【完結】ユイ君…本当にこれで良いのかね?   作:5の名のつくもの

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はい、アンケートで告知しておりましたサブストーリーが入ってきます。前半にサブストーリー、後半が本編となります。今回のサブストーリーは前話後書きにて触れていた綾波についてです。今回は書いていなかった、抜けていたストーリーですので時系列を戻して脳内補完していただけると助かります。読者様皆様にご迷惑をおかけしますこと、心からお詫び申し上げます。

※読者様より通信内容を示す記号のご提案をいただきましたため、次話から試験的に導入致します。ご提案いただき感謝いたします。なお。提案したくださった方のお名前は伏せさせていただきます。ご了承ください。



前半(サブ)食生活をなおそう 後半仇敵

【サブストーリー】 『食生活をなおそう』

 

「はい綾波。今日のお弁当」

 

「ありがとう。碇君」

 

今日も今日とて中学校では夫婦がいた。毎日お弁当を作ってくれるシンジとそれを受け取る綾波である。シンジの料理の腕前はプロ並みであるから、お弁当も段違いの逸品。一応だが、学校で多少はパンなどを買うことができるが、綾波は食生活に難ありだから使用していない。シンジもお弁当は綾波の好みに合わせて作っていたが、今日は違った。

 

パカっとお弁当を手馴れた手つきであけた綾波だが、そこには。

 

「あれ?お肉は食べない…」

 

「綾波。いつまでも野菜だけやサプリやカプセルだけでは長生きできないんだよ。それに、好き嫌いはだめだよ」

 

「でも…」

 

「あ・や・な・み?」

 

「…」

 

いつも非常に温厚で柔和な人物として知られているシンジが本当に珍しく怒りそうになっていた。一応言っておくが本気で怒っているのではない。自分の愛する者の身を案じて怒っているのだ。この怒りは普通の怒りとは違う。

 

「脅しているわけじゃないけど、僕と一緒にずっと過ごしたいなら、好き嫌いは無くさないと。長生きするためにもね」

 

「長生き…」

 

綾波レイの生きる目的とは碇ゲンドウの計画を果たすこと。それが果たされれば自分は無に帰るか、死するだけであった。だから長生きなんて概念は一切と言っていいほど無かったのである。しかし、その概念も含めて色々なことを教えてきたのがシンジだった。そのシンジと綾波は相思相愛の関係にある。シンジはともかくとして、綾波としては心を通わせて本当に生きたいと思えるきっかけとなった少年を愛する。そんな少年といつまでも一緒に生きていたいと願っていたのである。

その少年は少女の願いを逆手にとって利用したのである。邪な考えではなく、本気で少女を案じてのことであるので責められない。

 

「大丈夫。綾波のことを考えて小さくしてあるから」

 

確かに一口サイズが大きく見えるほど細かくお肉がカットされている。もし他の料理とと共に口に運んだらお肉があると気づくか気づかないかのレベルである。これは彼の作戦だった。子供に嫌いな野菜を食べさせるときにその野菜を超細かくして料理に紛れ込ませる。そして子供は知らず知らずのうちにその野菜を食べることで慣れさせるという作戦を応用した。もはや本当の主婦と化している。

 

「わかった」

 

綾波は自分の心の中で天秤にかけた。食生活と愛する少年との人生の二つを。その結果はすぐに決まった。ぶっちぎりの重さで後者が勝ちを納めたのである。

意を決して箸でお肉を摘まんで口へ入れ込んだ。そのまま飲み込むなんて卑怯なことはせず、しっかりと咀嚼して味を知る。シンジはその景色をハラハラドキドキして見ていた。さて…どうだ?

 

「美味しい…お肉は美味しい」

 

「よかった!これで、綾波は長生きできるよ!」

 

「うん」

 

見事なり碇シンジ。そして、恐ろしきや碇シンジ。その手腕には賛辞を贈りたいと思う。

 

こうして、綾波は徐々にはであるがお肉と言うのを食べることができるようになった。シンジも急速に拡大することはなく、少しずつ少しずつの階段を昇るように食べさせた。そうすることで綾波はお肉嫌いを克服して人並とまではいかなくても、食べられるようになったのである。

 

今日も冬月家には野菜料理だけではなく、お肉料理も並ぶのである。当たり前のことだが、綾波だけでなく、老人の冬月コウゾウのことも考えているシンジの手料理が並ぶ。

 

【サブストーリー】 『食生活を直そう』 終

 

 

 

 

【本編】 『仇敵』

 

~NERV本部 メインルーム~

 

「使徒、相模方面より依然として侵攻中!」

 

「相模第12砲台が攻撃開始!」

 

「相模第4砲台壊滅!」

 

メインモニターには、もう見覚えがありすぎて笑える使徒がいた。なんせ、その使徒は攻撃と防御を完全に両立した文字通りの『完璧』な存在。冬月が(予算関係を無視して、ごり押しして)無理くり推し進めた要塞強化によって建設された相模砲台群が決死の攻撃を行っているが、全然効いていない。まぁ、これは予想できたことで当たり前だ。なぜなら使徒は絶対防御のATフィールドを持っている。人間の古来からの兵器が通じるわけがないのだ。では、この攻撃は無意味?馬鹿を言わないでほしい。そんな安直な考えを持っていたらNERVでは働けない。効かなくても、それは時間稼ぎになる。戦場での一秒が如何に重要かは言わなくてもご理解いただけると思う。

 

「両手を挙げて降参でもしますか?」

 

「冗談はやめてちょうだい。人類はそう簡単には負けないわ」

 

「しかし、面倒なことだな。使徒も成長している」

 

