【完結】ユイ君…本当にこれで良いのかね?   作:5の名のつくもの

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リクエストですが、明日には反映できると思います。ただ、メインストーリーの更新もしないといけないので、一日一反映が限界です。また、一部リクエストを一話に纏めて(一話に二部構成、前後編の形で)投稿します。この二点予めご了承ください。

本話はあの人が出てきます。




教え子

~夜 冬月家~

 

「そうか、アスカ君にお弁当を作ると」

 

「はい。一人増えてもやることは変わらないですし、料理をするのは好きですから。それに」

 

「私も手伝います」

 

「ほう、それはいいことだ」

(レイ君が自らシンジ君の料理の手伝いを名乗り出るとはな。いい傾向だ)

 

夜、夕飯を食べ終えてリビングでゆっくりと過ごしている三人は談話していた。二人は既に冬月家に来て時間が経ち、冬月と打ち解けていた。冬月自体は家では副司令ではなく、本当の祖父のような感じで極めて優しかった。優しいが二人を正すときは正す。教育者の心は忘れていない。

 

「あ、そういえばなんですけど」

 

「何かな?」

 

茶を啜っていた冬月にシンジが話題を変えた。

 

「誰にも言わないでって言われているんですけど、冬月先生には言っておかないとと思うことがあるんですけど」

 

「言ってみなさい。私は秘密は守る人間だ」

 

「はい、それが中学の屋上でぼうっとしていたんですけど」

 

※中略※

 

「ふ~む。謎の少女か。そして英語を話していた。一応言っておくがNERVで呼んだ人間はセカンドと加持君だけだ。それ以外の人は呼んでいない。となると、考えられるのは工作員か何かだな。それにしては、君に大胆に接触するなんて不手際が過ぎる。まぁ、そんな不手際をする工作員もいないか。本当に正体不明だな」

 

「そうなんですよ。急にパラシュートで降って来て」

 

話によればシンジ君が学校の屋上で過ごしていると、急にパラシュートで少女が一人降って来たとのことである。その少女は外国語を話していたそうな。事情はよく分からないが、外国から来たのがわかったらしい。

 

「本当によく分からないが、一応気を付けたほうがいい。君たちはエヴァのパイロットなんだ。ここでパイロットを失うわけにはいかん。必要があれば学校周辺にガードを増員しておくが」

 

「大丈夫だとは思いますが、お願いします」

 

「私からもお願いします。碇君を狙う敵が増えたかもしれないので」

 

「う、うむ」

 

レイの雰囲気がヤバめになったので冬月も思わずたじろいでしまう。とまぁ、その少女については全く正体不明である。警戒して悪いことはないので、暫くはパイロットの安全の確保を優先とした。

 

だが。

 

(何となくだが…察しが付く。まさかユイ君の差し金ではないだろうね。それならそれで、歓迎だが)

 

表面上では「まったく分からん」としている冬月だが、その脳裏では懐かしき人を思い出していた。

 

 

~後日~

 

「やれやれ、来客が多いものだ。最近は」

 

NERV本部にある休憩スペースにて冬月はベンチに座っていた。目の前に自動販売機があるが、飲料を買ったりすることはない。まるで誰か来ることを待っているかのように。そして、事実として誰かが来た。

 

「お久しぶりですね、冬月先生」

 

「その呼ばれ方を懐かしいとは思わんよ、私は先生と二人からよく呼ばれていてね。イスカリオテのマリアよ」

 

「随分と懐かしい名前をお覚えで、さすがですね」

 

「君に言われるとは光栄なことだよ」

 

冬月の横に少女が一人座った。シンジたちのような学生が身に着ける学生服を纏っていて、一見すれば学生である。しかし、この二人は旧知の仲であった。会話の入りの挨拶がその証拠になる。

 

「変わりましたね、先生は。あの時より鋭くなっている。鋭くなっているけど、違う匂いがしています。何が先生を変えたんでしょう」

 

「いろんなことを経験してきたからだよ。どれか一つの事ではない。これだけ長く生きていると、人は変わる。大胆に盛大にな」

 

「知っているんですよ…先生がチルドレンたちを導こうとしているのは」

 

「君には見破られて当然だろうな。教え子に見破られてこそ、教育者たる者だな」

 

