。レイプとかした連中、全員実名で公開するね」
「殺人に関しては確か、特殊な状態という事で特定しない事にしていたが、これに関しては匿名でばらまけばいいか。いざとなれば女性陣は味方につくだろうしな。ログの提出を求められたら応じればいいだけだし」
「複数の国を経由して、リタにばら撒いて貰えば余裕だね」
「よし、そっちは色々と任せてくれ。それでこれからどうする?」
「シリカは引っ越しかな。出来たら、ボクも引き取って欲しいかな。今、親戚の家でお世話になってるから」
「……なら、新しく家を買うか」
「あ、それなら買ってほしい家があるんだけど、いいかな? 迷惑なら、その、いいけど……」
ユウキが申し訳なさそうに言って来る。俺は二つ返事で了承し、急いでログアウトした。その後、家の持ち主の所へと電話をして、弁護士の先生を連れてアタッシュケースに現金を入れて交渉に向かった。家の人達に紺野家の事情を話し、相場を遥かに超える数倍の金額を提示した。相手側は逆に安くていいので家を用意してくれたらいいとの事だった。後はサインを強請られたのでサインをして、ついでにハリウッドの人達とも交渉して送って貰った。手続きがすみ、引っ越しまでに時間はかかるが、その間は狭いが詩乃の家に住む事にした。シリカの事を考えて、そちらにしておいた。