大抵の使徒はそのATフィールドをもって攻撃を無効化してくるのだが、この使徒は少し異なる。巡航ミサイルのような無意味でも無視できないような攻撃には形状を変化させエネルギー砲を全方位に放つことで迎撃している。ATフィールドで受けて視界を悪くして隙を与えないためのことだ。使徒も学習してきている。その証拠だ。知恵の実を食べていないからそんなことはない?「百聞は一見に如かず」、「論より証拠」という古人の残した言葉を知りたまえ。

 

「初号機の発進を…」

 

「碇、それはあまりにも早計が過ぎる。まだ、あの使徒の情報が少ない。ここでむやみやたらにエヴァを出すのは些か危険だぞ」

 

「…ダミーを出せ。一度使徒の反応を見る」

 

総司令のゲンドウは使徒を撃破するために決戦兵器エヴァンゲリオンを出そうとしたが、冬月が止めた。確かに、まだ使徒は侵攻中で本部にまでは来ていない。さっさと迎撃した方が良いのは正しいが、まだ相手を知れていない。兵法の基本には相手、敵を知ることがある。この状態は全く知れていないので、冬月はエヴァを出すのは危険と判断した。至極まっとうな意見具申だったのでゲンドウも受け入れた。また、これまで使徒戦において大活躍してきた冬月だからという理由もある。

 

「エヴァ初号機のダミーを急げ!」

 

「地上にダミーを展開します!」

 

すぐさまオペレーターたちが動いて命令を実行させる。ダミーというのはバルーンでエヴァ初号機にそっくりそのままの精巧な一品である。また内部にはエヴァの信号を放出する欺瞞装置がつけられているので、これがダミーとは悟られないように工夫されている。これも冬月が技術部に作らせた。

 

防御砲火が継続されて使徒の侵攻を遅延させている間に、ダミーが地上に現れる。ダミーを射出して数秒も経たずして、使徒は反応した。これまでは防御砲火を無効化するのに意識を向けていたのに、急にダミーを意識した。変形したかと思えば。

 

「使徒内部に超高エネルギー反応を確認!」

 

「来ます!」

 

「閃光及びショックに備えろ」

 

たった一言の報告であったが、誰もが起こることを予想できた。全員が下を向いたり、メインモニターを視界の端の方にしたりして閃光に備える。冬月はと言うと、副司令だからモニターに注目しないといけない。だから妥協として目を細くした。

 

その直後に使徒から裁きの光線が放たれた。標的は言うまでもなく、エヴァ初号機のダミーだった。ダミーは一瞬にして灰燼と化した。これがダミーだから呆気なく消えたが、エヴァだったら多少は持つ。だから大丈夫?馬鹿を言わないでほしい。エヴァにはパイロットがいる。そのパイロットへのダメージを考えると、もう悲惨でしかない。ここでパイロットを失うわけにはいかないのだ。

 

そんな光景を見せつけられた職員たちは呆然とするしかない。これまでに見なかった遠距離超火力の使徒。近距離での白兵戦もどきをしてくる使徒は見てきたが、まさかこんな使徒とは。こんな見事に完封されては、エヴァの基本運用が一切通用しない。エヴァの基本運用としては、使徒に肉迫して、使徒のATフィールドをエヴァのATフィールドを以てして中和する。そして道を切り開いて、使徒の唯一の弱点のコアを破壊する。これが基本運用である。この運用は近距離での戦いを想定しているので遠距離で対応されると辛い。エヴァを使徒の眼前に射出すればいい話ではあるが、待ち伏せされてあの砲撃をされては堪らない。

 

冬月の意見具申は、今回より悲惨な前世の記憶から来ていた。

 

「これではエヴァの戦いができない…」

 

「本格的にマズいですよ」

 

「なんちゅう使徒だよ」

 

オペレーターたちは絶望に近い状態にある。あれ程のことをされたのだから致し方無い。しかし、そんな中でも一人だけは違った。感受性の高い人物ならばわかることだが、いい意味で変わった者が手を挙げた。

 

「私にお時間をいただけますでしょうか。本件の使徒殲滅作戦を考えたいのですが」

 

「構わん。君に全権を委任する」

 

「何か用意するものがあれば、逐次私に言ってくれ。碇、お前の名前を多用するが構わんな?」

 

「あぁ。使徒殲滅のためなら、いくらでも使え」

 

「心遣い感謝いたします」

 

手を挙げた人物は葛城ミサトだった。彼女は以前のサードチルドレンとの一件で変わった。自身がパイロットに負担をかけてしまっていたことを恥じ、パイロットのことを第一に考えるようになった。使徒を殲滅することが一番のことであるのは変わらないが、実際に戦うのはパイロットたちだ。パイロットに負担をかけてしまっては本末転倒の極みに尽きる。

冬月は普段の勤務態度からその人物が変わったことを察して援護することを表明した。おそらくだがヤシマ作戦の陽電子砲の用意が必要になるだろう。あれは彼女のコネで用意できたが、一応冬月の方から手を回した方が早く用意できるかもしれない。また、その他で使う兵装もあるかもだ。かもしれません運転はとっても大事。

 

「私も仕事が増えるか」

 

覚悟を決めた冬月だった。その頃パイロットたちは。

 

~待機室~

 

「え?出撃は中止?」

 

「中止。連絡がきた」

 

「なんだろう…何かあったのかな?」

 

プラグスーツに着替えて待機していたパイロット二人は首をかしげる。普通なら使徒が出現して間髪を入れないでエヴァを発進させる。だが、今回は違った。出撃の直前で中止が伝達されたのだ。まだ状況はパイロットには知らされていない。

 

「分からない。でも、これだけは言える」

 

「え、何?」

 

「碇君は私が守る。絶対に」

 

続く




次話はラミエル戦(戦闘)です。

それでは次のお話でお会いしましょう。

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