【完結】ユイ君…本当にこれで良いのかね? 作:5の名のつくもの
※心の中での喋りは()になります。通信内容の方は現在別の記号を考えています。『』でもいいかもしれませんが、「」と見間違える可能性があるのでちょっと使いづらいなと思っています。
以下投稿後に追記
※クドイ表現があったので、小さな点で修正しました
※綾波について、原作と異なる部分が出てきます。この点は後書きにて触れています。
引っ越し作業を終えた。持ってきた段ボールはリサイクルのための再利用ゴミとして紙紐で縛って置いておく。そこまで段ボールを持ってきてないので明日にはゴミ出しができる。本当ならゴミ出しの日が決まっているが、NERVで出たゴミ扱いで処分する、NERVで出たゴミは特別として業者に持って行ってもらっている。
新しい家族二人の荷物は唖然とするほど少なかったので、とんとん拍子で作業は進んだ。おおよそ夕方になるぐらいには終了した。引っ越し作業が終了したことを二人は冬月に告げると、冬月は部屋から出てきた。
「思ったよりも早かったな。時間は…5時ぐらいか。夕飯はどうするか」
昼食は適当に引っ越し作業中にパンをかじっていたが、あんまり食べなかったのですでにお腹が空いていた。この時間から外に食べに行くにしても、何があるか分からないので安易に外には出たくない。数秒後には使徒出現の報告が入ってもおかしくないのだ。となれば、必然的に夕食は家でとる。
「じゃあ、僕が作りますよ。食材はありましたし」
「それはありがたいが、主役である君に料理をさせるのは憚られることだ。そんなことは問屋が卸さない」
「いいですよ。ここまで僕たちのために色々と用意してくれたんですから、それに家族なんですから。今までの恩返しとでも思ってください」
「むぅ」
家族と言われては冬月もうなるしかない。同じ屋根の下で暮らすのだから家族ではあるのだが、実際に真正面から言われると破壊力は違う。また、その顔はユイ君と重なってしまって押された。ここで無下に断り続けるのはよろしくない。ここは真摯に受け取った方が良い。
「はぁ。すまないね、こんな老人の介護みたいなことをさせて。冷蔵庫の中には何でもあるから好きに使いたまえ。私にできることがあれば手伝うが」
「それには及びません。碇君のことは私が手伝うので」
「そうか、わかった」
(何となくわかってはいたが、こうも早くレイ君はシンジ君にくっ付くとはな。私の方で手回しはしていたが、ユイ君の血を引く二人だ。思い合うのは必然と言うことなのだろうな)
流れに身を任せた冬月はシンジとレイが仲良くキッチンで料理することを眺めることになった。ここで彼が出張ってもいいことは全くないので、素直に引き下がったのである。キッチンには大きな冷蔵庫があって、中にはたくさんの食材が入っている。野菜から肉、魚。その他調味料などなど目白押しだ。冬月が料理好きなわけではない。これは贈られてきたもの。NERVというには日本の中でも一番の力を持つ組織なので、企業はすり寄りたい。しかし、総司令の碇ゲンドウは内部の人間以外との接触は殆ど遮断している。しかし副司令の冬月コウゾウは割とオープンな人間なので、皆こぞって贈り物を送っているのだ。これらは、時折余ることがあったが、今回住人が増えたことで無駄なく消費できることになった。
シンジは持参していたエプロンを身に着け、レイもまたシンジとお揃いのエプロンをつける。そこまでして揃える必要性は無いと思われるが、当事者にとってはかなり重要なのだろう。
~キッチン~
「綾波、そこのお塩とって」
「はい」
キッチンでは仲睦まじい様子の若人二人の背中姿が見える。少年が食材を切ったり、食材を和えたりしている。見事すぎるほどの手際の良さで見ほれてしまう。プロの料理人でも感嘆するほどのレベルだ。皮肉だが長いこと一人で暮らしてきた経験が活きていた。その少年を補助することに専念している少女がいる。その少女はぎこちない動きでサポートだ。一人で暮らしてきていたが、まともな料理をしたことがなかったので、どうしても動きは硬くなってしまう。
その姿を眺めることを冬月はしなかった。そんな後ろ姿を眺めていては寿命が縮まる。そんなすぐに旅立つわけにはいかないのだ。まだまだやることはある。託された使命は果たすまで。
「これを左のコンロに置いて」
「はい」
