【完結】ユイ君…本当にこれで良いのかね?   作:5の名のつくもの

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ラミエル戦です。

※文字数の関係で端折るところは端折ってます。なので時間が一気に進みます。
※本話は試験的に通信内容は、<>を使っています。読みづらいなどありましたら遠慮なくお申し付けください。


決戦、第三新東京市 

~第三新東京市地上~

 

第三新東京市の地上では大量のトラックとVTOLが動き回って資材運搬に励んでいる。また各地の変電所から仮設の送電網が張り巡らされている。その電線が向かう先にはちょっとした山々がある。その山には急ピッチで建設された砲台があった。

 

その砲台を普通のヘリコプターで上から眺める老人が一人いた。

 

「やはり、ヤシマ作戦だったか。戦略自衛隊が計画して開発した陽電子砲ことポジトロンライフルを使用したエヴァによる長距離狙撃。あれだけの大きさを持つ兵器はエヴァなら運用できる。しかし、エヴァもエヴァで問題がある。狙撃役は初号機となってしまうか。零号機の拡張性の低さが露呈したな」

 

砲台に建設が急がれているポジトロンライフルを実際に操作して射手を務めるのはエヴァ初号機となっている。「零号機でもいいのではないか?」と疑問に思われる方がいらっしゃるだろう。それはそうなんだが、技術的に不可能であった。と言うのもエヴァ零号機は拡張性が低く、ポジトロンライフルのような特殊兵装を使うための外部装備を使えない。対して初号機は拡張性を可能な限り確保しているので、外部装備を纏うことができる。零号機を改造するにしても時間がかかり過ぎて間に合わない。だから必然的に初号機を射手とするしかない。こればかりは冬月でも手を出しようがない。

 

「幸いにも零号機は実戦投入に耐えられる程までには仕上げることができた。レイ君には悪いが盾役になってもらうしかない。赤木君に超耐熱シールドを作ってもらったが、足りないかもしれん。そこでの縦深陣地だが、間に合ってよかった」

 

使徒からの超高エネルギーの砲撃を貰わないという確証はどこにもない。だから防御を考えなければならない。前世と同じく零号機には急造だが超高熱に耐える盾を持たせる。だが、その盾では防御が足りない可能性があることは否めない。そこで冬月はかねてから行っていた要塞都市の強化計画の一つの装甲ビル群の増設、これを何とか間に合わせようとしていた。その努力は実を結んでいて至る所に装甲ビルが建設されていった。これらビルは特殊装甲版を何重にも重ねていて、セントラルドグマを守る装甲並みの強度を持つ。ただ、あくまでも全体はビルぐらいの厚さしかないので継続的に攻撃されると持たない。だから「ビル群」として縦深で建設したのだ。

 

「さて、これからは二人の出番だ。老人が出来ることは無い」

 

ヤシマ作戦は本日の夜ごろに決行される予定だ。

 

~夜~

 

「電力供給に問題なし」

 

「市民の避難誘導完了。各避難所での警備に問題なし」

 

「初号機定位置につき、待機中。零号機も盾を持ちつつ待機中」

 

「パイロットたちと通信繋げられる?」

 

「はい」

 

今回は作戦が作戦なので一部の職員たちはNERV本部から地上に上がって、地上の指揮連絡車両で進み行く準備をチェックしていた。下部職員たちは走り回ってポジトロンライフルの射撃準備に励んでいる。使用する電力が莫大なので準備も並大抵ではない。関東中の電力を一挙に集中させている。

その必殺の一撃を任せられたパイロットたちのことを考えて、ミサトは連絡を取ることにした。なんせ、今までになかった作戦なのでパイロットたちは緊張の極致にいると考えられる。

 

「シンジ君、レイ聞こえる?」

 

<あ、はい。聞こえます>

 

<聞こえます>

 

「なら聞いて。二人だけに人類の存亡を任せちゃうのは本当に気が引けるんだけど、二人しか頼れないの。こっちで使徒の気を引くから、安全に攻撃できるようにするわ。だから、お願い。使徒を倒して」

 

出来るなら、ここで気の利いたことを言って緊張を和らげたいが、そこまでミサトは器用ではなかった。それに相手は少年と少女で大人とは違う。下手に喋って緊張を増してしまっては意味がない。だから至って普通の内容の通信をした。彼らにとってこんな普通のほうがいい。いつも通りにやればいいとの感じが出てきて逆に緊張が和らぐのだ。

 

<任せてください>

 

「それとレイ…シンジ君を頼むわね」

 

<碇君は私が守ります。それが私の仕事>

 

「お願いね」

 

