【完結】ユイ君…本当にこれで良いのかね?   作:5の名のつくもの

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原作タイトルと合わないので、今回のタイトルはオリジナルです。

追記
リクエストの反映は今週の土日には入れるようにします。一日一リクエストの反映が限界です。予めご承知おきください。


謎の男と老人 バカップルと呆れる者

「それでは、私は失礼します」

 

NERVの司令室から去っていく男がいた。そして、その男を見つめる翁と厳重に堅牢に作られたアタッシュケースの中身を眺める者。

 

「いいのか?碇。彼を自由にさせておいて。あの男は色々と訳ありだぞ」

 

「構わん。これを手にした以上、彼はもう用済みだ。それに、いくら老人たちの鈴でも、その首の鈴を鳴らされる前に動けばいいだけだ」

 

「そうだな。今更老人たちが気づいても、全て遅いか」

 

「あぁ」

 

アタッシュケースを閉め、厳重なロックをかけると男は椅子に腰かける。アタッシュケースは大事に自分の足元に置いた。相当のブツがアタッシュケースに入っていると思われる。

しかし、その男を見つめる老人の目は酷く冷ややかだったことを知る者はいない。

 

さて、司令室から脱出した男は軽く伸びをしながら何をしようかと考えていた。仕事は終わっているので、後は気楽に自由にのびのびと過ごすだけ。過ごすだけなんだが、ちょっと彼の中で引っ掛かることがあった。日本でのNERV本部の動きを見るに、あの男が怪しいのは確実だ。あの男が怪しいっちゃ、怪しいのだが、また違った意味で怪しい者がいたのである。少し年老いた者だ。

 

「NERVの碇司令が謎の組織ゼーレと企みをしているのはわかっている。その企みのためにチルドレンたちが利用されているとはな。だが、そのチルドレンたちを守らんとする人もいる…冬月副司令。あなたは何が目的なんだ」

 

予想外の人物が彼の前に立ち塞がった。

 

 

~シンジたち~

 

シンジたちは中学校でいつも通りに過ごしていた。学校では、エヴァの訓練があるため早退したりすることがある。となると、どうも勉強が遅れがちだが、その分を冬月直々の授業のおかげで問題なく勉強に付いて行けていた。さらに、余裕があれば予習もしている。だから、遅れるどころか、むしろ先を走っている。

 

今日は午前中の授業が終わり、昼休みとなった。毎日のようにバカップルは仲良く一緒にお弁当をつっついている。その景色は男子からは血涙を流すようなもので、女子からすれば羨ましくて、理想過ぎて泣いてしまう。

ただ、一人我慢ならなくなった者がいた。それは、この景色についてではなく、これまた違うことでらしい。

 

「ねぇ!」

 

「うわぁ!何?ビックリしたなぁ。その、えっと」

 

「何か用?セカンドチルドレン」

 

バカップルとはシンジとレイのことで突撃を敢行したのはアスカだった。シンジは単に驚いただけだが、レイは警戒心MAXで迎えた。この二人と一人はNERVでの事務的な連絡とちょっとした日常会話ぐらいしてこなかった。シンジは性格は温厚で他人には柔和な人のため、アスカに対しては積極的にではなくても、比較的優しく接触していた。レイの方は愛しのシンジを奪われたくないので、彼の身辺のガードを固めていた。そのガードは傍から見れば正に奥さんで非常に微笑ましかった。

 

「あんたね。もっと愛想よくできないの?まぁ、いいわ。あなた、碇シンジって言ったわよね?」

 

「あ、うん」

 

「あんたにお願いがあるの、あたしのお弁当を作ってちょうだい」

 

「あ、え?君のお弁当を?」

 

見ればアスカは右手に購買で買ったであろうパンが握られている。確かに彼女はお昼休みの昼食にお弁当を持参していない。いつも購買でパンなどを買っているようだ。しかし、それにしても、急にお弁当を作ってくれとは。一体合切、何が起こったと言うのか?

 

「そう。だって、ファーストのそれ(お弁当を指さす)、あんたが作ったんでしょ?なら、あたしにも作りなさいよ」

 

「あ、いいよ。全然」

 

「碇君!」

 

まさかの快諾に綾波が珍しく素っ頓狂な声を挙げた。こればかりは綾波の驚きは正常な反応だ。誰がどう見ても酷い頼み方だというのに、彼はすんなりとOKを出した。シンジの人の好さは美点であるが、それにしても今回は度が過ぎる。

 

「綾波、何をどうしたの?」

 

「碇君は忙しい。体を大事にしないといけない。セカンドのために忙しさを増すのはダメ」

 