冬月はゲンドウの見えない、察知できない所でチルドレンたちを守っていた。使徒との戦闘で支障をきたさぬように配慮したり、メンタルケアを行ったり、歩む道を見せたりしている。その動きは傍から見れば単に少年少女たちに負い目を感じて行動しているとしか見られていない。しかし、冬月の本心はこの先をチルドレンたちが自分たちの手で未来を、希望をつかみ取ることができるようにとの一種の布石・投資だ。

それを謎の人物には看破されていた。冬月本人は看破されて当然との態度なので特に反応することは無い。

 

「ファーストはともかく、セカンドやサード君のことはどうなさるおつもりで?」

 

「人聞きが悪いことを聞かないでくれ。私は彼らの手助けをしているに過ぎないよ」

 

「よく言いますね。ゲンドウ君のエゴを許容せず、自身のエゴを貫かんとする姿勢を見せておいて」

 

「私のエゴか、確かにそうだな。私は私の願いを叶えようとしている。だが、それは碇の奴とは一線を画していると思わんかね?」

 

逆質問に謎の少女は苦笑いをする。この休憩スペースでその苦笑いは冬月しか見ることができなかった。なぜなら、ここはプライバシー確保のため監視カメラや盗聴器の類は置かれていない。ただの休憩スペースで出来ることは限られているから問題ない。それに、職員たちは休憩するときぐらい好きに話したい。

監視の目が無いのでここは秘密の会談に適している。

 

「そうですね、先生はゲンドウ君と真反対ですね。ゲンドウ君は自分のたった一つの願いを叶えるためだけに、世界を巻き込んだ盛大な計画を押し進めている。しかし、先生は自身のエゴと言いつつも、チルドレンたちの幸せのために盛大な自己犠牲をしようとしている。違いますか?」

 

「大雑把には言い当てているからな。ご名答だ」

 

「ならよかったです。私の願いとほぼ同じですから。さってと、これ以上居座っていると誰かに見られてしまいますので、失礼します。また、どこかで会いましょう先生」

 

「あぁ…その時は最後(最期)だと思うがね」

 

挨拶をして少女は去っていった。今更だが、ここまで職員にバレることなく動いているのは見事の一言に尽きる。念のため申し上げておくと、NERVの警備体制はザルではない。むしろ世界で一番厳重な警備体制が敷かれていると言っていい。

 

「君も私と同じだというのか。同じだと言うのに、敵になってしまうのは難儀なことだろうよ。ユイ君が見たら、どう思うのか気になるところだ。さて、私も仕事に戻らねばな。この後は月旅行の準備をせねば。ゼーレの老いぼれ達が血迷ったことをしているのをこの目で見なければ」

 

冬月は月に向かう予定となっている。神聖な土地である月に。そこではゼーレ肝いりの隠し玉が作られているらしい。それの視察である。これには碇ゲンドウも向かうことになっている。つまりNERV本部の上層がごっそりいなくなる。だから、何があっても大丈夫なように、動けるように色々と引継ぎや準備を行う。その作業のために冬月は動いていた。

 

~司令部~

 

「え、私にですか?」

 

「そうだ。碇と私が共に月の視察に行っている間に、使徒出現などの緊急事態が発生した場合には、NERVの権限を君に一任する。好きにしろと言うのは違うが、まぁ、それに準じた行動をとりなさい」

 

「いいんですか?本当に私で」

 

「構わんよ。碇からの許可も得ていて署名もある。そして、君のような優秀な人材を腐らせるわけにはいかんからな。使徒戦で経験を積んできた君を。それに、パイロットたちとの厚い信頼もある。君を適任と言わないで何と言うのかね?」

 

「ありがとうございます。葛城ミサト、非常時の際にはNERVの全権を以て総司令官代理として働きます」

 

「うむ、そうしてくれ。私の方からファーストとサードには話を通しておくから、セカンドには君から伝えてくれ。伝達は怠っては死を招く」

 

「はい!」

 

着々と月視察の準備を進める冬月だった。

 

続く




次話はリクエスト反映回ですので、サブストーリーで過去に遡る予定です。リクエストは活動報告又は私へのDMで受け付けております。お気軽にお申し付けください。

それでは次のお話でお会いしましょう。

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