そうして通信は切られた。この後は最終準備に入っていくので無用な通信を挟む時間が無くなる。作業員たちは最終点検を終了して退避した。初号機は砲台にてポジトロンライフルを構えて、外部照準器を装着する。射撃は初号機が行うが演算は超高性能演算装置が行うので、シンジは引き金を引くだけでいい。

 

「最終電力供給にシフト、主電源及び予備電源異常なし」

 

「出力安定。一部ケーブルに異常発熱が見られますが行けます」

 

「磁気狂い無し、演算に障害無し」

 

大量に置かれたモニターでは準備が最後の段階にまで来ていることを示している。電力供給はもう終了段階にまで来ていて砲台後方にある注入装置が光り始める。耐用量を超えた電力の供給によって一部のケーブルが異常発熱を起こして、爆発するのもある。大丈夫、問題は無い。こんなことは予測できたので敢えてケーブルは余裕を持たせている。

 

「第12砲台攻撃開始。続いて89,45,76砲台も攻撃を開始!巡航ミサイルも発射されます!」

 

「冬月副司令ね。私にヤシマ作戦だけの陣頭指揮を預けるなんてって最初は思ったけど、私の負担を小さくするためとはね。まったく、本当に恐ろしい人ね」

 

このヤシマ作戦のポジトロンライフルの攻撃関連は葛城ミサトに全権が任されている。しかし、その他の通常砲台などの攻撃に関しては依然として上層が持っている。それは冬月だった。彼は葛城ミサトにはヤシマ作戦だけに集中してもらって、使徒の注意を引くなど雑業は自分が被ることにしたのだ。

 

開始された砲台からの攻撃は全て冬月自身が直々に命令を下している。言うまでもなく無意味な攻撃だが、これは重要でヤシマ作戦について悟られないための攻撃だ。これはミサトが予想していた攻撃よりも遥かに苛烈で、思わず彼女は苦笑いしてしまう。

 

「やるなら徹底的に、手は絶対に抜かない。碇司令の右腕をするだけはあるわね」

 

「エネルギー充填完了!」

 

「演算データ送ります!」

 

「初号機、射撃体勢に入ります!」

 

準備は終わりを告げて、本格的な攻撃に入る。初号機は伏せたままだが、その引き金に指が添えられる。プラグ内では特設の装置を覗く碇シンジがいた。演算データが送られて使徒のコアの部分の照準が絞られていく。

 

その使徒は迫りくる砲弾やミサイルから身を守る為に変形してATフィールドを展開したり、迎撃している。瞬間を突いて反撃を行って砲台を焼いてもいる。だが甘い甘い。冬月の用意周到さが使徒を勝っていて、砲台はまだまだ、たっぷりとある。

 

「第98砲台壊滅!65砲台も攻撃不能!使徒依然として健在!」

 

「最終注入完了!ポジトロンライフル、カウントダウン開始します!」

 

ありとあらゆる準備が完了して異常が無いことを確認されれば、後は放つだけである。

 

「カウント5…4…3…2…1…」

 

<っ!行けっ!>

 

「発射!」

 

初号機が構えていたポジトロンライフルから紫色の光線が真っすぐに使徒へと向かっていった。その一撃は一切狂っておらず、コアを確実に捉えていた。絶対にこれでやれると誰もが思った。

 

しかし、そんなに簡単にはやらせてくれないのが戦争。

 

「くそっ!イレギュラーです!磁気狂いが!」

 

「なんてこと!」

 

地球から発せられる磁気を感知して照準は微調整を繰り返していたが、なんと発射してからイレギュラーの磁気狂いが発生した。これにより光線はわずかにそれてしまった。それたということは、そういうこと。

 

使徒のコアをかすっただけだった。使徒は絶叫に近い音を発出してギザギザになったが、すぐさま立て直した。使徒も馬鹿ではない。謎の攻撃が行われた地点を割り出して、その方向に変形した。それが意味することとは。

 

「使徒内部に超高エネルギー反応!こいつは…あの時と桁違いです!」

 

「被害予測できる!?」

 

「計算完了!これは…無茶です!山ごと貫通してきます!」

 

「レイ!」

 

<っ!>

 

すぐさま初号機の前に隠れていた零号機が立ち上がって、超耐熱シールドを構える。山を一つ挟んでいて、あわよくば山で一発を耐えきれるかと思った。しかし、使徒を舐めてはいけない。偵察でのダミーを破壊した時とは桁違いのエネルギー反応を確認した。山は消し飛び、零号機の盾と零号機本体を以てしても耐えきれないほどのエネルギー量である。でも、やるしかない。

 

やるしかない?