三人分の料理を作るということで大皿料理を作っているようだ。それも割と大きめなフライパンで作るタイプの。冬月は二人が何を作っているのか見てみたいところだが、ワクワク感が消えてしまうので我慢する。では、ここで神の視点を以てして二人が何を作っているのかを見てみたいと思う。
「よっと。冬月先生も健康志向なのかな、お豆腐がいっぱいあったから、麻婆豆腐だ。綾波も食べるから辛さは控えめで」
シンジは丁寧に素早く豆腐を切っていく。シンジは健康志向かと疑ったが違う。豆腐の材料は大豆である。大豆は高たんぱくで畑の肉ともよばれる。他の農作物に比べて栽培は割とし易いので生産が盛んだった。そのため気持ちはお肉と言う大豆ミート的な食品が多数流通していた。昔ながらの豆腐もよく売られている。
「フライパンは温まっているね。豆腐は茹でで水気を切ると」
「碇君、こっちはできたよ」
「ありがとう。適当にお皿によそって」
綾波が作っていたのは超簡単なサラダだった。レタスやトマト、パプリカなど好きな野菜を洗って切って盛りつければいい。ドレッシングはお好みでどうぞ。こちらも大きめのお皿に盛りつける。他に作業をしていると豆腐が湯がったので出して待機させる。それではフライパンの出番だ。フライパンでひき肉やお好きなカット野菜を投入して焼いていく。今日は時間がないので麻婆豆腐のもとを使う。火が通るのを綾波に監視してもらって、次なる料理へと移る。
「あった豚バラのスライス。それとアスパラガス。この二つの組み合わせは最高だよね。アスパラガスは滋養強壮効果があるから冬月先生には特にいい」
豚バラとアスパラガスとなれば作る物は一つしかない。そうアスパラの豚バラ巻きである。豚肉とアスパラガスの相性の良さは科学的にも証明されている。豚肉のうまみ成分とアスパラガスのうまみ成分が見事に合うのだ。豚肉には疲労回復成分があり、アスパラガスには前述の滋養強壮の成分が多くある。また、彼らは摂取しないがアルコールの分解を助ける成分も含まれているのでおつまみにも適している。
「巻いていって、焼くだけ。塩コショウは少なめに」
過度な塩分は敵なので塩コショウは少なめに振る。元々豚肉もアスパラガスも美味しいから少な目で問題ない。そんなこんなしていると麻婆豆腐も良さげになってきた。綾波と協力してシンジは夕食を作り上げていった。
~夕食~
「これは…すごいな」
「ちょっと頑張りすぎました。全部健康に気遣っているので食べ過ぎても大丈夫ですよ」
「あぁ」
(ユイ君と似てよく気遣いができるか。至る所で似ているな)
「では、いいかな?」
二人が席についたことを確認しているが、その上での念のための確認をとる。二人は頷いたので、感謝の言葉を。
「いただきます」
「「いただきます」」
まず冬月はアスパラガスのいい香りがする巻きを頂く。食べやすいように一口サイズにカットされて気遣いがうかがえる。小さなところでも気遣いができる人はみんなから好かれる。この点はシンジ君とユイ君は同じだった。
その一口を含む。
「お、これは」
「どうですか?」
「うむ、とても美味しい。噂には聞いていたが、シンジ君の腕前は見事だな。この私の身体を考えてくれているとは」
塩分控えめで味をごまかさず、素材のうまみを存分に引き出している。素材そのもののうまみ成分をフルで活かしている料理の腕前は見事に尽きる。ここでも気遣いが見ていて、美味しいので冬月は思わず泣きそうになってしまった。
「あぁ、私のことは気にせんでいい。二人も食べなさい」
「はい、ほら綾波」
「うん」
そう言うと二人は冬月の目の前でお熱い食事をしている。何がとは言わないが、その食事光景はまさにカップルである。こういうのは人前でやることではないが、相手は冬月コウゾウ。もう好々爺になるような人物で、彼にとって二人は孫に等しい。だからむしろ暖かくなる。
そんな調子で食べ進めていく今日の夕食であった。
続く
次話は第六の使徒、ラミエル戦です。
それでは次のお話でお会いしましょう。
追記兼お詫び
※綾波はお肉が食べられないのではないかとのご意見をいただきました。結論から申し上げますと、シンジが食べるようにしました。数話前にて、シンジが綾波の食生活について触れています。その時より真っ当な食生活を取るようにしています。本来なら書くべきでしたが、書いておりませんでした。読者皆様にお詫び申し上げます。