「大丈夫だよ。単に作る量が増えるだけで忙しさは変わらないから。それに、パンだけの生活じゃ体を壊しちゃうよ。せっかく来てくれた仲間が体を壊して、結局僕たち二人だけしか動けないなんて本末転倒だし」

 

「でも」

 

長くなりそうなのでアスカが切る。

 

「はぁ~、ほんとエコヒイキはサードにベッタリなのね。それで、承諾で良いのね。お礼は私が二人の代わりに使徒と戦ってあげるでいいから」

 

どれだけ高飛車なんだろうかアスカは。まぁ、色々と訳ありなのだから仕方ないのかもしれない。

 

「うん、いいよ。でも、急にどうしたの?ミサトさんと暮らしているのは知っているから、まぁ、ミサトさんに期待できないのはわかる。でも、適当に買って自分でお弁当を作ることぐらいは教えたんだけど」

 

シンジはミサトとの共同生活で最低限の生きるための家事は教えた。料理は最初から捨てて、スーパーで買ってきたお惣菜などをお弁当箱に詰め込んで、即席のいい意味で手抜き弁当を作ることができるようには導していた。だから、彼女でもお弁当を作ることはできる。買ってきたのを入れたりするなら子供でもできる。

 

問題のアスカはミサトと共同生活を送っており、そこで最低限の暮らしは出来ている。前のようなゴミ屋敷ではなく、まぁ人が住めるぐらいの家に。ここまで生活水準を押し上げたシンジの指導は「素晴らしい」の賛辞を贈る。外面では素晴らしいのだが、実際は修羅の鬼と化したシンジがミサトにスパルタ教育を施したらしい。それは数時間とか一日ではなく、数日を丸々かけてしたらしい。

 

「それがなのよ。ミサトの奴、仕事が忙しいって言って、ここ最近ずっとNERVで泊りがけ。だから、食事から全部をあたし一人がやっているの」

 

「そうなんだ…確かに、忙しくなったって聞いたな」

 

事実、ミサトは非常に多忙であった。ドンと大きな仕事が来たわけではなく、仕事と言う仕事が積もり積もって忙しいのだ。例を挙げればキリがないので抜粋すると、まず前回の使徒戦の反省、要塞都市強化の第二次計画(冬月の指示)、エヴァ3機の同時運用の方法や整備、書類の仕事などである。なんせバチカン条約(現実を見ろよこの野郎条約)ギリギリでやっているので、如何にちょろまかしながら運用するかを考えている。

 

「ということで、あたしは貧相な食事をしているってわけ」

 

「事情は分かったよ。何か嫌いなものとか、アレルギーがあるものとかある?」

 

「ないわ」

 

「ならよかった。それならお弁当のレパートリーを充実させることができる。明日から早起きしないとな」

 

「碇君…私も手伝う」

 

「ん?何を?」

 

「セカンドのお弁当を作るのを。碇君だけに早起きさせることは許されない。ダメ」

 

「なら、手伝ってもらおうかな。三人分は流石にあれだから」

 

「うん」

 

「はぁ~、まったく。こいつらは」

 

一応己の願望を通したのでアスカはササッと退散した。これ以上バカップルの至近にいて、バカップル結界密度が超強いところにいたらLCLに還りそうだ。迅速に身を引くのが賢明である。

 

さて、こうしてバカップルと呆れる者一人がいる頃。

 

 

~NERV本部 冬月の私室~

 

「気配を消すんじゃない。私には見えている」

 

「ありゃ、バレバレでしたか」

 

「60年も生きていれば、気配ぐらい探れるものだ。何用かね?加持リョウジ君」

 

「いえ、NERVの頭脳と言われ、NERV総司令の碇ゲンドウと最も近しいアナタにお聞きしたことがありまして」

 

冬月の私室のドアが閉まらぬように、ドアに寄りかかりながらの体勢の男がいた。そして、その男をにらむ老人もいる。

 

「なにかな?」

 

「率直にお聞きします…あなたは何が望みですか?」

 

「ふむ、随分とざっくりとした質問だな。君が聞きたいことはまた別にあるのではないのかね?とくに…人類について」

 

「敵いませんね、冬月副司令には。まぁ、それもありますがね。順番付けをして、一番で言えば。アナタの望みが聞きたいんです」

 

「聞かれたのなら答えるのが礼儀と言うものだな。私の望みは…チルドレンたちの幸せ。もう先の短い老人のエゴだよ」

 

「そうですか…あなたならチルドレンたちを導けるでしょう。冬月先生なら…ね」

 

そう言って男は去っていった。この間5分も経っていない。なんともまぁ、短い面談であろうか。

 

「加持リョウジ…君こそ、君の望みは何かね」

 

続く




なんやかんやで、実はすごい英雄だった加持さん。

それでは次のお話でお会いしましょう。

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