 

冗談じゃない。

 

ある人を忘れていないか?

 

通信に一人の人物が割り込んだ。

 

<こんなこともあろうかとね>

 

「冬月副司令!」

 

<冬月先生!>

 

~NERV本部 メインルーム~

 

「縦深装甲ビル群を展開しろ。なんとしても初号機を守れ」

 

「はい!」

 

冬月が指示すると、次々と地上には装甲ビルが展開されていく。数えられる数個とかではなく、数十を超える数が展開されていくのは非常に壮観だ。だが、今は壮観なんて言うことはできない。

 

全ての装甲ビルが展開された直後に使徒から裁きの一撃が下された。

 

「砲撃!来ます!」

 

「耐えてくれよ。伊達に作ったんじゃないんだからな」

 

使徒から放たれた可粒子砲の光線はまず山を焼いていった。山で多少の熱量を削ぐことはできたが、元の威力が桁違い過ぎて依然として危険なことに変わりはない。山は焼け、消し飛んで焦げていった。そして、光線は何重にも置かれたビルに直撃する。威力たるや恐ろしい、ビルをあっという間に溶かしてしまう。しかし、それでも数えきれないほどの量を展開された装甲ビルが立ち塞がる。一瞬で溶かされても、溶かすためのエネルギーを消費させている。それが何度も何度も行われるので、威力は弱くならざるを得ない。これによって、次第にビルを溶かすのに時間がかかっていき、威力が弱まっていることをモニター越しの肉眼でもわかるようになった。

 

「最後のビル溶解します!」

 

「よし、ここまで弱めたんだ。最後の最後は頼むぞレイ君」

 

<碇君は!>

 

威力を漸減された使徒の一撃は初号機の陣地まで到達したが、またまた防がれた。それは文字通りの最後の砦。そう、エヴァ零号機だった。零号機の構える盾に直撃したため、交戦は弾かれたりする。副次的な障害で、目が潰れそうになる閃光が戦場を支配する。

 

その様子は本部でも確認できていた。

 

「あとは頼んだよ。シンジ君…いきたまえ」

 

~初号機~

 

「綾波っ!」

 

<碇君は私が守るからっ!使徒を!>

 

「早く、早くっ!もう一発を、撃たないと!綾波がっ!」

 

<エネルギー充填100%!いつでも行けます!>

 

<カウントダウンは無し!行きなさい!シンジ君!>

 

最早だ。ここまで来たら使徒のコアを機械任せに狙うなんてことはしない。自分自身の目で見て、頭で考えて狙う。その時のシンジの集中力は正に超人であった。エネルギー充填完了から僅か5秒も経たないで、シンジの逆襲が使徒を喰らった。

 

「行けぇ!」

 

ポジトロンライフルを構成する装置類は一切傷ついていなかったのが功を奏して、速射を可能にした。放たれたシンジの怒りの逆襲は使徒のコアを寸分狂うことなく貫いた。コアを完全に貫かれたラミエルは再び絶叫をあげたかと思えば、崩壊を開始していった。

 

それを確認すると、シンジは攻撃を受け止めてくれていた愛する人を案ずる。

 

「綾波!」

 

<大丈夫。盾が守ってくれた>

 

使徒の一撃を受け止めていた零号機だが、見た目では少し焦げているぐらいで損傷はなさそうだ。その代わり、構えていた盾は真っ黒に焦げており、やや溶けそうになっていた。盾が零号機を、初号機を守ってくれたのだ。

 

「よかった…よかった…よ」

 

<碇君!?>

 

<パイロットの意識が!>

 

<救護班を手配して!エヴァ初号機パイロット保護を最優先!>

 

この後は使徒を撃破したのを置いておいての大騒ぎとなった。撃破の立役者であるシンジが意識を失ったのだから。誰よりもそれに一早く気づいたレイは強引に初号機からプラグを引き抜いた。そして零号機から降りると、プラグを火事場の馬鹿力で開ける。

 

「碇君!大丈夫!?」

 

すぐさまシンジの下へ寄って呼吸を見る。脈も見ると、呼吸ははっきりしていて脈も強い。まず間違いなく生きている。となると、これは恐らく極度の緊張と疲労から来る人間の強制シャットダウンだろう。

 

それだけラミエル戦は激烈だったことの証明だ。

 

「碇君…なら、私も」

 

何と言うことだ。綾波もそのままシンジに寄り添って寝てしまった。

 

急行してきて、この様子を見た救護班は安堵するのと同時に改めて使徒に勝ったことを実感したのであった。

 

続く




長くなりましたがラミエル戦の終わりです。

それでは次のお話でお会いしましょう。

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